本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス


『第九の日』 瀬名秀明 光文社
図書館。
先に読んでしまった『デカルトの密室』の前作。「メンツェルのチェスプレイヤー」「モノー博士の島」「第九の日」「決闘」の4編入り。ロボットのケンイチの一人称部分と、ケンイチを作った工学博士尾形祐輔の一人称部分からなるが、後者によると前者は、尾形祐輔がケンイチの一人称で書いた文章、ということになっている。
わたしはロボットの自我という問題にはあまり興味がないのだが、この連作は面白かった。
イギリスを一人旅行中にケンイチが行方不明になる「第九の日」には重要なディティールとして「ナルニア国物語」が使われているのだが、ここに書かれている瀬名秀明本人のものと思われる「ナルニア国物語」に対する感想に、むっちゃ賛成である。


『ゴッホは欺く』上下 ジェフリー・アーチャー(訳:永井淳) 新潮文庫
図書館。
アーチャー三系統では、『百万ドルをとりかえせ』や『大統領に知らせますか』系。
ゴッホの自画像を含む資産すべてを元チャウシェスクのマネーロンダリング係だった銀行家に巻き上げられそうになっているイギリスの旧家の財産を、クリスティを退社後その銀行に勤めていて知らず折衝係を務めていたルーマニア出身の女性が、持てる知恵とコネと幸運のすべてを尽くして救おうとする話。

これは
アッタリ〜♪♪♪

善玉は共感しやすく、悪玉は実ににくたらしい、わかりやすい登場人物たち、ニューヨーク、カナダ、ルーマニア、イギリス、日本とめまぐるしく移動するが、ゴッホの自画像を焦点に物語の骨格が明確なため、行け行けどんどんダッシュしても大丈夫〜♪ 登場人物の白眉はルーマニア出身の女殺し屋。これは実に怖かった。
物語の始まりは2001年9月10日。イギリスの旧家の女性当主の自殺に始まるのだが、すぐに舞台はニューヨーク、主人公の出社風景に移る。勤め先の銀行のオフィスの場所は世界貿易センタービル、ノースタワー83階。この時点で、あ、これは来る、来る…とドキドキした。このドキドキは、20世紀初頭が舞台の小説で、1912年にさしかかった頃、主要登場人物の誰かがイギリスからニューヨーク向けて船旅してしまうときのドキドキに似てる。記憶に残っているのは…、…『カインとアベル』じゃん。やっぱりアーチャーじゃん。カインの父ちゃんが乗っちまうんじゃん、タイタニック号。


『ビギナーズクラシックス うつほ物語』 宮城秀之 角川ソフィア文庫
図書館。
日本初の長編物語『うつほ物語』(成立は10世紀頃)を、トピックスシーンごとに現代語訳+原文+解説したもの。
新刊コーナーで見つけ、ついふらふらと借りてきた。
始まりは伝奇物語なのに、その伝奇部分が生かされないまま、宮廷の権力争いになっていく、へんてこりんな話であった。が、この頃から、男を主人公にしたサクセスストーリーの最大のハッピーエンドは天皇の外祖父になることだったんだなあ、というのは興味深かった。
名琴と天人に授けられた秘曲というのが、わりと重要なアイテムで、一代目がまずそれをペルシャでゲット、日本に帰ってできた娘に伝え、その娘が息子に伝える。その三代目の息子が物語の主人公である。が、一度秘曲を会得してしまうと、彼もそのおかんも全然練習しない。特におかん、息子の父親と同居しだしてからはまったく琴に触りもしなかったのにいざ弾くことになると、技量はまったく衰えていないのである。つまり「一度奥義を身につければ一生もの」という、んなアホな、な日本的価値観がすでにこの頃成立していたのも興味深い。
真打は最後、まわりに薦められても自分の技量など…と一応は謙遜遠慮してみせ、そこを強いて薦められて初めて技量を披露するべき、というお作法もすでに成立していたらしい、どひゃー。
解説はまじめでわかりやすかったが、まじめなのにまじめなままでところどころミョーな煽りが入ってるとこが、なんかおかしかった。


