本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス


『グーグーだって猫である』4 大島弓子 角川書店
新品購入。
実家を出て今のマンションでひとり暮らしを始めたとき、千衣子と紳一が一緒だった。
(妹一家が引越しを手伝ってくれたのだが、荷入れ作業が済んだあと、ご飯でも食べに行くか〜と、猫ごはんと猫の水と猫トイレだけ設置、見慣れぬ場所に隅っこでじっとしている千衣子と紳一を残し、みんなで出かけようとしたら、その頃2歳か3歳くらいだった莉菜が、いきなりおんおん泣き出した。「ちいことしんちゃん、かわいそうや〜〜〜」。なんと、このマンションで千衣子と紳一が2匹だけで暮らすことになったと、幼い莉菜は思い込んだのだった)
実家では猫は外出し放題だった。千衣子は1階店舗2階居住区だった我が家の1階の炊事場の壁の中から拾った猫だった。壁の中からちーちーちーちー鳴き声がするので、壁をはがしてみたら、埃まみれの子猫がいた。当時うちにいた老汗らおはんが近所の野良の嬢ちゃんとねんごろになってできた娘だと思うのだが、外出したっきり一ヶ月くらい帰ってこないことがあり「死んだかと思った頃に帰ってくる老汗」といわれた父親と同様、「死んだかと思った頃に帰ってくる千衣子」と有名だった。おまけにハンターでねえ。スズメは獲ってくるは、こうもりは獲ってくるは。それも生殺しで持ち帰り、部屋の中でじっくりいたぶり殺すのが好きだった。殺したら放置。雀やこうもりの死体を始末するがもうイヤでイヤで、ある日、またもやスズメを獲ってきてなぶり殺して放置してるのを見つけたとき、「食いもせんもん獲ってくんなーっ!」と怒鳴りつけたら、しばらくして、スズメの死体のあったあたりから、パリパリペチャペチャという音が………。「おお、言ってみるもんだ♪」と思ったのも束の間。パリパリペチャペチャの音がおさまって10分後くらいに、今度はオゲロォォォ〜という音が…。吐いたのよ。食べたてのスズメを。できたてほかほかのスズメミンチ…。ところどころ羽が混ざってたりなんかするスズメミンチ…。
閑話休題。
そんな千衣子だが、1ヶ月くらい帰ってこないときはほんとに心配で心配で、ぶじに帰ってきたときは、そりゃあ嬉しかったものだ。(が、痩せこけて帰ってきたことは一度もない。太りもしないが痩せもせず、いつも出て行ったときのまんま)
紳一は出かけても毎日帰ってくる猫であったが、そろそろ去勢手術に連れていこうと思ってた矢先、いきなり盛りがつき、これまた近所をうろうろしていた雑巾みたいな柄の不〜っっ細工なメス猫(トラ、ミケ、チビトラ、ハナクチョ、シロの母。父親は紳一ではなく、人相というか猫相凶悪なヤクザなトラ猫。こんな二親から、まさかあんな美しい子供たちが生まれてくるとは…)を追いかけまわして、1週間くらい帰ってこなかったことがあった。このときはもう、ほんと、死ぬほど心配した。毎晩ベランダから紳一の名を呼び、阿保美代の漫画、大人になってしまった青年が少年時代に飼っていた白い犬を回想し、「いまここにチビが現れ、チビを抱きしめることができたら、僕はどれだけ幸せだろう」と思ったように、「いまこの呼びかけに応えて紳一が帰ってきたら、わたしはどれだけ幸せだろう」と思った。
千衣子も紳一も、外に出られないマンション暮らしに、すぐ慣れた。わたしが閉所恐怖症の気があったせいで、玄関以外のドアから襖から浴室扉から全部開けっ放しにしていたこともあったと思う。その後、巳夜子を拾い、千衣子が亡くなり、茂吉が来て、稲子が来て、徹平が来たわけだが。
しかし今でも「帰らぬ猫の帰りをひたすら待つ」辛さの辛さ加減は忘れられず、「帰らぬ猫の帰りをひたすら待」たずに済む今の生活の幸せを、ときおりしみじみ噛み締める。
で、何が言いたかったかというと。
逆なんですね、大島さん。マンションから一戸建てへ。「帰らぬ猫の帰りをひたすら待つ」だけでなく、帰らぬビーのためにペット探偵まで雇うことに。
そのあたりを読んだとき、家出したまんまのトム(わたしが初めて飼った猫。高校で拾った。真っ黒の烏猫だった)や、家出したまんまのラマ、しょっちゅう長期不在した老汗や千衣子、ある朝建設中のお隣は今はジュニアが住んでるあたりで転落死していた未衣子(虹彩はアクアブルー、白い地にうっすらとグレイの縞、耳と尻尾と手足の先に淡いポイントのある、夢のように美しい猫だった。根性はババ色だったが)、紳一の1週間の家出、一切外出しない見事な家付き猫だったが、裏の家の屋根まではたまに行き、そこからリバースできずに屋根の上をうろうろするCHAUDちゃん(凶悪だったがどんくさかったの…)を危ない足場に乗って何度も救出したことなんかを、まざまざと思い出しました…。


