本読み月記


【ジャンル分け】 元々日本語で書かれた大人向け小説
元々日本語で書かれたジュブナイル小説。
日本語で書かれた小説以外のもの。

元は外国語で書かれていて、翻訳されたもの。

乙女のためのホモ小説
コミックス

われながら、なんつう荒くたい分け方であることよ。
ええっと、大人向けかジュブナイルかは、出版元の意向そのまんまです。角川スニーカー文庫とか講談社ティーンズハー
ト文庫とかコバルト文庫とかは、どんだけ立派な作品でもジュブナイルに入れてます。逆もそう。

『黒い雨』 井伏鱒二 新潮文庫
国語便覧で紹介されてるような本、見事なくらい読んでいないわたしですが、ええ、これも読んでませんでした。
とはいうものの、太平洋戦争関係、被爆とか空襲とか沖縄とかのノンフィクションは昔かなりの量読み(ええ、ホラーとして…。怖いもの読みたさで…)、いまこれ読んであらためて思うのは、みんなこれほど恐ろしくて怖い目に遭いながら、加害者である連合軍、主にアメリカに対する憎悪ってのは殆ど感じられない。中でも被爆とか空襲って、「天災」な感じ。「鬼畜米英」とは唱えながらもただの概念で、白兵戦になった沖縄でもその点は大差なくて、鬼や魍魎に対する恐怖に近いものがある。直接的に憎悪を感じる相手、むかつく相手ってのは、権威を傘にきて個人的な憂さ晴らしをしているとしか思えない上官や特高、国のかかげるイデオロギーを大義名分に偉そばったり難癖つけてきたりする近所の人なのだ。でも、考えれば、アメリカと戦争しながら、アメリカ人見たことのある人って当時殆どいなかったのよね。個人的に知ってる人なんかもっと少ない。
この小説でも、原爆というものはあまりにも天災じみていて、登場人物たちが直接にむかついたり不快に思ったりする相手ってのは、使えねえ役人だったり、兵隊集めるにも選考基準を下げざるを得なくなった結果徴兵されてしまったインテリたちを楽しげにいたぶる新兵担当官だったり、被爆症というものを理解せず「怠け者」呼ばわりする近所のおばはんだったりする。そして、使えねえ役人も、インテリをいたぶった新兵担当官も、被爆患者を「怠け者」呼ばわりしたおばはんも、きっと彼らの「戦争体験記」では被害者であり、自分が加害者だなんて語ることはおろか、きっと自覚すらないのだと思う。
で、すいません、すいません、ほとんどホラーとして読みました。死体が街中に転がってて、瀕死の人もいっぱい転がってて、ほんとにほんとに読み応えありました。

ところで「戦争のピアニスト」を観た。
はたしてわたしはわたしの属する集団ごと、財産を奪われたり、住む場所を追われたり、理由もなく強制労働させられたり、殺されたりするような状態に追い込まれたとき、卑怯者にならずにいられるだろうか? 「加害者」から与えられるほんの少しの特権に甘えたりしないだろうか? そのほんの少しの特権を得るために、よく知っている人の告げ口はできないだろうがよく知らない人の告げ口だったらできたりしないだろうか? 食べるものもなく骨と皮ばかりになった猫どものためにほんの一袋のキャットフードを得るために、自分にとっては些細なことでも、ほかの誰かにとってはとりかえしのつかないような、そんなことをしでかさないだろうか?
あるいは、己や己の家族は無事でも、友人知人の属する集団がそのような状態に追い込まれたとき、己を無関心に追いやったりせずにすむだろうか? 己に火の粉が降りかかるのを恐れて、彼らの誰かが助けを求めてきたとき、匿う勇気が持てるだろうか? 関わりあうことを恐れて「うちには来ないで」と、その人の前でドアをピシャリと閉めずにいられるだろうか?
そしていまこの瞬間にも、無関心がゆえに遠隔的加害者にはなっていないだろうか?
こういうものを観たとき、考えずにはいられない。


