本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス


『国のない男』 カート・ヴォネガット(訳:金原瑞人) NHK出版
図書館。
美原図書館にTVぴあのバックナンバー借りに行き、ついでに開架を漁ってみつけた。
エッセイ集。本国での刊行は2005年。ヴォネガットは今年の4月に亡くなった。1922年の11月生まれだから、享年84歳。てか、1922年つったら大正11年やんけ。大正生まれやったんか、ヴォネガット!
74頁に「二〇〇四年十一月十一日で、八十二歳になった」とある。たぶん81歳〜82歳にかけて書いたエッセイ。が、まったくボケていない。明晰でとぼけたヴォネガットのまま。先月読んだ『死よりも悪い運命』がなんとなくまとまりのない読みづらいエッセイ集だったのに比べ、これはぴりっと引き締まった実に気持ちのいいエッセイ集。これを81歳〜82歳で書いたか、ヴォネガット。


『狐の剃刀』 赤江瀑 徳間書房
図書館。
短編集。「狐の剃刀」「静狂記」「阿修羅の香り」「の奥義」「緑青忌」「玉の緒よ」「ダンサーの骨」「夜を籠めて」の8編入り。
すべて舞台は京都。震撼とさせられるほど怖くて美しい話は残念ながらなかったが、どれもそれなりに面白かった。


『漁夫マルコの見た夢』 文・塩野七生 絵・水田秀穂 ポプラ社
図書館。
絵本。リドで漁師をしている青年マルコが、ある日魚を届けに行ったヴェネチアのお屋敷で、そこの女主人の気まぐれから、夢のような一夜を過ごす話。


『量子のからみあう宇宙』 アミール・D・アクゼル(訳:水谷淳) 早川書房
図書館。
「量子のからみあい(「二つの粒子がお互いに何万キロ、何億キロ離れていても、それらは謎めいた形でつながりあっている。片方の粒子に何かが起こると、瞬間的にもう一方の粒子も変化する」(本書11頁より無断転載)」をメインに、量子論の歴史を描いた本。
面白い。あちこちちんぷんかんぷんなのだが、面白い。「量子のからみあい」がいったいどういうことなのか、やっと漠然とながらイメージできたのは読み終わる頃だったが、それにもかかわらず面白い。
量子論の奇妙さを表したものとして有名なのはシュレーディンガーが言い出した「シューディンガーの猫」だが、字面のスタイリッシュさと裏腹に、なんか殺伐とした考え方である。まだ全然死後硬直していない死にたての猫って触ったことあります? ぐにゃっとしたあの感覚が呼び起こされる。青酸ガスの瓶と一緒に入ってるのがナメクジならまだ共感できるんだけど。(ナメクジ:わたしにとって殺しても最も憐れみの情のわかない生き物。最初ゴキブリとかも考えたのだが、ゴキブリってあれでなかなか可愛げあるし)
と思う人は多いと思うが、アミール・D・アクゼルもそうだったらしい。第9章ホイーラーの猫、はステキだった。「シュレーディンガーの猫」ほど「ホイーラーの猫」は字面も耳触りもスタイリッシュではないが、シュレーディンガーの考えたモデルより、断然納得できた上にもんのすごくキュート。
それにしても「ガリレオ」の湯川学博士、「この世に解けない謎はない」そうですが、これって普通に五感で観察できるくらいのものなら解けない謎はないってことかな?


『幼き子らよ、我がもとへ』上下 ピーター・トレメイン(訳:甲斐萬里江) 創元推理文庫
図書館。
新刊コーナーから軽い気持ちで借りてきた。
7世紀のアイルランド南部は幾つかの国に分かれていた。そのひとつであるモアン王国、この巻ではまだ王位継承者であるコルグーの妹で修道女で法廷弁護人ドーリィーでもあるフィデルマが、王国内の修道院で亡くなったラーハン王国の高名な学者が殺された謎を解く物語。
本編の前にある「歴史的背景」のところで、これがこのシリーズの第三作であることが判明。わたしはシリーズものならなるだけ出た順番に読みたいほうなので、これはお預けして第一作をまず借りてこようと思い、下巻訳者あとがきで第一作のタイトルをまず調べてみたら、第一作第二作は未訳でした。すでに翻訳出てるのは、第五作の『蜘蛛の巣』と、第九作の短編集の中の一編だけでした。で、そらしゃあないな、と読み出したのですが。
面白いいいいっっ!! やめられない、とまらない〜♪ 第五作を借りてこねば、ねば。


