本読み日記


【ジャンル分け】 元々日本語で書かれた大人向け小説
元々日本語で書かれたジュブナイル小説。
日本語で書かれた小説以外のもの。

元は外国語で書かれていて、翻訳されたもの。

乙女のためのホモ小説
コミックス

われながら、なんつう荒くたい分け方であることよ。
ええっと、大人向けかジュブナイルかは、出版元の意向そのまんまです。角川スニーカー文庫とか講談社ティーンズハー
ト文庫とかコバルト文庫とかは、どんだけ立派な作品でもジュブナイルに入れてます。逆もそう。


『占い師はお昼寝中』 倉知淳 創元推理文庫
これ、出たときに本屋で平積みにされているのを見かけてたら、倉知淳にもっと早く、食いつけてたかも。(朝倉めぐみが表紙やってる本って、当たり率、超高いんだもん)
おんぼろビルの一室で占い屋を営んでいるが、超怠け者の叔父さんが探偵役の短編連作集。というわけで、由緒正しき「叔父」モノです♪
(「叔父」モノ:主人公、あるいは語り手の叔父さんが、騒ぎを起こしたり、正攻法でない手段で騒ぎをおさめたり、あれこれする話)
(ちなみに「伯父・伯母」は両親どちらかの兄姉で、「叔父・叔母」は両親どちらかの弟妹)

「ゆきだるまロンド」が一番好き。ほっこりしたいい話です。(この手のテイストの話、だあい好きなの)


『日曜の夜は出たくない』 倉知淳 創元推理文庫
猫丸モノの初短編集。ちなみにあとがきは小野不由美。
「海に住む河童」、圧巻です。冒頭の河童伝説の現代語訳が最後につけられてるんだが、これがもう、無茶苦茶おかしい。


『壷中の天国』 倉知淳 角川書店
探偵役の出て来ない長編。だったので、ちょっと「ちぇー」とか思って読み始めたんだけど。
面白い〜っっ!! さる片田舎の町で起こる連続殺人事件の話なんだけど、構成よし。キャラクターよし。いいです、これ〜っ!!

(そして、これ読んで以来、新聞の「声」欄読むたび、三番目に殺されるおばさんをつい思い出してしまうわたしであった)


『嫁洗い池』 芦原すなお 文藝春秋
香川出身の作家の「ボク」の奥さんが、いわゆる「安楽椅子」探偵をつとめる、短編連作集。
これ読んでると、超お腹が空く。夜中に読んでたんだけど、思わずご飯炊いてしまいましたがな、夜中の二時頃。
でも、この奥さん、ちょっと、わたせせいぞうの『菜』テイストだわ。(菜、けっこう好きなんだけど、これを好きと思う自分ってのを省みるとちょっと…ってのがあってな)


『樹縛』 永井するみ 新潮社
『枯れ蔵』、面白かったんだが、著者名を特定して探すとこまではしてなかった永井するみだが、図書館の開架でふと見つけ、借りてきた。
これも面白かった。『枯れ蔵』は農業ミステリで国内の稲作事情が中心に据えられてたが、今回は国内材木事情。


『盤上の敵』 北村薫 講談社
やっと読めました、『盤上の敵』。
超面白い〜っっっ!! 行け行けドンドン、やめられない止まらない〜♪


『こんな私でよかったら…』 中村うさぎ 角川書店
この人って、悪ぶってるけど、根っこの部分は超まとも。(買い物の仕方とかはそりゃまともじゃないけどさー)
しかし、ワキガ用のクリームが、脂足に効くとは知りませんでした〜。


『ロウソクのために一シリングを』 ジョセフィン・テイ 早川ポケットミステリ
テイの『時の娘』もギャリコの『猫語の教科書』と同様、「この本、死ぬまでうちにあるんだわ」本のひとつだが、ギャリコと同様、それ以外の作品はまったく読んでいなかった。
で、やっと読んだ。いや〜、由緒正しきイギリスミステリ。ちなみにあとがきは宮部みゆき。
(犯人とその動機、今市子の『百鬼夜行抄』3巻収録の「言霊の木」を思い出してしまった)


『フランチャイズ事件』 ジョセフィン・テイ 早川ポケットミステリ
前述の『ロウソクのために一シリングを』のあとがきで、宮部みゆきが「『時の娘』より『フランチャイズ事件』のほうが口に合う」みたいなことを書いてたんだが。
途中、何度かダレてしまいまいしたが、フラインチャイズ家の親子も好感もてるし、後味もすごくいい。
ところでこれ、訳が強烈です。
わたしが読んだのは昭和62年の再版なんだが、初版は昭和29年に出てて、そんときのままの訳なのよ〜。「コーヒーランチ」とか「かんたん着」とか、もーとんでもない単語が出てくるは、出てくるは。しかも、「クリーム」が「ククーム」になってる誤植も、何頁めだったか、当時の版の活字の歪み部分もそのまんま〜〜。


