本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス


『ポアンカレ予想を解いた数学者』 ドナル・オシア(訳:糸川洋) 日経BP社
図書館。
NHKの「100年の難問はなぜ解けたのか〜天才数学者 失踪の謎〜」で、ポアンカレ予想なる数学問題を解いたペレルマンのことを知り、関連本を探してて見つけた。どんぴしゃりのを見つけた。
著者は、マウントホリオーク大学の数学科教授。「高次元空間における特異点に関する幾何学」が専門なのだそうだ。
「位相幾何学」とやらの説明に始まり、ユークリッドの『原論』の第五公準「互いに平行な直線はどこまで伸ばしても交わらない」(←わたしががっこで習ったとおりに書いてみました)の問題点とそれをめぐる歴史、「リーマン予想」のリーマンの生い立ちと業績、「ポアンカレ予想」をたてた張本人であるポアンカレについて、その後の流れ〜ペレルマンの証明とその後、を描いた本。
「位相幾何学」がいったいどんなものなのか、例によって最後までちんぷんかんぷんでしたが、人物史部分の多いわたしの好きな系の構成で、ポアンカレの死後あたりから、実にスリリングっした。
ちなみにわたしが最初に「非ユークリッド幾何学」という言葉を知ったのは、高木彬光の『刺青殺人事件』。


『トウシューズはピンクだけ』 レスリー・メイヤー(訳:高田惠子) 創元推理文庫
図書館。
『メールオーダーはできません』に始まった主婦探偵ルーシーのシリーズの第二作。
ルーシーは第四子を妊娠中。そんな中、ご近所の老バレリーナが失踪。ビデオカメラを知人に貸したところ、そのカメラで知人の雇い主が殴り殺される。
アメリカのコージーミステリを読んでてときどき思う。アメリカで就学年齢の子の親が地域社会に参加するというのは、これほど忙しいものなのか。


紅蓮女ぐれんオンナ』 上甲宣之 宝島社
図書館。
とあるやる気がなく覇気もない小学校の女教師は、夜な夜な「紅蓮女」というコスプレをして、街を徘徊、人を驚かせてまわることだけが生きがいなのだが、その夜の生活で遭遇する事件とか事件とか事件とか。まだ読んでない『ケータイはXXで』の後日談みたいなのもあり、そこには既に読んだ『地獄のババ抜き』に出てきた人形娘も登場。
「紅蓮女」が放つ火を使った技の数々が、地道な努力と鍛錬によって身につけたものであることを、一々説明してくれているところが好感度大。


『素数に憑かれた人たち』 ジョン・ダービーシャー(訳:松浦俊輔) 日経BP社
図書館。
リーマン予想、「ζ(s) の自明でない零点 s は、全て実部が 1/2 の直線上に存在する」がどういうことなのかの解説が奇数章、リーマンその人についてと、リーマンの死後、この問題に挑んだ人々についての逸話を記したのが偶数章、という形式の本。
一応がんばって読みました、奇数章も。結局、リーマン予想というのがどういうものなのか、ゼータ関数がなんのかも、ちんぷんかんぷんなまんまだったけど。第6章冒頭の、「計量」と「計数」の違いを、東洋の年の数え方、「満」と「数え」になぞらえたのはすごい腑に落ちたけど。第18章の、モンゴメリとダイソンのエピソードもわくわくしたなあ。
そして、よくある疑問、「数学を学ぶことがなんの役に立つの?」の答えの1つを、わたしはこの本で見つけました。
中学以降、特に高校の数学、これを学ぶのは、第10章「証明と転機」203頁、ジャック・アダマールという数学者の逸話、「(アダマールの)娘はアダマールが四つより先は数えられなかったと言っている。『その先は全部Nです』」に爆笑するためだ。(ものすごく有名な逸話らしく、図書館の数学棚で他の本を漁っててパラパラした本、日本の数学者の書いた数学エッセイに、その数学者が5人で晩御飯食べに行くのに間違ってレストランに6席予約してしまったところ、友人たちに「ったく、数学者ってのは、4より大きい数が数えらねえんだからよ」といじめられた、という話をみつけた。いい話だ)(ちなみにこのアダマール先生、自分でネクタイも結べなかったらしい)
あと、覚えるための文章だけ頭に残って、それがいったい何を意味しているのか忘れそうなので、ここに覚書。
「9人のズールー族の女王が中国を治めた」 Nine Zulu Queens Ruled China. 「N」自然数 「Z」整数 「Q」有理数 「R」実数 「C」複素数