『風の王国 嵐の夜(下)』 毛利志生子 集英社コバルト文庫
新品購入。
リジム崩御後に起こった叛乱鎮圧編。
ひょっとしたら毛利志生子は、ガル・トンツェン・ユルスンという見事な政治家を描くために、この題材を選んだのではないかという気がする、シリーズ15作目。


『円環少女8 裏切りの天秤』 長谷敏司 角川スニーカー文庫
新品購入。
五千騎を率いた聖騎士将軍「至高の人」アンゼロッタ・ユーディナ来襲編にして、幻影城後始末編。
きずなが作ってしまった残り2つの「賢者の石」の行方、という次作に続く謎を残してまあ今回は平和に終わるかと思えば、最後にこれかいっ、長谷敏司っっ!!


『故郷へマのつく舵をとれ!』 喬林知 角川ビーンズ文庫
新品購入。
聖砂国編完結編。暗い洞窟を進んだり進んだり、主人公の目が見えなくなったり、うっとうしい部分が多かった聖砂国編だが、最後はさくさく話が進んだな。
眞魔国を離れてから長すぎたか、そもそも眞真国がどんな国だったか、うっかり忘れてしまっている己に気づき、愕然とする。覚えてんのは、毒女アニシナ&苦虫噛み潰し男グウェンダルのコンビ(まさかアニシナ&ペーゼラも、極東の国のライトノベルス中で自分たちがこんなことになっているとは夢にも…)がいるっつうことだけだよ。


『少年陰陽師 愁いの波に揺れ惑え』 結城光流 角川ビーンズ文庫
新品購入。
相変わらず都はつめた〜い〜雨、雨、雨、雨〜(あなたが今でもこんなに愛しい〜、って誰のなんて曲だったっけ?)だが、前巻ほどのうっとうしさはなかったな。なんでだろ?
で、清少納言が仕えた中宮定子の残した子がどうなったか、そーいや授業でもとんと聴いた覚えがねえな、と思い至りました。wikiには脩子内親王が伊勢の斎宮になったという記述はなかったので、たぶん行かなくて済むことになるんだろうけど、作中で何がどうしてこの問題が解決するのか、楽しみ〜♪


『秘神 闇の祝祭者たち』 編集:朝松健 アスペクト
図書館。
図子慧の新刊を1年近く見逃していたので、読んでいないのを調べなおし、これをまだ読んでいなかったのに気づいた。
クトゥルー・アンソロジー。朝松健、飯野文彦、井上雅彦、図子慧、立原透耶が各1作。高橋葉介、諸星大二郎、山田章博が各2枚づつ、描きおろしている。
諸星大二郎の絵が怖い。「祈祷」と「家族」のうち、175頁の「祈祷」は深い森の邪神の磨崖仏を仏教僧侶が拝む後姿で、絵から物語が立ち上ってくるような絵だが、怖いのは断然295頁の「家族」である。襖に映る化け物の影より、手前の部屋の2人のなんともいえぬ怖さ。小説はどれもすんげー面白かった。
ところでわたしはこれまで何度かラブクラフトを読もうとして(一番最初の挫折はたぶん、コリン・ウィルソンの『精神寄生体』か『賢者の石』を読んだ直後だ)挫折している。だってうだうだだらだら、すんげーつまんねーんだもん…。


