本読み月記


【ジャンル分け】 元々日本語で書かれた大人向け小説
元々日本語で書かれたジュブナイル小説。
日本語で書かれた小説以外のもの。

元は外国語で書かれていて、翻訳されたもの。

乙女のためのホモ小説
コミックス

われながら、なんつう荒くたい分け方であることよ。
ええっと、大人向けかジュブナイルかは、出版元の意向そのまんまです。角川スニーカー文庫とか講談社ティーンズハー
ト文庫とかコバルト文庫とかは、どんだけ立派な作品でもジュブナイルに入れてます。逆もそう。

『宇宙博物誌 銀河の時代』上・下 ティモシー・フェリス 工作舎
サイエンス本特集コーナーでふと目に止まり、なんとなく借りてきたんですが。
いや、大当たり〜〜♪♪♪
宇宙の構成や遺伝学、量子力学等の項目別に、現代に至るまでの考え方の変遷や、その時々の発見や、その発見に至る道筋や内容の説明、学者のエピソードまでつけてくれる、実に読みやすくて懇切丁寧な本であった。
ありがとう、ティモシー・フェリス。ケプラーの法則がやっと理解できたよ〜。特に第二法則なんざ、感動もんだったよ〜。これ、がっこで習ったときゃちんぷんかんぷんだったのよ〜。
天王星発見したハーシェルについて書かれた章なんか、むっちゃ胸にしみました。
「ビッグバン」を最初に考えたのはルメートルって人だってのも初めて知ったわ。しかもルメートル自身は自分が考えたこのモデルのことを「ビッグノイズ」と呼んでたのに、その説を嫌ったフレッド・ボイルって学者がいやみをこめて「ビッグバン」とか呼んで、そっちのほうが市民権得ちゃったってのも面白かったっす。(ちなみに「ルメートル」&「ビッグ・ノイズ」でgoogle検索しても一個しかヒットしなくて、しかもハズレヒットなのよ。「Lemaitre」&「big」&「noise」だとそこそこわんさかアタリヒットするんだがな)
が、行け行けどんどんだったのは、下巻は第二部の終わりまで。
第三部がね、素粒子論だったのよ……。
最初はかなり期待してたのよ、ここまであんなにわかりやすかったんだから、このあともきっと、と。
しくしくしく、甘かったですぅぅぅぅぅ。
三行読んでは二行読み返し、また前の頁に戻りつしましたが、途中からもう頭の中、てんやわんや……。
陽子と中性子がそれぞれクォーツ三つづつでできてんだけど、クォーツにはアップとダウンの二種類あって、その配合具合が2:1のが陽子で1:2なのが中性子だとか、陽電子が1932年にゃもう観測されて実在が認められてたとか(知らんかったっす、SFの中だけの概念だとばかり…。だって「プラスの電気を帯びているというのは電子が通常の状態より足りなくなってる状態である」って習ったしさー)、あ、そだ、加速器の仕組みもおかげでやっとなんとなくわかったわ、フェリスさん〜。(リニアでごんごん加速していくとこからはともかく、その寸前、「電子を一個だけ加速器に放り込む」ってのが、なんでそーゆーことができんのか、狐につままれてるみたいなキモチはしてますが)
が、あとはもうちんぷんかんぷんでございましたわ、フェリスさん〜。
それにしてもこんなわけわかんねーあれこれが理論と実験結果が適合するってんで身の回りのいろんなもんに応用され実用化されてるらしい現代社会の摩訶不思議よ……。


『聖遺の天使』 三雲岳斗 双葉社
ときはルネサンス。北部イタリアの湖水地方にある奇妙な逸話に彩られたある館と、その館に伝わる聖遺物、そこで起きた奇妙な殺人事件。
それらの謎を、ときのミラノ公国執政ルドヴィコの依頼によって、レオナルド・ダ・ヴィンチが解く物語。
いや、面白かったっす。文章が端正で、この手の話としてはかなり相当まっとうな部類っす。


『魔術師』 ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋
リンカーン・ライムシリーズ第五作目。
ニューヨークで起こるマジックの技術を駆使して殺人を行い現場を逃げ延びる連続殺人犯。犯人を捕まえるため、ライム&サックスはマジシャン志望の女性に協力を請う。
というわけで、松岡圭祐の『マジシャン』既読者にはあっちと比較して読めてさらに楽しい五作目であった。ライムが『悪魔の涙』のキンケードと電話で話すシーンもあって嬉しかったっす。


