本読み月記


【ジャンル分け】 元々日本語で書かれた大人向け小説
元々日本語で書かれたジュブナイル小説。
日本語で書かれた小説以外のもの。

元は外国語で書かれていて、翻訳されたもの。

乙女のためのホモ小説
コミックス

われながら、なんつう荒くたい分け方であることよ。
ええっと、大人向けかジュブナイルかは、出版元の意向そのまんまです。角川スニーカー文庫とか講談社ティーンズハート文庫とかコバルト文庫とかは、どんだけ立派な作品でもジュブナイルに入れてます。逆もそう。

『彩雲国物語 紅梅は夜に香る』 雪乃紗衣 角川ビーンズ文庫
舞台は茶州から都に戻り、新章突入。
秀麗は茶州での責任をとらされ、平に降格させられた上に謹慎中。が、めげずに今の自分にできることをできるかぎりやっていこうとして、市中に出回る贋金や同じく出回る贋作絵画に出くわしてしまう。
来月にも新刊出るそうな。すげー。読ませてもらうほうはむっちゃ嬉しいが、大丈夫か、雪乃紗衣? 体はいとってくれよ、雪乃紗衣。


『空と月の王』 霜島ケイ メディアファクトリーMF文庫
封殺鬼が完結して一年あまり。知らない間に出ていた霜島ケイ。
教会が宗教だけでなく司法立法行政の三権をも司る祭政一致の最終戦争後の世界。
駆け出しの鎮魂屋(死者の魂を鎮め、土地を浄化させる職業)トキが、教会から弾圧される召還師、それも禁忌中の禁忌、過去から人間を召還してしまった少女と知り合い、それまで当たり前だと思っていたあれこれに疑問を持ち始める話。
だったかな? シリーズものらしいので続編を待つ。


『アスラクライン5 海高アンダーワールド』 三雲岳斗 電撃文庫
新キャラは、第二生徒会会長にして機巧魔神(アスラ・マキーナ)演操者ハンドラー六夏と、六夏の友だちで美化委員長で悪魔のひかり。
この2人のせいで、智春&操緒が学園地下の不可侵ゾーンに足を踏み入れて右往左往する本編プラス嵩月奏が猫耳を生やす番外編付。
いや、タイムリー。半分読んだとこで葉子ちゃんに会い「最近の猫耳とかってなんで猫耳なんかのエクスキューズがないんやな」「いや、そんなんもあるけど、わたしが読んでる中にはないなあ」という話をして、帰って続き読んでてこの猫耳番外編に出くわしたんす。んで葉子ちゃんに次あったとき、「あれから猫耳話読んだけど、それはちゃんと理由付やった」「どんな理由や」「湿気」「は?」「湿度の湿に気配の気の湿気」「………」。説明が足りなかったか? おがきちかのランドリオールの最新刊にも猫耳が生える番外編があったけど、あっちは麻疹のせいだったよ、葉子ちゃん。


『ハチミツとクローバー』10巻 羽海野チカ 集英社
完結巻。はぐがこういう選択をするとは想定外。旅立つ竹本君にサンドウィッチを届けるシーンでは素直に泣いてしまいました。
番外編が二編付いてて、愛想があったな。頁合わせに収録された読みきり二本もいい話でした。


『パズル・パレス』上下 ダン・ブラウン 角川書店
ラングトン教授ものではなく、主役は語源学および言語学の大学教授ベッカーとNSA(National Security Agency)の暗号解読課主任スーザンのカップル。
NSAには「トランスレータ」というスーパーコンピューターがあり、対外的には極秘にされているが、現在電子メール等に使われており最も安全とされる公開鍵暗号で変換された文章をパス・キーなしでほんの数時間で元の文章に変換することができる。ところが元NSAの暗号解読員エンセイ・タンカドが、“平文変移関数”という概念を使ったトランスレータも太刀打ちできない文章変換システム「デジタル・フォートレス」を開発し、「トランスレータ」が公開鍵暗号を解読できる事実を公表しろとNSAを脅す。
で、大学教授はタンカドが指輪に刻んで身につけている「デジタル・フォートレス」のパス・キーをスペインに追い、スーザンはタンカドのメールアドレスから協力者の所在をデジタルの世界で追いかける。
最初のほう、暗号システムの説明とかは面白かったんですが、説明終わったあとはただのB級アクションであった。「こいつきっとわるもん」と思った奴が今回もやっぱりわるもんであった。
ところで犯人のエンセイ・タンカド、日本人つう設定なのだ。タンカドが苗字でエンセイが名前か。うーん、ビミョー。あともう一人、日本の大企業のトップが出てきて、そっちがトクゲン・ヌマタカ。苗字がヌマタカで名前がトクゲンか。うーん、ビミョー。


『ロンド』 柄澤齊 東京創元社
「マーラの死」や「九相死」を模した連続殺人事件に、天才画家が残した幻の絵の捜索が絡む話。
二番目の殺人、ほんとは一番目だけど犯人の公開順だと二番目、の、遺体の腐っていく様を「九相死」どおりのタイミングでパネルにしたのとかはぞくぞくしたんだけどなー。うーん、竜頭蛇尾?
 


