本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス


『ゴッドスター』 古川日出男 新潮社
図書館。
一人称小説。妊娠中の姉が事故で子供もろとも亡くなったしばらく後、「あたし」は記憶のない男の子を拾い、警察に届けず、マンションで一緒に暮らし始める。男の子は最初の頃、「あたし」が仕事に行っている間はマンションの中にいたが、スペアキーを与えられてからは昼は外で過ごすようになり、仕事を終えた「あたし」が帰ったあとはマンションの中で過ごしていたのが、2人で夕暮れたあとの外を探検するようになり、やがて彼らは「明治」と「ヒロフミ」に出会う。
うーん、うーん、一人称の歯切れのいい語りは確かに気持ちよかったし、破綻が来そうで来ないところもどきどきしたし、「ヒロフミ」は可愛かったんだけど、「明治」の出現が唐突で、そこになんか謎の人たちがわらわら出てくるところがよくわかんなかった。
階梯上る前の古川日出男がやっぱいいです、好きっす…。


『ルビーの谷』 シャロン・クリーチ(訳:赤尾秀子) 早川書房
図書館。
孤児院育ちの男女の双子が「ルビーの谷」に住む初老の夫婦に引き取られる話。
双子がなかなか夫婦を信じないとこにいらいらさせられた。後半でそれまで語られたより酷い双子の過去が明らかになり、「それはしょうがないわね〜」とは思ったが、それでもいらいらさせられた。
「ルビーの谷」のもう1人の住人Zのくだりはないほうが話がすっきりしたと思う。あと、ボートが転覆するような大事故なしに話を進めてくれたほうが、話がすっきりしたと思う。


『天才たちの値段』 門井慶喜 文藝春秋
図書館。
女子短大で美術史とイタリア語を教える「私」が、神永美有という同年代の男と知り合い、美術品の真贋をめぐる謎に遭遇する連作集。「天才たちの値段」「紙の上の島」「早朝ねはん」「論点はフェルメール」「遺言の色」の5編入り。
冷静に思い出してみると、わりと不自然な状況の話が多かったのだが、語り方がうまいのか、それともしょっぱなの「天才たちの値段」のどんでん返しのカタルシスの余韻か、読んでいる間は行け行けどんどん、であった。


『家日和』 奥田英朗 集英社
図書館。
『ガール』の夫婦版? 三十代の夫婦の話6編入り。
オークションにはまる主婦の話「サニーデイ」と、内職する主婦が仕事をもってくる担当者に性的興奮を覚える「グレープフルーツ・モンスター」はあんまり好きな話ではなかったが、会社が倒産して主父業を始めるダンナの「ここが青山」、妻が出て行ったあとのダンナの暮らしを描いた「家においでよ」、山師な夫をもつイラストレーターの奥さんの「夫とカーテン」は、どれもすごい愉快な話だった。最後の「妻と玄米御飯」ですが、なんか歯がゆい終わり方だったのは、なんというか、これって奥田さん家のほんとの話? と思った。


『アゴールニンズ』 ジョー・ウォルトン(訳:和爾桃子) 早川書房
図書館。
ハヤカワのオフィシャルで新刊案内見てて、そこに貼られてる既刊リンクで出くわした本。
登場人物はすべて竜。古き良きヴィクトリア朝を思わせるドラゴンたちの国ディアマト国。ボン・アゴールニン啖爵の死に物語は始まり、残された子供たちの苦難もまた始まる。

むっちゃくちゃ面白い〜っっっ!!!

竜の国のしきたりのあれこれをヴィクトリア朝のメタファーとして読みたがる人もいると思うが、そういう頭の悪い読み方はしないほうがよいと思う。最後は実に気持ちのよい大団円〜♪


『ようこそ女たちの王国へ』 ウェン・スペンサー(訳:赤尾秀子) ハヤカワSF文庫
図書館。
これもアッタリ〜♪
男女の人口比が1:20の世界が舞台。
とある武闘派の一家に生まれた青年がひょんなことから王家に婿入り、王家を狙う陰謀に巻き込まれる話。
よしながふみの『大奥』にとても状況が似ているが、あちらが「赤面疱瘡」という男女人口格差の原因が設定されているのに対し、こちらは自然のあるがままの状態らしい。またあちらが急激な人口格差の発生による社会変化を描いているのに対し、こちらは一種のシンデレラストーリー。
ので、もしよしながふみがこれを読んでいたとしても、というか、もしもこれが『大奥』という物語を紡ぎだす母体だったとしても、『大奥』という作品の凄さに変わりはないと思う。