『サウンドトラック』 古川日出男 集英社
別々に漂流した男の子と女の子が山羊の住む無人島にたどりつくまではわくわくどきどき行け行けどんどんだったんだけどなー。
なんか、練りがぜんぜん足りなくてボソボソした感じ。


『中国行きのスロウ・ボートRMX』 古川日出男 メディア・ワークス
村上春樹の同タイトルの小説にインスパイアされて書かれた小説らしい。
が、村上春樹のはもちろん読んでいない。(一冊だけなんか読んだ覚えがうっすらあるが、『ノルウェイの森』ではない)
主人公の男の子がどうしてそんなに東京から脱出したがるのかがわかんなかった…。(皇帝ペンギンと皇帝ペンギン飼育係が日本を脱出したがる気持ちのほうがずっと共感できるっす)


『バンダル・アード・ケナード 運命は剣を差し出す@』 駒崎優 中央公論新社
『バンダル・アード・ケナード 運命は剣を差し出すA』 駒崎優 中央公論新社
@は怪我がもとで部下たちとはぐれた傭兵隊のリーダーが、訳あり臭い男と一緒に旅する話。で、@が危機一髪で終わっていたのに、Aはいきなり傭兵隊の過去のエピソード。すぐに本編に戻るかと思えば、それが続く、続く、延々続く。
で、Aの最後のほうじゃ@の終わりにつながったんだったっけ? あれ? あれれ?


『慕情街道1 不忍の恋』 たけうちりうと 小学館キャンパス文庫
『慕情街道2 異邦人の恋』 たけうちりうと 小学館キャンパス文庫
『慕情街道3 義賊の恋』 たけうちりうと 小学館キャンパス文庫
明治時代の終わり頃。
絵の修業のため東京に出てきた島育ちののんびりした青年と彼を取り巻く人たちの物語。
どれもいい話なのよ。やっぱうまいのよ、たけうちりうと。主人公とその彼氏のみならず、彼氏の家族や青年が書生として寄宿してる先の主人やその奥さん(第一話ではまだ婚約中)もみんないい味だしてんのよ。
これ、ホモ抜きで読みたかったよおおおお。
主人公夏海と彼と親しくなる骨董屋の次男坊、このふたりをただの仲良しにしたほうが、絶対断然面白かったと思うのよおおお。


『天使と悪魔』上下巻 ダン・ブラウン 角川書店
『ダ・ヴィンチ・コード』の前作にあたる本。
導入部分、主人公の図像学者ラングドンがジュネーヴのセルンに拉致られるとこから盗まれたのが反物質であることが判明するとこあたりまで、前述の『宇宙博物誌 銀河の時代』下巻の素粒子んとこ読んでなければ、「うわ、荒唐無稽〜ん」と呆れたと思う。いやよかった、先にあれ読んどいて。サイエンス本特集コーナーにあれ混ぜといてくれて、ほんとにありがとう、中図書館。
しかもこれに関しちゃ「シンクロニシティ♪」(もちろんスティングの声とメロディで読んでね)も〜。
『宇宙博物誌』でビッグバンを思いついたのがルメートルって牧師兼業の物理学者だったってのをはじめて知ったんですが、この『天使と悪魔』を読む2、3日前、めったに読まない朝日新聞の天声人語をひょっこり読んでみたところ、ハップル望遠鏡が廃棄処分される瀬戸際ってネタで、そこに「ハップルがビッグバンを確認した」みたいなとこがあって、「あれれ? ビッグバン思いついたのはルメートルじゃなかった?」とか首かしげたら、これにそのあたりの事情がきっちりと。この本によると、思いついたのはルメートルだけど、証拠を集めて裏付けたのがハップルだったんだそうです、へーほー。(P90参照) ほんの二週間の間の数珠繋ぎ〜。
で、『ダ・ヴィンチ・コード』でも最初に殺人事件が起こるのは実在するルーブル美術館でしたが、こっちでも同様、実在するセルンが最初の殺人の舞台。でも実在のセルン、ここによると「一般見学者大歓迎〜♪レッツ・カモ〜ン♪」な感じなので、場所と施設名とでっかい加速器あるとこだけ同じな架空の場所っぽい。
ほんでかっちりきっちり調べてるとことベタな陰謀があざなえる縄のごとしな構成なのも、『ダ・ヴィンチ・コード』と同様。
「こいつが犯人だろうな〜。だったらやだな〜。もう一捻りか二捻り欲しいな〜」と思ってたらやっぱりそいつが犯人なとこも、『ダ・ヴィンチ・コード』と同様。
で、この事件でラングドン教授、最初の殺人で養父を殺された女性生物物理学者となんかいい感じ〜なんですが、『ダ・ヴィンチ・コード』でも、最初の殺人で父親殺された修復家となんかいい感じ〜だったよな? あっちの最初のほうでこっちの学者と別れたとかなんとかの説明はあったっけ?