『時の娘』と「天の戴冠」

テイといえば『時の娘』、『時の娘』といえばテイである。
『時の娘』という本のことを知ったのは、高木彬光の名著『成吉思汗の秘密』であった。
その時、「読みたい〜」と思ったが、ついつい忘れてしまっていた。

話はかわるが、「天の戴冠」という漫画をご存知だろうか。
著者は森川久美。デビュー作を含む初期短編集『青色廃園』に納められている中編だ。
舞台はバラ戦争の頃のイギリス。
主人公はヨーク家の三男リチャード。思慮深く穏和な彼は、華やかな兄の後ろに一歩控えたおとなしやかな青年だったが、戦略に優れ、ときに驚くような武勇も見せた。
そんなリチャードなので、兄が王として即位すると、その補佐をよく勤めた。
が、兄が急死。兄には王妃との間に二人の息子がいたので、長男を即位させ、リチャードは摂政となったのだが、その後、兄とその妻の結婚は法的に無効なものであったことが判明、つまり兄の遺児たちは嫡出ではなく庶出ということになり、かわりにリチャードは王位につかざるを得なくなる。
これがリチャード三世である。

……………。
そうなんです。あの「馬を、馬を! ここにもし一頭の馬あらば…」(だっけ?)の「リチャード三世」なんですよ。
歴史的常識にボディブローを食らわしたような話だったのだが、これをLala掲載時に読んだとき、わたしはまったく不自然だとは思わなかった。
だって、シェイクスピアの「リチャード三世」も読んでなけりゃ、イギリスの歴史常識もまるっきり知らなかったんだも〜ん。

で、『時の娘』である。
わたしがこれを読んだのは、「天の戴冠」がLalaに掲載された二、三年後であった。
舞台は現代のイギリス。蓋の開いたマンホールにおっこちて足を骨折したアラン・グラント警部は、病院のベッドで無聊をもてあましていた。
友人たちが「入院の見舞いならやっぱり本だろう」ともってきてくれる新刊に手をつける気になれず腐っていると、友人の舞台女優が「それじゃあ」と、いろんな版画から切り抜いた歴史上の人物の顔をもってきてくれる。
アラン・グラントはその差し入れを心から楽しんだが、ふと、その中の一枚に心をひかれる。
豪奢な身なりの実に個性的な顔立ちの男。
彼はしばらく、その男は何者だろうと推理する。
おそらく責任ある立場の人物。良心的すぎた人物。完全主義者。悩める人。
推理を存分に楽しんでから、それが一体誰なのか確認しようと裏を返して、アラン・グラントは愕然とする。
リチャード三世。
せむし男。甥殺しの大悪人。非道の代名詞。

と、ここでわたしもやはり愕然とした。
せむし男? 甥殺し? 非道?
……リチャード三世って、聡明で家族思いで野心のない、むっちゃいい奴だったんじゃなかったっけ?
愕然としつつも読み進んで、その謎はとけた。
「天の戴冠」の掲載時にも、コミックスに納められてからも、「原作:ジョゼフィン・テイ」とはどこにも記されていないが、実は「天の戴冠」、この『時の娘』でテイが「実は…」と描き出したリチャード三世像を、まんま元にしたものだったのだ!
ひょええええええ。

その後、夢の遊眠社の『リチャード三世』も見たし、アル・パチーノの『リチャードをさがして』も見、「世間の常識ではリチャード三世はやっぱり大悪人」と再認識できたのだが、「天の戴冠」読んだきり、シェイクスピアの「リチャード三世」を読むことなく、芝居や映画を観ることもなかったりした人も、きっとそれなりの数、いるに違いない。
イギリスから遠く離れた極東の国で、「リチャード三世:温和で聡明ないい人」というイメージが記憶にそこはかとなく残っている人たちがそこそこの数いると思うと、ちょっと愉快な気持ちになるわたしである。

(が、世間の常識なリチャード三世と、『時の娘』と、「天の戴冠」、正しい順番はやはり、常識→『時の娘』→「天の戴冠」だったよな、と未だにちょっと恨みに思っている)

(が、あれだけ「時の娘」なリチャード描いといて、それをどこにも記してないのは、問題あるぞ。>白泉社&森川久美どの)←その後、再録とかされてそこにはちゃんと書かれたかもしれないが、うちにある初版の『青色廃園』にはなんの説明もなかったはずです、はい。