『地獄のババ抜き』 上甲宣之 宝島社
図書館。
柳原慧の『いかさま師』をamazonのマーケットプレイスで古本購入したのだが、そのとき「これを買った人はこんなのも買ってますよ」に表示された本。
読みかけたらシリーズ第二作だったが、それに気づいたのが東京TDL一泊二日の2日目、ディズニー・シーでスティーマーボートの順番待ちしている最中で、鞄の中にはもちろん他に本はなく、そのまま読み始めてしまった。
勢いで読まされてしまった感もなきにしもあらずだが、面白かった〜♪ シリーズ第一作も借りてこよ♪ 『紅蓮女』も借りてこよ♪


『アスラクライン10 科學部カイメツ』 三雲岳斗 電撃文庫
新品購入。
さくさくと急展開。そうか、こーゆーからくりだったのかー。ほんじゃあと2作くらいで完結かな、と思ったが。
あとがきによると、まだ折り返し地点らしい。どひゃー。
それにしても三雲岳斗、掃除機が「ものに埋もれる」ということはキャニスター型のを買ってしまったんだな、ダイソン。スタンド型のにすりゃよかったのに。


『オレンジガール』 ヨースタイン・コルデル(訳:猪苗代英徳) NHK出版
図書館。
『ソフィーの世界』はまだ読んでないが、『カード・ミステリー』は面白かったので、他のも読もうと思いながら、綺麗に失念していたヨースタイン・ゴルデル。
語り手の「ぼく」は14歳の男の子、母と母の再婚相手と母と再婚相手の間に生まれた妹の4人暮らし。実の父は3歳の頃、病死。ところが死んだ父の母、おばあちゃんが、父が生前に書いて隠しておいた息子への手紙を発見してしまう。
父親が息子にあてた手紙というか物語と、「ぼく」の感想が、交互に並ぶ。
途中、「イケア家具店に勉強机を買いに行った」という記述に、「おおっ、イケアっ!!」と。スウェーデン資本だから、日本くんだりに出店するよりずっと前に、そらノルウェーにも出店してるはな、イケアと。


『冷たい指の手品師』 パトリシア・ルーイン(訳:石原未奈子) ソニー・マガジンズ
図書館。
開架を適当に漁って拾った1冊。
CIAの現役エージェントだが、今は幼い姪と一家の長年の友人の女性とともに、ジョージア大学で助教授をしながらワシントンDCで暮らすエリン。
彼女はある日、家の近くで、手品で子供たちを魅了するアイスクリーム売りを見かける。その男は19年前、エリンの妹が誘拐された日、エリンの家の近くでアイスクリームを売っていた男と、同じ手をしていた。
エリンサイド、FBIの対児童犯罪ユニットに身を置くアレック・ドノヴァン、自らも幼い頃にさらわれ、何度か転売されて、今は誘拐した子供の一時置き場の屋敷で子供の世話係をするライアン、この3サイドから話は進む。
行け行けどんどん、やめられないとまらない。
誘拐された子供がどんな目に遭ったのか、具体的な記述がまったくないところが、さらに怖かった。


『殺人小説家』 デイヴィッド・ハンドラー(訳:北沢あかね) 講談社文庫
図書館。
スチュアート・ホーグのシリーズ。
気がついたら出ていた。2005年に出ていた。しかもその後、新シリーズまで2冊出ていた。狐につままれたような気持ちである。
メリリーとの間に生まれたトレイシーがもう1歳半。三作目を書き上げ、出版社を探しているホーギーのもとに、作家志望者から丁寧な手紙付の、行きずりの殺人の模様を描いた小説の第一章が届き、翌日、その小説と同じ名前同じ職業の女性の死体が発見される。
絶対犯人じゃないだろうと思ったタトルがかなり最後まで容疑者で、もっと他の可能性も欲しかったなと。そして、まさかカッサンドラが…。ヴェリーとうまくいくもんだとばかり……。