七つの封印1 大魔術師の帰還』 カイ・マイヤー ポプラ社
七つの封印2 悪魔のコウノトリ』 カイ・マイヤー ポプラ社
七つの封印3 廃墟のガーゴイル』 カイ・マイヤー ポプラ社
七つの封印4 黒い月の魔女』 カイ・マイヤー ポプラ社
山田章博が表紙と挿絵担当してるので借りてきましたが、ドイツでかなり人気のある児童向けホラーシリーズだそうだが、全体のベースの設定がなんかお手軽で、話もどれも軽いモダン・ホラーにちょびっと中世風のふりかけかけたっつう感じで、わたしの口にはあいませんでした。


『陽気なギャングが地球を回す』 伊坂幸太郎 祥伝社ノベルス
人が嘘をついているか否か直感で100%見抜く成瀬、幾らでも薀蓄を騙り続けられる響野、天才的なスリ久遠、精緻な体内時計を持つ雪子の、銀行強盗4人組の話。

もうむっちゃくちゃ面白い〜っっ!

このメンバーの話、もっともっともっと読みたい〜〜〜っっ!!
サントリーミステリー大賞の’96年佳作だったのが、同じメンバーの別の話だったそうなのよ。でも、どこからも発売されてないのよ。で、雑誌に掲載とかもされてないらしいのよ。あああ、読みたい〜っっっ!!! 読ませろおぉっっっ!!!


『きみと手をつないで』 崎谷はるひ ラキアノベルス
しっかりものの家政夫×社会不適応者の作家。
五点満点の3.8点くらいかな。


『きみがいなけりゃ息もできない』 榎田尤利 ビブロス
しっかりものの美術商×おさななじみの生活不適応者の漫画家。
五点満点の4.2点くらい。途中、美術商が悩んで離れようとするあたりが多少辛気臭かったが、画家の娘のオタク女がすっごい感じよかった。


外法師 孔雀の庭』上巻 毛利志生子 集英社コバルト文庫
高校の古文や大学のときの「枕草子」の講義で、道長vs伊周・隆家兄弟の確執についてはちびちび習ったんですが、その後のことはなーんも知らんかったわ。前に読んだ永井路子の王朝モノ、道長その後の話だったし。隆家って父や兄や妹が死んだあとも、けっこう長生きしてたのね。
ともあれ、下巻、早く読ませろおぉっっっ!!!!


『豹くんの異常な愛情』 金丸マキ 集英社コバルト文庫
ださくて真面目な東大生×男運の悪いゲイの男の子。
五点満点の3.9点くらい。


『アホでマヌケなアメリカ白人』 マイケル・ムーア 柏書房
ブッシュvsゴアの選挙戦、わたしとて「ゴア、勝て〜。ブッシュ、負けろ〜」とひそかに北米向けて呪いを送っていたひとりである。
なので、フロリダ集計問題のゴタゴタのあと、なんだかようわからんうちにブッシュが勝っちまったときゃ、むかつくは、がっくりするは、だったんですが。
ムーアに同調する気にはなれんかったな。なんかこの人の怒り方というか論調が「アホでマヌケなアメリカ白人」そのものでさ。
んー、「ボーリング・フォア・コロンバイン」予告編見る限りじゃ、実に頭のいい人みたいな気がしてたんだけどなー。
ちなみにわたしがこれまで読んだアメリカ時事エッセイでは、アート・バックウォルドのが一番好き。まだ生きてんのかな? ’25年生まれだから、いま78歳なんだけど、ムーアが取り上げた諸問題についてバックウォルドが書いてるものがあれば読みたい〜。
(いま年齢調べるのにここ使ったんだけど、アート・バックウォルドったら丑年で三碧木星って、いやん、わたしと一緒〜♪ おまけに誕生日が10月20日でほんのたったの一日違い〜♪♪♪)
(あとアメリカ人エッセイでは、ウッディ・アレンのも大好き〜。そうなのよ、わたしのつぼってこのへんなのよ)


『コッペリア』 加納朋子 講談社
小さな劇団の女優と、エキセントリックな女性人形作家、彼女の作る人形に魅せられた男たち、が織り成す物語。

すっげえ面白かったっ!!