『桃色トワイライト』 三浦しをん 太田出版
図書館。
エッセイ集。ネットに掲載されたものを本にしたものらしい。表紙は松苗あけみ。
『風が強く吹いている』、ハイジと走っていい感じだわ〜と思ったが、まさか三浦しをん、こんだけばりばりの腐女子だったとは。いや、だって、『風が…』読むまで全然知らない人だったから。ひょっとしたら晴海とか幕張とかビッグサイトで袖摺りあったことがあったかも。
愉快な読んでて楽しい文章。途中、だから2004年頃か、いきなりクウガにだだはまりするところで爆笑。ウェルカム・トゥ・クウガワールド♪


『蜘蛛の巣』上下 ピーター・トレメイン(訳:甲斐萬里江) 創元推理文庫
図書館。
上の『幼き子らよ、我がもとへ』と同じく、修道女にして法廷弁護人のフィデルマのシリーズ。
王国内のアラグリンという土地で族長および族長の妹が殺されるという事件が起こり、族長の妻からの要請で、たまたまその土地の近くへ巡回裁判官として赴いていたフィデルマがアラグリンへ向かうこととなる。容疑者として捕らえられていたのは、族長の妹が庇護していた青年。彼は目が見えず、耳が聞こえず、口がきけない、いわゆる「三重苦」の青年であった。部族の者たちからは言葉もわからぬ獣同様の存在として扱われていたが、フィデルマはこの青年の中に知性を見出し、族長の妹が彼と意思を通じ合っていた方法を探す。
面白かったあっっっ!! これまた面白かったああっっ!! フィデルマのシリーズ、もっと出してーっ!! 早く出してーっっ!!>創元推理文庫御中
言葉狩りによって、「めくら」「つんぼ」「おし」等の言葉が公に使われなくなって、かなり経つ。「めくら」と「つんぼ」はまだ生活の中で生き残っているが、「おし」はほぼ通じなくなっていることを最近発見。なんで「おし」だけ? 「聾唖」が「つんぼ」と「おし」をセットにした言葉だと気づいてない子も多かった。それにしても、「目が不自由」も「めくら」も、単に「目が見えない」という状態を表す言葉としてはおんなじなのにねえ。その言葉の使い手の心根の問題なのにねえ。
あと「いざり」、これはほぼ通じない。いま足の不自由な人はたいてい車椅子で移動しているから、「いざっ」ている状態を見る機会がないせいか? わたしら小さい頃、靴履いたあとで忘れ物に気づいたとき、靴脱ぐのがじゃんくさくて、足裏を床や畳につけないように膝で歩いて取りに行ってるのを見つかると「なにいざってんねんっ」と叱られたものだが。
という話を妹としていて、「そういやばあちゃん、『わたし、鼻つんで匂いわからんねん』てよう言うてたなあ」「言うてた、言うてた」「あれ、『鼻つんぼ』縮めて『鼻つん』やったんやろか?」「あっ」などという発見もありました。
障害のある状態の総称である「かたわ」、これはもうまったく見かけないなあ。これは確かになんかイヤーな感じのする言葉だが、「つんぼ」「めくら」等と違って、なんでこれだけこんな、なんかイヤーな感じがするんだろ? 