『藤堂家はカミガカリ』 高遠豹介 電撃文庫
図書館。
異世界の戦士同士がこっちの世界で戦う話。うーん、身も蓋もない。
可もなく、不可もなし。

守られることになる姉弟よ、そんだけ大きな家を維持管理するゼニがあるなら、お手伝いさんのひとりも雇うか、家売り飛ばしてこじんまりと暮らせ。


『眞マ国より愛をこめて』 喬林知 角川ビーンズ文庫
新品購入。
番外編短編集。
冒頭の作品、これはいったい誰の話?とちょっと読んでもぜんぜんわからずすっとばした。二番目の話を読んで、やっと合点がいった。
村田くんと真魔王さまの角突き合い、わくわくしたなあ。
やっぱ最初から読み返そ。


『二つの月の記憶』 岸田今日子 講談社
図書館。
短編集。七編入り。「オートバイ」「二つの月の記憶」「K村やすらぎの里」「P夫人の冒険」「赤い帽子」「逆光の中の樹」「引き裂かれて」
「二つの月の記憶」にクウガとグロンギが出てきたのには驚いた。が、岸田今日子さん、どうもクウガそのものはちゃんとごらんになってないもよう。
「オートバイ」はほんとにすてきなすてきな話。「P夫人の冒険」は、なんかもう、P夫人の「女」としてのまっとうさに圧倒された。「赤い帽子」の寓話的な味付けも好き。
長生きして、こういうお話を、もっともっと読ませて欲しかった。


『ジュリエットXプレス』 上甲宣之 角川書店
図書館。
電車の中の話と、とある学生寮の話と、とある家庭の話が、錯綜しながら進む。
うーん、自分でも不思議なくらい、どこで何が起きたか覚えていない…。


『夏目友人帳』6 緑川ゆき 白泉社
新品購入。
アニメが始まってるはずだが、うっかり見るのを忘れていた。たまたま見た友人によると「にゃんこ先生が無駄にいい声」なのだそうだ。


『Landreaall』12 おがきちか 一迅社
新品購入。
ウルファネア編、すかっとしてほっこりして実に気持ちのよい決着であった。
途中から、DXや竜胆不在の王都にモンスターが襲来する事件が始まるのだが、イオンが拾った壁画のカケラ、あれって襲来に関係あるのかないのか、気にかかって気にかかって。


『少女ノイズ』 三雲岳斗 光文社
図書館。
高校でも家庭でも見事な優等生だが父親の経営する大手塾でだけは問題児の、美貌の少女瞑、殺人事件が起きた場所の写真を撮りたがるという性癖をもつ彼女の世話係として塾に雇われた大学生の「僕」、の2人が遭遇する事件の数々を描いた連作短編ミステリ。
「僕」の淡々とした語り口が好ましい。瞑については、これほど怜悧で聡明な少女が両親の不和にそれほど傷ついたりするだろうか?という疑問をもったが、読み進むにつれて、そんなことどうでもよくなった。
最後の話が、最後から2番目の話で離れた二人の再会編だったのも、すごく嬉しかった。(連作短編集によくある、一番最後に最初の話よりも前の話が入ってるって形式、あれ、わたし、かなり嫌いなのよねー) 最後の話で、なぜ「僕」が犯人に狙われたのかを瞑が明かす、というかばらすとこ、大好き〜♪ すげー気持ちよかった。


『ファインマンさんは超天才』 C.サイクス(大貫昌子) 岩波書店
図書館。
リチャード・ファインマン本人、妹、息子、友人等の談話で構成した本。著者はBBCテレビでファインマンのドキュメンタリーを作った人。ひどい書名だが、原題は「NO ORDINARY GENIUS」、「フツーじゃない天才」とか「型破りな天才」とか「一味違う天才」とか? そのどれにしろ『ファインマンさんは超天才』よりはましだったと思う…。
ノーベル賞に対する不平とか、続っぽいことを好んだことについて見せびらかしなんじゃないかみたいな、ファインマンへの批判も載せてて、公平感を出していた。ノーベル賞、本人への打診および通知がないってのは知らなかったな。
お父さんとの思い出話が一番心に残ったなあ。このお父さんに「みなしごハッチ」最終回とか見せたら、「蜂はぜんぶ女王蜂の子だろうがあっ!」と腹かかえて笑ってくれただろうなあ。




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