仕掛けが複雑というかすっきりしてなくて「ええっ?!」とどんでん返ししたあと「えっとあれがこうなってそうなって…あれれ?」とかなってしまったが、ともかく読んでる間はすっごい面白かった。後味もよし。


『石の猿』 ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋
リンカーン・ライムものの第四作。表題の「石の猿」とは孫悟空のこと。
で、中国からの密入国者と、自分の顔を知る彼らを殺そうとする蛇頭、即ち密入国斡旋人を、彼らを追ってきた中国人刑事とリンカーン・ライムが追う物語。

面白い〜っっっ!!!

行け行けどんどん、やめられない、とまらない〜。
が、なんだか死にそうな気がしてて、ライムが彼に贈るためにトムに倉庫から自著を引っ張り出させてそれに献辞つけたあたりで、あ、こらいかん、やっぱり死ぬわ、こいつ〜と思った登場人物、死なさないで欲しかったわ。ここでもどんでん返しして欲しかったわ。
ところで文革のエピソードが随所に登場します。
中国で文化革命が起こったのは’66年。それから十年間、毛沢東のド阿呆の言葉に踊らされた大勢のド阿呆のガキどもが、金持ちやインテリの家を襲撃し、家人を殺し、殺さなかったものは再教育キャンプに送り込み、そこでも嬲ったり暴行したり殺したりしたわけだ。
これらの襲撃暴行に直接参加した紅旗兵の平均年齢をわたしは知らないが、’66年に14歳であれば、いま50歳。おそらく大方がまだ存命であろう。
彼らって別に罰されたりしてないのよねえ? フツーに生きてんのよねえ? 下手したら中国の偉いさんになってたりもするのよねえ?
ところでこれ読む直前に「ギャング・オブ・ニューヨーク」を観たのよ。そしたらこの本に「1800年代、世界で一番治安の悪かったファイブ・ポインツ」って。たまにあるのよ、こういうシンクロニシティ。第一次大戦の激戦ソンムの戦いネタの映画観てすぐ読んだミステリにやっぱりソンムの戦いが登場したり。


『アルテミスファウル 妖精の身代金』 オーエン・コルファー 角川書店
ハリー・ポッターブレイク後、雨後の筍のごとく発売された児童ファンタジーの中で、やっと大アタリを引き当てました。

面白いぞっ!

これ、ほんとに面白いぞ〜っっ!!


主人公は犯罪の名門一家の末裔であるアルテミス・ファウル・ジュニア12歳。
そんな彼が、飲んだくれのハグレ妖精から妖精のバイブルである「妖精の書」を卑劣な手段で奪い取り、そこから得た知識を駆使して、妖精を生け捕りにして身代金を分捕ろうとする物語。
文章がイカス。脇役たちもイカス。これはいいぞ〜♪


『探偵玄居煉太郎 からくり座』 山田章博 幻冬舎
コミックスという分類になってる模様だが、右ページが文章、左ページが挿絵、という体裁なので、絵本ということで、青にしました。
好きな人にはたまらん本です。
そして、わたしはたまりませんでした。
続編、お願いします。できればこのシリーズ、年に一度は出して欲しいです。


『OL進化論』20巻 秋月りす 講談社
『HUNTER×HUNTER』18巻 富樫義博 集英社
『ONE PIECE』30巻 尾田栄一郎 集英社
『ONE PIECE』、26巻から読み返した。…こんな話だったのね、空島編〜。つうか、こんなに面白かったのね、空島編〜。
が、ゴムは電気を通しませんが、劣化もします。輪ゴム溜めとくとネチネチになってそのへんにくっつきます。大丈夫か、ルフィー。