『楽昌珠』 森福都 講談社
図書館。
まず男1人女2人の幼馴染3人が仙界みたいな場所で再会するところから話が始まるのだが、うち2人がそこで眠り込み、則天武后が君臨する時代へと話が移る。この2つの時代を行きつ戻りつして話が進む。
なんか、面白くなかった……。森福都の中国もの初めてのハズレかも…。いったいこの小説で何が書きたかったんだろ、森福都……。
ところでいま「則天武后」を検索してびっくりしたのだが、「白村江はくすきのえの戦い」、額田女王が出征する人々を見送るときに詠んだ「熟田津(にぎたづ)に 船乗りせむと 月待てば 潮もかなひぬ 今は榜ぎ出でな」のあの歌の「白村江の戦い」の敵の新羅の後ろ盾だった唐の当時のトップが則天武后だったんですね、へー。「大化の改新」の頃の人だったのか、則天武后ー。
(去年、韓国旅行したとき、ガイドさんが「白村江」の話を始め、初めはなんのこっちゃらやったのだが、それが「白村江の戦い」の話だと気づき、「あーっ、『はくすきのえ』かっ!」とバスの中で思わず叫んでしまった。てへ)


『つくもがみ貸します』 畠中恵 角川書店
図書館。
新シリーズ? 単発? わからんが、長崎屋の話ではない。
姉弟が営む損料屋、『前巷説百物語』にも出てきた江戸時代のレンタルショップ、が、そこに置かれている品物は実は付喪神つくもがみだらけ。
かれら「つくもがみ」の助けを借り、姉弟が巷のささやかな事件を解決する話。
ところでドラマ「しゃばけ」、なんか変な脚本だったよねー。このシリーズのおかしさがぜんぜん生かされてなかったよねー。


『月魚』 三浦しをん 角川文庫
図書館。
老舗の古本屋の跡取り孫と、せどり屋(古本屋の安売り棚や廃棄場から少しでも価値のある本を探し、その本にそれなりの値をつけてくれそうな専門古書店に売る人)の息子、過去にあったある出来事で互いに惹かれあいながらも鬱屈した思いを抱える2人の古書業者の話。
昔懐かしい小説JUNEの匂いが漂う話であった。いまどきのボーイズラブ小説とは違う2人の奥ゆかしさ加減がかえって気恥ずかしく、赤面しつつ読んだ。


『白蛇島』 三浦しをん 角川書店
図書館。
一見はそれほど閉鎖的に見えないが、古い祭りがきっちり残っていたり、家を継ぐ長男しか島に残れず、次男以下は成人したら島を出ねばならない等、因習が根強く残る小さな島。
長男でありながら島の密な人間関係に馴染めず、高校進学のため島を出てからめったに家に帰らない浩史が、13年ぶりの大祭に帰島した。が、島の因習をよしとしない者の画策により、大祭は未曾有の危機を孕み、浩史は幼馴染で持念兄弟(これも島の古い因習のひとつ)の光市とともに巻き込まれる。
浩史と光市の関係は健全であったが、神主の家の次男とその友人がエッチくさかった。
物語は、じわりじわりと来る闇の世界、地に足のついた伝奇小説が、クライマックスあたりでいきなり島の位相がひっくりかえるという大スペクタクルになるのに違和感が…。


『秘密の花園』 三浦しをん マガジンハウス
図書館。
同じ私立の女子高に通う3人の少女をそれぞれの視点から描いた「洪水のあとに」「地下を照らす光」「廃園を花守りは唄う」の連作3編。
「洪水のあとに」の主人公那由多が幼い頃おもちゃ屋で男から痴漢というか性的虐待を受けるところが怖かった。


『しをんのしおり』 三浦しをん 新潮社
図書館。
エッセイ集。ネットに掲載されていたのを本にまとめたもの。これが一番古いのかな?
そうか、「ONEPIECE」は三浦しをんもベックマン×シャンクスか。なんか、この人とは、このへんの好みがものすごく合いそうな気がする。次元五右衛門チェックシート(次元のほうが好きな人と五右衛門のほうが好きな人とは、他の男についてもほぼ好みがかぶらないという法則)は目からうろこが落ちた。どっかのテレビ局、これ、大々的に検証してくんないかしら。