『モザイク』 田口ランディ 幻冬舎
主人公のミミ、ドライで聡明ですっごいかっこいい。脇の精神科医やミミを雇う“移送屋”やミミの回想シーンにしか出て来ないけどミミの祖父さんとかの造型もすごくいい。
この本、資料本の無断転用問題で裁判沙汰になってましたが、新聞で読んだ無断転用部分、建物にたとえるなら土台とか骨組みの重要な部分でなく、トイレの棚とか窓のカーテンレールとか、その程度の部分だったので、使われたからって訴えた人、了見狭いよな、ま、巻末に資料として名前あげときゃ済んだ問題なんだが…とか思ったが、あの記事読んで読む気になった人も多いと思うので、そう考えると怪我の巧妙かも。
(が、出版元が遣り手の幻冬舎なので、あの裁判自体、売るための戦略だったのかも…という気も…)


『テスタメント』 ジョン・グリシャム 新潮社
弁護士の遺言状にサインしてすぐ自殺した狷介な性格の老大富豪。だが、自殺の直前、彼は嫡出の子供たちでなく、彼らがまったく存在自体を知らなかった庶出の娘に全財産を譲るとの遺言状にあらたに署名していた。
とまあ、オープニングだけは血湧き肉踊ったんですが。
つまんなかったぞおっっ!! >ジョン・グリシャムどの


『楽園まであともうちょっと』1巻 今市子 花音コミックス
今市子はやっぱ、フツーのホモロマンスより、脇役うじゃうじゃホモ絡み人情ドタバタ劇が、ツボにはまったときが断然いいです。
(といいつつ、今市子にフツーのホモロマンスものなんかあったかしら…)


『スカイ・クロラ』 森博嗣 中央公論新社
これ、装丁がかわってる。コピー同人誌な感じ。(って、表紙に手で着色したあとでタイトルだけ別貼りしたコピー本、うちにあるのよ。C翼本だけど)
近未来モノで、戦争モノで、飛行機乗りモノ。文章も風景も心象も乾いてて、気持ちよかったです。


『1限めはやる気の民法』2巻 よしながふみ ビブロスコミックス
巻末の描きおろし以外は同人誌からの再録だったので新刊で見つけたときは買うのをやんぴしたが、BOOKOFFで見つけてしまった。
ダブリの同人誌、処分本コーナーに移さなきゃ。(いくら好きな作家でも、ダブリをとっとくのは、うちの本棚事情が許さない)


楽園の魔女たち 月と太陽のパラソル』前後編 樹川さとみ 集英社コバルト文庫
マリアの行方不明のダンナが見つかっちゃうよ、マリアが幸せになるのは歓迎だけど、それじゃシリーズ終わっちゃうんじゃ、いやん、終わっちゃいやん〜〜〜とはらはらしながら読んだが、ダンナは見つかったがシリーズは続く模様。やれやれ。


『キマイラ昇月変』 夢枕獏 ソノラマ文庫
16巻です。やっと現代日本に戻ってくるかと思ったら、まだ中国過去編です。
夢枕獏、ついに51歳だと。一年一冊ペースでも、60歳の還暦で25巻か…。その頃には完結のめどくらいはたってるのかしらねえ…。(遠い目)
(が、シリーズが始まって20年を迎えたそうなので、20年で16冊なんだよ〜。もう年なんだから、これとサイコダイバー、一年に一冊は必ず出してくれ)


『暁の天使たち』 茅田砂胡 中央公論新社
新シリーズ♪ でも、古馴染みの面々がうじゃらうじゃら♪ 思わずデルフィニアを読み返してしまったわたしであった♪ 「これはねえだろっ!」と怒ったデルフィニアの最後も、これでぜんぜん許しちゃう♪
ところでこれにダイアナは出てくるのでしょうか。


『HUNTER×HUNTER』14巻 富樫義博 集英社
ビスケット、かっこいいぞ〜。
表紙裏のコスプレイヤーたちとの記念写真、愕然としたぞ〜。
ところでクロロが復活すんの、グリーンアイランド編が終わってからかしら…。

それまでクラピカとかも出番なしなのかしら…。


『深き水の眠り 琥珀の夢』 毛利志生子 コバルト文庫
やっぱ毛利志生子の文章ってものすごい好きだわ、わたし。と読むたびに思う。
刊行ペースもそんなに早くないけど、遅くもないので、このペースを守りつづけてほしいです。
(そして、メタルアイズ&外法師の続きもぜひ〜)


『スマリの森』 遠藤淑子 白泉社
えーん、えーん、野生動物モノだよ〜。それも開発に晒されてんだよ〜。表紙見たときからイヤな予感はしてたんだけどさー。
生態系って人間の開発で破壊されるけど、それを人間が保護しようとして手を加えると、たいがいさらに破壊につながっちゃうので、考えることを意識的に放棄している問題のひとつなのよ〜。


『異国の花守 花の聲』 波津彬子 小学館
日本マニアの美貌のイギリス人青年(しかも貴族のお家柄)と、日本の女の子の恋、とシチュエーションだけなら「ケッ」てなもんであるが、波津彬子の絵柄と古都の風情と大伯母さまや大伯母さまに昔ふられた老舗のご隠居等の脇役さんたちがどれもいい具合で、これは○です。

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