『異形の花嫁』 ブリジッド・オベール ハヤカワ文庫
性同一性障害(体:男、心:女)・故殺の前科あり・街娼、のボーの周囲で、街娼仲間たちが次々と殺されていく連続殺人事件。
で、性同一性障害というのは解説によるもので、本編のボーはなんというか、女性っぽいゲイの青年な感じ。と感じたのは、わたしの中に、体:男で心:女なせイ同一性障害の人はもっと過剰に女性らしいという偏見があるせいか? 少なくとも普通の女性になりたがってる感じはない。劇場型っていうの? ステージで女性に扮するのが好きって感じで。つうか、ボーの場合、「体は男で心は女」なことより、幼い頃DVで幼児愛好者な父親から受けた暴力の後遺症のほうがウェイト断然高いし。
ともあれ、強烈だったわ、ボーのキャラクター。最初っから度肝を抜かれたもん。もうちょっとで「これはわたし読めん…」と投げ出しそうになったとこ。よかった、投げ出さずに。
ジョニーの正体とか、多少納得いかない部分はあったが、いや、面白かった。ほんとに面白かった。


『逃げ水半次無用帖』 久世光彦 文藝春秋
連作短編集。絵馬の絵描きで、三つのときに母親が首吊り自殺した半次が、安楽椅子探偵役の目明し佐助や、腰をいためてすわったっきりの佐助にかわって足となり目となる娘お小夜とともに、持ち込まれる謎を解く話。
と書くとなんか面白そうな話だ。本編はいまいちだったけど。
最初の二編くらいで投げ出しそうになった。こーゆーのを「女の情念」とか言われてもなー。なんともベタな「女の情念」でなー。
あと、お駒みたいないい娼婦が夜鷹落ちしてるってのもなんか納得いかず。花幻尼のキャラクターは◎。八千草薫で見たいっス。


『彼のこと』 藤堂志津子 講談社
有吉佐和子の『悪女について』形式な物語。
が、『悪女について』のほうが読み終わったあと、なんともいえない複雑な女性の存在になんかゾーッとさせられたのに対し、こっちは読んでる間は面白かったけど、読み終わったあと、なんか薄っぺらい安物の男の姿が残るだけで、うーん、いまいち。


『森の死神』 ブリジッド・オベール ハヤカワ文庫
テロで恋人を失くした上、自分も全身麻痺、しかも目まで見えなくなった主人公が、ひとりの少女と知り合ったことから、少年連続殺人事件に巻き込まれていくサスペンス・テラー。
面白かった。『異形の花嫁』と同様、これも真相部分はちょっとそのお…だったし、全身麻痺の女性がこれほど小奇麗なことはなかろうと思うのだが、全身麻痺で目が見えず話せない状態になってもなお「なんでも茶化さずにはいられない」主人公が実に感じがいい。


『普通の男』 榎田尤利 クリスタル文庫
ハズレ〜。どうしたんだ、榎田尤利〜。
普通の男同士がくっつくにはもっとなんか勢いみたいなものが要ると思う。


『外法陰陽師』1、2、3巻 如月天音 学研M文庫
先に読んだ『平安陰陽奇譚』天狗変&愁恋鬼とうってかわって、呪術が呪術として機能し、竜まで出てくる話。って、主人公が竜と人間のハーフなんだが。晴明が七十過ぎになってるので、奇譚の30年後くらいの話。で、やはりこの頃な毛利志生子の外法師シリーズ本編時期の十数年くらい前か? なんか最近、枕草子の背景を復習しまくってる気分が。
が、面白い〜。続き、まだあるよね、ね、早く出ないかな〜。


『4TEEN』 石田衣良 新潮社
平均値のテツロー・優等生のジュン・DVの父親持ちのダイ・早老症のナオトの中学生日記的連作短編集。
第二編「月の草」でテツローとおつきあいすることになったルミネが後の話にはぜんぜん出てこなかったのはなぜ?
結末がどれもハッピーエンドなのが気持ちよかった。
わたしにはものすごく今時のリアルな中学生だと思われたが、ほんとの中学生が読んだらどう感じるんだろう?



INDEX書庫