『7Days in BALI』 田口ランディ 筑摩書房
図書館。
失調症かな?の女性が友人から届いた3枚の絵葉書を頼りに友人が姿を消したバリに行く話。
彼女がかつて母親によってピアニストを志させられていたこととバリ音楽を絡め、もっと音楽に特化した話のほうが面白かったというか、そういう話を読ませて欲しかったと思う。


『ランチタイム・ブルー』 永井するみ 集英社
図書館。
インテリアコーディネーターとして転職した女性が探偵役となる日常の謎な連作短編集。(殺人事件もあったけど)
「ハーネス」が一番好き。こういう視点の転換によって暗くみえた状況がパーッと明るくなる話、大好き。


ドラル国戦史2 蛇民の兵団』 デイヴィッド&リー・エディングス(訳:宇佐川晶子) ハヤカワ文庫
新品購入。
今回いちばん心に残ったのは、赤ひげの村の引越しと長の代替わり。特に「女の仕事」を男にやらせるくだり。そうなんだよねー、女が「そんなん男の仕事じゃん」っていうときは単にじゃんくさい仕事を押し付けたいだけだけど、男が「そんなん女の仕事やんけ」というときは男の沽券がかかってんのよね〜。
長を継がなくちゃならなくなった赤ひげがぶちぶちぼやくとこもすっごい可愛い♪
ところでウサギってスパーホークんとこのタレンっぽい。あっちはアフラエルにとっ捕まっちゃったけど、ウサギはどうなるんだろ〜。


『少年陰陽師 数多のおそれをぬぐい去れ』 結城光流 角川ビーンズ文庫
新品購入。
新章「玉依」編突入。
が、珂神編が雨ばっかだったのに引き続き、都に戻ってもやっぱ雨ばっかり…。気が滅入る……。


『図書館危機』 有川浩 メディアワークス
『図書館内乱』 有川浩 メディアワークス
図書館。
「めくら」や「つんぼ」「おし」よりはハザードレベルは低いけど、「床屋」や「魚屋」「八百屋」も放送禁止用語だったとはびっくり。
日本語を好き勝手に破壊しまくっとんな、放送倫理委員会。
ともかく、すっげー面白かったっっ!! 『図書館戦争』でひっかかってた出版業界のありようについても、上記の「床屋」をとりあげた「ねじれたコトバ」でとりあえずすっきりしたし。
手塚と兄の確執や、柴崎のもうひとつの顔や、郁の初恋の行方や、もう行け行けどんどん、やめられない、とまらない〜♪♪♪


『風の王国 金の鈴』 毛利志生子 集英社コバルト文庫
新品購入。
うわー、うわー、ついにリジムが……、史実どおりにリジムが…………。
ということは、続きはやはり史実どおり、やはり翠蘭は舅ソンツェン・ガンポのもとに再嫁することになるのか、なるのか……。


『雨柳堂夢咄』其ノ十二 波津彬子 朝日新聞社
新品購入。
いま本誌で連載が休止しているらしい。著者本人も続きを描くことがあるやらないやらわからないらしい。
最終回なしというのは賛成。が、波津彬子に描く気があるんだったら、描かせろ、読ませろ、朝日新聞社。売り上げ的に今市子の『百鬼夜行抄』に比べて売り上げがぱっとしないのか? 経済的な理由であっちかこっちかどっちかしか買えないのなら、わたしは断然こっちを選ぶぞ?


『砂はマのつく途の先!』 喬林知 角川ビーンズ文庫
新品購入。
えーっと、聖砂国入りしたあたりから記憶が朧なまま読んでしまいました。
読み返して、状況をしっかり把握したいと思います。


『大奥』第三巻 よしながふみ 白泉社
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家光編続き。世継ぎを作るため、家光は有功以外の男を閨に入れなくてはならなくなる。ここでの家光の根性の据え方のかっこよさ。
そしてますます減っていく男たち。それによる世の中の変化。春日局の死。
これだけ重厚な物語をこれだけするする読ませてしまう、よしながふみという作家の凄さ。




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