『おとぎの国の科学』 瀬名秀明 晶文社
図書館。
エッセイ集。
ロボットの自我という問題には、わたしはまったく興味がない。虫や魚等、系統的に人間から遠い生き物がどういう風に感じながら生きているんだろうとイメージするよりは、イメージしやすいなと思うだけだ。うーん、そんなに気になるもんかな、ロボットの自我。
「難しいがおもしろい」には共感した。確かにわたしの科学知識の大半は、学校の授業ではなく、SFから得たものである。が、SFなので、どこまでが本当でどこからが作者の創作か判断できなかったところがネックである。この場合、本当なのに創作だと思い込んでしまう確率のほうが高い。アシモフのロボットの動力源である陽電子も、つい最近までいわゆるSF界でのお約束設定だと思ってたもんなー。クラークの小説に出てきた、人間が装備なしで宇宙船から宇宙船へと飛び移る、あれはどうなんだろ。10秒までならなんとか持ちこたえられるという10秒ルールが適用されてたが。ま、科学知識に限らず、その他技術的なことでも歴史についても、小説で読むとするする頭に入るのはなぜだろう。
映画「パラサイト・イヴ」の完成前に書かれたらしい文章にはほろりとしました。あの原作を、まさかあんなクソ映画にされてしまうなんてねえ。どこもかしこもダメダメなあの映画でわたしが一番腹立たしかったのは、クローネンバーグの「運命の絆」のハンパなパクリ。
映画といえば、1988年カナダ制作の映画「赤毛のアン」の主人公について、瀬名秀明も「原作から抜け出てきたようなアン」と評しているが、あのアンははっきり言って、ふっくらとして血色がよく、ダイアナな感じだった。アンの外見について、原作では何度も「やせっぽっち」「すらりとした」、顔色についても「ばら色の頬ではない」と書かれている。ので、ほっそりとして頭の小さい、滑らかな薄い皮膚が顔にぺったり張り付いたような、今では美人と評されるが当時は美人の規格から外れていたであろう、パリ娘によくいるタイプをわたしは思い浮かべている。


『ハル、ハル、ハル』 古川日出男 河出書房新社
図書館。
表題作および「スローモーション」、「8ドッグズ」の三編入り。
著者のあとがきに曰く、「新しい階梯に入った」のだそうだが、うーん、実験的にはなってたが、実験的になってたがゆえに、その他の実験的小説と差異がなくなったという感じ。
せっかく入ったらしいとこをなんだが、その階段、前の場所まで降りてこいよ、戻ってこいよ、古川日出男。


『鯨の王』 藤崎慎吾 文藝春秋
図書館。
深海でみつかった鯨のようであちこち鯨でない骨。同じ頃、アメリカの原潜の乗員を襲う謎の死。
それを導入部に、海面に出ず深海のみで暮らす鯨をめぐる三方向からのアプローチ、アル中の鯨学者とメセナ活動の一環として彼に資金提供を申し出る大企業、海底基地、アメリカ海軍、が始まり、それにイルカと鮫から取り出した中枢神経を組み込んだコンピュータによって制御される深海艇や、イスラムのテロ組織が絡む。
前作の『ハイドゥナン』よりは海底がイメージしやすかった。が、鯨学者須崎がダイマッコウを見つけるあたりから、須崎と海底基地に取り残されたライスが連絡をとりあうくらいまで、なんか冗漫だった。
それに須崎だけど、悪い人じゃないんだけど、もうちょっと別の共感しやすい「偏屈な学者」にはできなかったんだろうか。
須崎のモデルの鯨類学者加藤秀弘博士と著者の対談つき。これ、めっぽう面白かった。
もし続編があるなら、バイオメッド社に残されたフィンクをはるかのもとに戻してやって欲しいです。


『アラシゴト まるごと嵐の5年半』 集英社
図書館。
2005年中ごろまでの、嵐の写真やら写真やらインタビューからの抜粋やら雑誌の特集からの抜粋やら写真やらこの本のためのインタビューやら身体計測値やらを、がっつり1冊にまとめた本。
発売から1年半経っている今も、図書館ではいまだ予約待ち、わたしの後ろにもまだ予約がいる。
「もし、メンバーの○○と△△したら?」の「モーソー劇場」、「相葉ちゃんと」のとこの桜井くんのコメントが超おかしかった。中でも「無人島に遭難」のとこは白眉。
語録コーナーもちらほらすげー面白いのがあったな。松潤の「(車は)ぶつけても、“ま、乗れりゃいいか”って。(中略)外側がどうでも、(運転している)オレには見えないじゃない?」、賛成、賛成、すげー賛成。(ぶつけた場所をゼニかけて治すための言い訳に「ぶつけた部分から錆びていく」ってのがありますが、あのわずかな塗装の裂け目から錆が侵食してドアだのシャシーだのが完全に破壊されるには、短くても50年はかかると思います) ところで今度大野くんのソロコンがあったら、KAYOちゃんはわたしをお供に選んでくれる心積もりでいるらしい。心変わりしないでね〜。>KAYOちゃん