『ブルー・ブラッド』 デイヴィッド・ハンドラー(訳:北沢あかね) 講談社文庫
『芸術家の奇館』 デイヴィッド・ハンドラー(訳:北沢あかね) 講談社文庫
図書館。
知らない間に出ていた映画評論家ミッチ&警察官デジリーの新シリーズ。
『ブルー・ブラッド』は、ニューヨークを離れてビッグシスター島で家を借りたばかりのミッチが、いきなり殺人事件に巻き込まれる話。
『芸術家の奇館』は、デジリーという恋人を得、島での暮らしにも馴染んできたミッチが、やっぱり殺人事件に巻き込まれる話。
男版コージーミステリーという感じのシリーズ。ミッチが住む場所がどんな場所か、いまいちイメージしにくいのだが。
あと、『芸術家の奇館』に登場の現代彫刻の巨匠ウェンデルが、なぜここまで下の娘に愛情を持たなかったのかも謎。


『守り人短編集 流れ行く者』 上橋菜穂子 偕成社
図書館。
番外編。タンダが11歳、バルサが13歳の頃のエピソードを集めた短編集。「浮き籾」「ラフラ<賭事師>」「流れ行く者」「寒のふるまい」の4編いりで、「浮き籾」と「寒のふるまい」がタンダの村暮らし、「浮き籾」と「ラフラ」がバルサがジグロとともに村を離れているときの出来事。残念ながら、トロガイ師の出番はなし。
長年氏族長の重臣ターカヌとプライベートにススット(盤上のゲーム、人生ゲームみたいな感じか? 賭場で賭け事として行われることも多い)を楽しみ続けてきた老ラフラ(賭場の主人が抱えるプロの賭博師)アズノが、その重臣に頼まれて重臣の息子と公開でススットの勝負をすることになる「ラフラ」は、しんと胸にしみた。読み終わったとき、泣いてしまった。「浮き籾」もいい話だったなあ。「流れ行く者」は読んでてちょっとしんどかった。が、最後にエピローグのように「寒のふるまい」があったおかげで救われた。


『OL進化論』28 秋月りす 講談社
新品購入。
永遠に続いて欲しい『OL進化論』。


『姫の恋わずらい』 波津彬子 小学館
新品購入。
「異国にて」以外は、イギリスを舞台にした作品ばかりの短編集。が、「異国にて」も明治初頭に日本に来たイギリス人の話。
「異国にて」が一番好きな系の話。「灰色の貴婦人」「闇色の宝石」「遠い国から」も好き。「姫の恋わずらい」と「乙女の祈り」はどうもそのお。


『まこという名の不思議顔の猫』 前田敬子・岡優太郎 中央公論新社
『続・まこという名の不思議顔の猫 
まことしおんと末っ子しろたろの巻』 前田敬子・岡優太郎 中央公論新社
新品購入。
当たり前田…がUFJを立ち上げたのは1984年っと、ブログ「まこという名の不思議顔の猫」が書籍化されたもの。図書館に予約してやっと順番回ってきた『まこという名の不思議顔の猫』だが、半分ほど見たところで、続編ともども、楽天ブックスに注文してしまった。9割かたブログの再録(というのか?)なのだが、本のほうが断然見やすいし、スタイリッシュでチャーミングな本だし。
初めてまこを見に行ったとき(どこで知ったんだっけ? 葉子ちゃんに教えてもらったのか、それともリンクをたどったのか)、まこのご面相に衝撃を受けるとともに、「ブリジッド・バルドーとスティーヴ・ブシェミ、この両方に似ている猫はちょっといない」という名言に、ぎゃはははばんばん! 心臓を射抜かれたのだった。
続編121頁のまこは、ソフィア・ローレンのようである。(とその写真を見せながらRP祐子とN塚長姉に言ったら、「…ソフィア・ローレンて誰?」と…。人類には2種類いる。「ひまわり」を見て目が溶けるほど泣いた者と、まだ「ひまわり」を見ていない者と)




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