『カラクリ荘の異人たち〜もしくは賽河原奇談』 霜島ケイ GA文庫 
新品購入。
単発もの。父の再婚相手と互いに気詰まりでなんとなくうまくいっていない太一は、父の薦めで、父の旧友がやっているアパートで一人暮らしを始めることになる。ところが、アパートの最寄駅「賽河原駅」(どうせちゃんと変換ようせんやろと思いながらも「さいのかわら」変換してみたら「賽の河原」が出たっ! びっくり!)でバスを降りたら、昼のはずが空は夕暮れ、半魚人は歩いているは、アマガエルの豆腐売りがいるは、カラスは喋るは…。
ほっこりとした感じのよい話であった。


『円環少女6 太陽がくだけるとき』 長谷敏司 角川スニーカー文庫
新品購入。
とんでもねーとこで終わってやがった前巻。待った、待ちかねたぜ、6巻っ!!
おもしろかった、おもしろかったよおおおおっっっ!!!
 地下住民けっこう死んでたけど。機械化聖騎士団の人たちが死んでしまったのも悲しかったけど。
寒川紀子のお父さんがいい味出してたなあ。「憎むな、殺すな、ゆるしましょう!」のとこでちょっと泣きかけました。最後のメイゼルの教室シーンでも、ちょっと泣きかけました。てへ。

早く次が読みたいよおおおお。


『彩雲国物語 隣の百合は白』 雪乃紗衣 角川ビーンズ文庫
新品購入。
番外編。「恋愛指南争奪戦!」「お伽噺のはじまりは」「地獄の沙汰も君次第」の3編に番外編恒例のあとがき後おまけ「幸せのカタチ」付。
「恋愛指南争奪戦!」も面白かった。「お伽噺のはじまりは」も面白かった。が、「地獄の沙汰も君次第」は…。
やばかった。これをもし電車や飛行機の中で読んでいたらと思うと、岸本佐知子の『気になる部分』並に背筋が凍る。あんまり笑って笑って笑いすぎて、途中でもう笑うと腹が痛い、腹は痛いがやっぱり笑ってしまう、という恐ろしい状態に…。


『百鬼夜行抄』16 今市子 朝日新聞社
新品購入。
いま背表紙見たら「ソノラマコミックス」とあったので、「あり? 朝日ソノラマが潰れたのは夢?」と思ったが、裏表紙見たら「朝日新聞社」であった。
「異界の水守り」、いい話っした。「病み枝」も好みの話。ところでついに鶏になってしまった三郎さん、この先いったいどうなるの?


『HUNTER×HUNTER』24 富樫義博 集英社
新品購入。
発売日の二日後くらいに注文したら一ヶ月待ち第二版〜。初版だって相当数刷ってるだろうに。
そして例によって全巻読み返しに突入。とりあえずキメラアント編に入ったとこから読み返し、グリードアイランド編を読み返し、最初からグリードアイランド直前とこまでの変則的読み返し〜。
「念」の説明のところで思ったのだが、これって実際の教育にもあてはまると思う。好きな教科は苦労せずとも頭に入ったし今もわりと残っているが、苦手だった教科、たとえば地理なんか、苦手を克服するためにサブノートまで作ってがんばったのに、いま頭にほとんどなんにも残ってねー。(が、最近気づいたこと。物理、当時は嫌いだったんだけど、嫌いだったのは計算で、概念部分はけっこう好きだったこと)が、どの分野が一番伸びるかは、水見式するわけにもいかないけどねー。


『僕のやさしいお兄さん』1 今市子 芳文社
新品購入。
ホモものファミリードラマ。曽祖父&祖父に育てられた男の子が、父親の死を契機に、生みの母と、母の二番目の亭主の連れ子と、腹違いの弟と、一緒に暮らすようになる話。
巻末ふろく漫画、東宮千子の『明るい青少年のための恋愛講座』の巻末ふろく漫画を思い出した。同じく、授業で家族の絵を描くことになった子供たちネタ。あっちのほうが粋だったなー。もっぺん読み返したいな、まとめて売り飛ばすんじゃなかったな、『明るい青少年…』。




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