『ぐるぐる猿と歌う鳥』 加納朋子 講談社
図書館。
ミステリ作家たちに小学校の図書室や図書館の児童書コーナーに置かれてもOKな(乱歩の「少年探偵団」シリーズや児童書として翻訳されたホームズやルパンのシリーズみたいな感じ? あ、あれ、どこのだったかな? 海外のミステリから1作家1作でピックアップしたシリーズもあったな。エラリー・クイーンやジョン・ディクスン・カーを初めて読んだのはこのシリーズだった、確か)ミステリを1作家に1作づつ書かせる「ミステリーランド」シリーズの中の1冊。これまでに、太田忠司と小野不由美、倉知淳、篠田真由美、森博嗣のは読んだが、その中でこれが一番面白かった。というか出来がよかった。
主人公は小学校5年生の男の子。父親の転勤で東京から北九州に引っ越したこの子が、新しいご近所さんの子供たちと次第に馴染んでいくのが、ものすごく自然で、読んでいて心地よい。小学校の体育館の屋根の上からだけ見える「サル」の謎。謎の少年。主人公が幼い日に仲良くなった女の子の謎。それらが慌てず騒がずじっくりほどかれていくのが、ほんとに気持ちよかった。
続編、読みたい、読みたい、読みたい…。


『関西弁講義』 山下好孝 講談社選書メチエ
図書館。
先日読んだ金子金子武洋がむっちゃ面白かったので、ほかにもあんな感じに面白い本はないかと、言語学の棚を漁ってみつけた本。
京都生まれで京都育ち、その後北海道で日本人にスペイン語を、外国人に日本語を、教える仕事を続けてきた著者が、北海道大学で「外国語としての関西弁」という講義を開き、その講義ノートを一冊の本にまとめたものがこれ。
しょっぱな、学生時代にスペイン語では多くの単語のアクセントが後ろから二番目の音節に来ることを学んだときに、関西弁の発音との類似に気づき、「スペインはヨーロッパの関西地方なのではないか」と思うところがまずおかしい。
そのあとの、関西弁を「方言」ではなく「言語」とみなすため、「言語」「方言」の定義づけ部分も、なんか無理やりな感じでおかしい。
29頁の『全国アホ・バカ分布図』に載せた朝日新聞インタビューからの引用、堂本剛「ベタな関西弁だと東京の人に通じないし自然と標準語に近くなっている」堂本光一「テレビでは標準語をベースにしてイントネーションは関西弁」も目からうろこであった。
アクセントといえば、同じ堺の中でも差異がある。堺市南東部の南海高野線初芝駅に近い我が家近辺では「えみちゃん」「かっちょちゃん」は平坦な発音だが、初芝から6駅離れた堺東駅近くの母の実家では、「えみちゃん」は「み」、「かっちょちゃん」は「ちょ」、どちらも前から2音節目にアクセントがくる。ずっと「けったいな…」と思ってたのだが、関ジャニ∞の錦戸亮(門真市出身)が同メンバーのひなちゃん(村上信五の愛称)を呼ぶとき、うちの母の実家と同様、2音節目の「な」にアクセントがくる。なぜ、堺東と門真市の発音が同じ…。どっちもその場所あたりはすべてそのアクセントなのか、それともうちの実家なり錦戸家なりだけの現象なのかも不明。この名前のアクセントの分布について、誰か調べてくんないかな。(横とすばるがときどき「ひな」と呼び捨てにすることがあるが、このときってアクセントどっちだったっけ、うーん……)
そしてこないだ高校時代のダチ4人で集まったとき、大阪弁の話になって。わし「そやけどうちの近所、四国の出の人多かったから、わたしの言葉、四国も混ざってるかもしれん」みわこ「それ言うたら、うちかてひいばばとかうちの父、和歌山やから混ざってるわ」映美「うちは広島」葉子「東京、名古屋、京都…」。


『ホテル・パスティス』上下 ピーター・メイル 河出書房新社
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ピーター・メイルの小説『セザンヌを探せ』が面白かったので、ベストセラーになった『プロヴァンスの贈り物』を読もうとしたら、開架にない。続編の『南仏の昼さがり』や『プロヴァンスの十二ヶ月』しかない。読むなら順番に読みたかったので、そっちはまた今度にして、また小説を借りてきた。
見栄っ張りで金遣いの荒い妻と離婚したての広告会社社長が、薦められて息抜きのため南仏を訪ね、同じくバツ1の素敵な女性と知り合い、広告会社を辞めてその地でホテルを開く話。その合間に、銀行の金庫を狙う小悪党一味の計画が挟まる。
面白かった〜♪ この小悪党一味の計画が成功、ぶじ逃げおおせるとこも爽快だったし、ホテル経営が成功したあと、でもなんか違うな、と思ってた主人公が、ひょんなことから小悪党一味に「誘拐」されてしまった大富豪の息子(彼が誘拐されるくだり、粋でキュートな筋運びであった)の父親からあらたな仕事のオファーを受けることになり、わくわく感を残して終わったのもよかったな。