『彩雲国物語 はじまりの風は紅く』 雪乃紗衣 角川ビーンズ文庫
『彩雲国物語 黄金の約束』 雪乃紗衣 角川ビーンズ文庫
『彩雲国物語 花は紫宮に咲く』 雪乃紗衣 角川ビーンズ文庫
『彩雲国物語 想いは遥かなる茶都へ』 雪乃紗衣 角川ビーンズ文庫
ちょっと読んでみたいなと軽い気持ちで既刊を図書館に全部予約、うち、やっと1と2の順番が回ってきて読みかけたところ。。。
やめられない、とまらない〜♪♪♪
『黄金の約束』の途中あたりでこらいかんわと、続き買いに本屋走ったさ〜。
舞台は彩雲国という皇帝いた頃の中国っぽいテイストの架空の国。
主人公は、血筋と家柄だけは極上なのに、世渡り下手な父親のせいで貧乏暮らしがかまぼこのように板についた秀麗物語開始時には16歳。
『はじまりの』で、やる気がまったくない上にホモの新王の根性を叩きなおすために後宮入り、『黄金の』では市井の暮らしに戻っていた彼女が少年に身をやつして人手不足の外朝で臨時アルバイト、『花は紫宮』では初の女性官吏として新人研修、『想いは遥か』では茶州州牧の任につくため茶州を目指す。
たまにしょげたりはするけど前向きでときどき身も蓋もない秀麗、実に愛すべき主人公。秀麗の父だの幼い頃から秀麗の家に使える青年だの王だの王の側近だの前王側近だったじじいどもだの、有能だけどいろいろ癖も問題もあるいい男がわんさか。秀麗の亡き母だの前茶家当主の未亡人だの、美人だけどいろいろ癖も問題もあるいい女もわんさか。
とにかくむっちゃ楽しい本です、話です、断然お薦め、損はさせない、みんな読め。


『愛ときどき混戦』 たけうちりうと 講談社ホワイトハート文庫
普通の女好きな青年(後に受)とちゃんと彼氏のいる青年(攻)の魂というか精神がアクシデントで入れ替わり、すったもんだした末に元に戻ったときにゃデキていた話。(うーん、身も蓋もないな)
後に受なほうがインテリア関係の仕事をしてるんだが、そのデキる仕事ぶりが、読んでて実に気持ちよかった。


猫探偵正太郎の冒険U 猫は聖夜に推理する』 柴田よしき 光文社
猫探偵正太郎の冒険V 猫はこたつで丸くなる』 柴田よしき 光文社
気がついたら正太郎もの、二冊も出ていた。
どっちも短編集。
飼い主&正太郎、古びた一戸建てっぽいとこに住んでる設定にしとけば、他の犬猫と交流する部分でもっと自由が効いたんだろうな。
正太郎一人称語りでない話も入ってるが、わたしはやっぱ、正太郎一人称が好きだ。
飼い主についに彼氏ができたが、面白みのないまっとうそうな男で、これなら糸山とくっついて欲しかったなー。


『カーマロカ 将門異聞』 三雲岳斗 双葉社
平将門もので陰陽師もの。陰陽師は、如月天音の『平安陰陽綺譚』系。
敗北したあとの将門が実は生きていた系の話だが、信濃が舞台だったのが目新しい。日本海に出て大陸を目指そうとする将門たちと、それを追う人々。
キャラクターもそれぞれ一、二捻りされており、三雲岳斗ってやっぱりいい作家だと思った。



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