『レベル3』 ジャック・フィニイ 早川書房
短編集。11編入り。
好きなのは表題作でグランドセントラル駅の地下三階に19世紀末への入り口がある「レベル3」、隕石を溶かし入れた活字で印刷したでたらめ記事が現実になる「ニュウズの蔭に」、過去の名車を根気よくリストアした青年がその車が作られていた時代にさまよいこむ「第二のチャンス」。「レベル3」と「第二のチャンス」以外にも「こわい」「おかしな隣人」「失踪人名簿」などが過去に行ったり行く機会があったり過去が現在に迷い込んできたりする話。
ちなみにわたしが一番好きなフィニイの小説は『ゲイルズバーグの春を愛す』(内田善美の美しい表紙の本)収録の「クルーエット夫妻の家」だ。建物の古い設計図を見つけた夫婦がその設計図どおりに家を建てて移り住んだところ、夫婦の暮らしぶりがごくごく自然にその設計図が描かれた時代のものに変化というか取り込まれていく、という話。


『Google誕生』 デビッド・ヴァイス イースト・プレス
検索エンジンGoogleの誕生と成長を描いたノンフィクション。
このデビッド・ヴァイスって人、構成というか盛り上げ方が下手。で、いいエピソードはあちこち点在してるのに、全体になんか冗漫な感じだった。
読み物として楽しかったのは18章「グーグルは腹ぺこだ」。
ところで227頁によると、「ドイツ語では『グーゲルテ』(googelte)、フィンランド語では『グーグラタ』(googlata)、そして日本語では『ググる』(guguru)。」だそうだ。そうか、外国でもやっぱり「ググっ」てんのか〜。


『イン・ザ・プール』 奥田英朗 文藝春秋
初めて読んだ奥田英朗。ブレイク中の『ガール』を読んでみようと思ったら、ま、当たり前っすが、図書館で予約三桁待ちだったんす。
で、映画化された(映画まだ観てないけど)こっちを先に読むことにしたんですが。

面白い〜っっっ!!!


ばりくそげっつい面白い〜〜〜っっっ!!!


連作短編集。舞台はとある総合病院。身体の異常を訴えているが、検査してもとりたてて悪いところがない人が薦められるのは、地下一階の、医者一人看護婦一人の閑古鳥鳴く神経科。
この医者がとんでもねー。色白のぷくぷく太ったオタク体型に、心は口唇期を出ておらず、マザコンで、なのにコンプレックスがまったくない。やりたいように生きている。なのに一人、また一人と、この神経科で癒されていく人々〜。
それにしても、なぜこのとんでもねー医者をてんびん座のB型にしたのだ、奥田英朗。個人的にてんびん座のB型に含むところでもあるのか、奥田英朗。


『ウランバーナの森』 奥田英朗 講談社文庫
というわけで、いますぐ読める奥田英朗を捜したら、初芝図書館で三冊ばかり居残ってるのを発見、とりあえず借りてきた。
これがデビュー作らしい。
舞台は1979年の夏の軽井沢。ジョン・レノンが軽井沢で過した最後の夏を奥田英朗が妄想してるうちに生まれたらしいお話。
ばりくそげっつく面白くはないが、別荘のお手伝いさんのタオさんとジョンとのやりとりとかが楽しかった。
ビートルズ妄想といえば、「ザ・ビートルズ 1976ダコタ・ハウスにて…」つうテレビドラマがある。アイダン・クインが出てるので、わざわざ道頓堀のTSUTAYAまで借りに行って観た。1976年、ニューヨークにやってきたポールがダコタ・ハウスにジョンを訪ね、喧嘩したり仲直りしたり喧嘩したり仲直りしたりしつつ一日を過すって、乙女な妄想ドラマであった。


『サウスバウンド』 奥田英朗 角川書店
二部構成。一部が東京での生活、二部が沖縄は西表島へ移ってからの生活。元全共闘で自称フリーライターの父、喫茶店を営む母、OLの姉、二歳年下の妹と暮らす、小6の男の子が主人公。
一部も面白いが、沖縄に舞台を移した二部がもう、むっちゃわやくちゃ楽しい。沖縄の牧歌的な生活もさることながら、ステロタイプな元全共闘だと思ってたお父さんが、個人としていろんなものに敵対していたことが判明するところなんか、すげーカタルシスあったっす。


『最悪』 奥田英朗 講談社
町工場の工場主、銀行の窓口担当のOL、ちんぴらの三人が主人公。
この三人の状況がかわりべったん語られるが、相当終わり近くまで、三人の人生が直接絡まることはない。
三人が三人とも、じわじわじわじわ不幸への道をたどってくとこが、読んでて実に怖かった。最後はもちろんそれぞれ破滅を迎えるのだが、迎えたあと、ここまでどえらいことが起こってもその後は「なんだ、こんなもんか〜」だったとこが、なんかすごく気持ちよくて、読後感は◎。


『セザンヌを探せ』 ピーター・メイル 河出書房新社
『南仏プロヴァンスの12ヶ月』のピーター・メイルって小説も書いてたんですね。『南仏プロヴァンス』シリーズ一冊も読んでなくて、初めて読むピーター・メイルだったんですが。
インテリア雑誌の仕事をメインにしているフリーカメラマンが、ひょんなことからやばい写真を写してしまい、それがもとで贋作擦り替え組織に終われることになる、キュートなドタバタアクション劇。
いや、好きだわ、わたし、この話。映画向きだと思う。カメラマンに協力することになる画商はやっぱりマイケル・ケインっすかね。映画化されたらたぶんカットされるエピソードだと思うけど、イギリスの貴族の館での、変人男爵(だったっけ? 子爵だったっけ?)とその娘の話とかも愉快だった。カメラマンがイギリスのパブでとるランチ、同じ内容のがアーロン・エルキンズのギデオンシリーズにも出てきて、あっちは実においしそうだったけど、ピーター・メイルはそんなに好きではないらしい。タマネギの古漬けってどんなんじゃろ。


『邪魅の雫』 京極夏彦 講談社
首を長くして待っていた京極堂新刊だったが………。
ううう、たるかったよ…。相当部分、面倒くさくて読みとばしちゃったよ……。ことの真相もなんだかな………。



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