『世界の神話3 ギリシア・ローマの神話』 吉田敦彦 筑摩書房
図書館。
これから他図書館に返されますよコーナーで発見、わたしのギリシア神話知識はほぼ小学校のときに学校の図書館で借りてきて読んだ子供向きに書かれた本に依存したまんまだったことを思い出し、借りてきた。
いや、いろいろ新しい知識を身につけさせてもらったわ〜。小学校の本には、アテナはゼウスの額から生まれたことにしか言及していなかった(と思う)が、そうか、母親がいたのか。他にもゼウス胤の神様ってこんなにいたのね。が、ああ、もう詳しいことを忘れてしまった…と思って「ギリシア」「神」「血縁関係」て検索して、ここ見つけました。便利。


『水底の骨』 アーロン・エルキンス ハヤカワ文庫
新品購入。
ひさしぶり〜♪のギデオン・オリバー♪ 今回も舞台はハワイ。島はハワイ島。
友人のFBI捜査官ジョン・ロウの招きで、ジョンが学生時代にアルバイトしていた牧場に滞在することになったギデオンとジュリーだが、折を同じくして、その牧場主の伯父で10年前に失踪したマグナスの乗った飛行機が海で発見される。機内に残された遺骨等の回収の立会いを頼まれたギデオンは、その遺骨がマグナスのものではなく、マグナスの失踪と時を同じくして殺されたもう一人の伯父トーケルのものであることを見つけてしまう。
プロローグはマグナスの乗る飛行機を操縦する女性パイロットの視点から描かれている。のに、彼女は墜落時に亡くなっただけ、問題が解決した時点でも、その女性についてはほとんど何も語られない。うーん、なんでこんな構成にしたんだろ。


『ひこねのよいにゃんこのおはなし』 もへろん(ぶん・え) サンライズ出版
新品購入。
1000円もする。ので購入を悩んでいたが、ダイエー北野田店2階の書店でダイエーのポイントが使えることが判明、注文した。
よかった、ポイントあって。もし現物見てて、1000円まるごと払わなければならなかったら、たぶん買う踏ん切りがついていなかった。
が、薄くて小さくて装丁も中身もほんとに可愛い本。彦根のおとのさまを落雷から救ったにゃんこの話。


『鋼の錬金術師』17 荒川弘 スクエア・エニックス
新品購入。
やっと、ああやっと、連載時に読んだ分が含まれていない、まるまる初めて読む分〜。
オリヴィエ様、素敵〜vvvvv キング・ブラッドレイの台頭からアムネトリス上層部が真っ黒になったわけでなく、元から巨大な練成陣を作ることを目的に作られた国だった、ってあたりはほんとにわくわくした。


『最遊記外伝』3 峰倉かずや 一迅社
新品購入。
4人組、ついに天界を逃亡。
が、最終的には悟空、あの檻に閉じ込められるんだよね? ほんで??(あり? wikiからコピペしてきたのに…。向こうじゃ表示されてたのに。「なたく」っす)はどうなるの?


『アスラクライン8 真夏の夜のナイトメア』 三雲岳斗 電撃文庫
新品購入。
前作がものすごくシリアスな終わり方をしていたわりにはお気楽に幕開け。
杏の親戚のペンションを手伝いに行くことになった科学部面々。ところがそこには一巡目の世界の遺跡があり…。


『夏目友人帳』4 緑川ゆき 白泉社
新品購入。
いま気づいたんですが、表紙ににゃんこ先生の前世(違う)のお姿が〜っっ!!
20頁の先生の寝姿、素敵です〜vvv 24頁のフィルター付雪合戦シーンも痺れました♪ 話では、夏目が助けてやった小妖怪が実は強い妖力の持ち主で夏目を救ってくれる第14話、こんな話、好き〜♪
特別編その3も大好き〜♪


『龍の花わずらい』4 草川為 白泉社
新品購入。
侍女のルピナ、おっとな〜♪♪♪ 読者をはらはらさせた挙句、しびれ薬盛るシーンのかっこよさvvv




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