本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス


『あれも嫌いこれも好き』 佐野洋子 朝日新聞社
『神も仏もありませぬ』 佐野洋子 筑摩書房


図書館。
どちらもエッセイ集。
『あれも嫌いこれも好き』は三部構成、一部が誰かに宛てた書状の形をとっての、思い出話や身近なできごと。二部は普通のエッセイ。三部が好きな本ネタ。
森茉莉について書かれたもので読んで強烈に印象に残ってる「だって本当に変なバアさんだったんだもの」というフレーズ、なんかわからんが中野翠の文で読んだと思い込んでいたが、佐野洋子だったのかー。佐野洋子も森茉莉が大好きだったそうで、この三部には森茉莉についての文が三つも入っている。佐野洋子さんも同じく、エッセイばかりを読み返していると思われる。これを読んだのが、モイラが腎臓を悪くして別荘に療養に行くくだりを確認するために(そんなものをなんでいきなり確認したかったのかはここの「第16幕「黒子力」」の項参照)ひっさびっさに『甘い蜜の部屋』を開いた直後で、あまりのタイムリーさにも驚いた。シンクロニシティ♪
『神も仏もありませぬ』は、一番最初に載ってるのが自分が63歳になったことに驚くくだりで、あとがきが65歳。起こったできごとや思ったことあれこれ。この頃は北軽井沢にお住まいらしい。が、先月読んだ『役に立たない日々』では街中に住んでる感じだったので、『神も仏も…』後、街中に引っ越したのだろうか?
「納屋、納屋」の木の植え替えに来た植木屋の棟梁について女ともだちとの「地下たびよりかっこいいはきものないね」「あれ女房いるよ」「いやーね、女房いるの」などといったやりとりとか、「出来ます」でアッシーメッシーいろいろ持ってる女ともだちに負けん気出して張り合おうとする話とか、なんかもう、他人と思えませんでした。



『江戸忍法帖』 山田風太郎 講談社文庫

図書館。
これから他館にかえる本ですコーナーで見つけた。山田風太郎は相当たくさん読んでいるが、ちょっと開いてみたら見覚えのない話らしかったので借りてきた。
時は五代将軍綱吉の御世。先代家綱のご落胤である青年の存在を知った側用人柳沢吉保が、甲賀の忍者に暗殺を依頼するところから話が始まる。青年の名は葵悠太郎。彼の存在を公儀に認めさせ、自分たちも日のあたるところに出ようともくろむ家来3人とともに江戸に出てきたが、悠太郎本人はほんの物見遊山のつもりだった。が、家来3人を殺されたのみならず、江戸にでてきてから親しくなった獅子舞の姉弟の弟まで巻き添えにされ、彼は少年の仇を討とうと決意する。。
悠太郎さまのビジュアルは若かりし日の竹脇無我さまで読みました。



『四畳半神話大系』 森見登美彦 太田出版

図書館。
四部構成。とある大学の三回生である「わたし」が、大学に入ってからの二年間を振り返り、「「あ〜るいは」〜「もしも」〜だなんて〜♪」「あそこの〜わ〜か〜れ〜みちで〜、やりな〜お〜せ〜る〜ならって〜♪」(さだまさし「主人公」より)と思う話だが、最初のほうはたらたら読み、一部の最後のほうでちょっと面白くなってきて、二部に入ってこの小説の全体構造がわかるなり、俄然勢いが出た。


面白かったよおお

おおっっっっっ!!!


いやもう、見事な大仕事でした。感服つかまつりました。>森見登美彦さま


『アラビア数学奇譚』 マオバ・タハン(訳:越智典子) 白揚社

図書館。
東図書館に立ち寄ったとき、数学棚で見つけた。
訳者あとがきによると、著者マオバ・タハンは「アラビア生まれの冒険家」で、アラビア語で書かれた彼の本をブラジルの数学者受理尾・セザール・ジ・メーロ・イ・ソウザがブラジルだからポルトガル語?に訳した、という体裁で出版された本らしいが、タハンはソウザが創作した架空の人物だそうで、古川日出男の『アラビアの夜の種族』とかウンベルト・エーコの『薔薇の名前』を思い出した。
語り手である「ぼく」がバグダッドへ向かう途中で知り合った「かぞえびと」ベレミズ・サミール、旅の途中、そして到着したバグダッドで、ベレミズが出くわし、快刀乱麻を断つごとく解決していく、数をめぐる問題の数々を記したもの。
「かぞえびと」という訳がまずすげーかっこいい。映画「おくりびと」の製作関係者の誰かがこの本を読んでいて、「おくりびと」という美しい言葉を思いついたのでは、などとふと思う。
そしてとりあげられる問題の数々が、わたしでも読みながら考えられるレベルの問題で、しかも数学パズル系には興味のないわたしが読みながらついつい考えてしまう仕立てになっているのだ。まさしく、あとがきで訳者が「数学史に疎い私は、参考書片手に訳していったが、ベレミズの語るそれはおとぎ話のようにするすると身に入ってくる」(259頁より無断転載)と言っている通りに。



『少年陰陽師 嵐の剣を吹き降ろせ』 結城光流 角川ビーンズ文庫

新品購入。
新章突入。昌浩が都に戻って一ヶ月、行方不明になった総領の息子を探す天狗たちのせいで都に突風が吹き荒れる。
強風に翻弄されるもっくんの描写が超可愛い。
数日前、なぜかいきなり「『三筆』って、空海と嵯峨天皇と誰だっけ?」と思い、調べてみたら残るひとりは橘逸勢であった。そして「三蹟」が小野道風と藤原佐理と、この『少年陰陽師』準レギュラーで、毛利志生子の外法師シリーズでも準レギュラーだった、藤原行成だった。ここ参照。



『レオくん』 萩尾望都 小学館

新品購入。
主人公は雉虎猫のレオくん。彼が小学校に体験入学したり、猫雑誌の編集部や漫画家さんの臨時アシスタントのバイトに行ったり、「グーグーだって猫である」の猫オーディションに行ったりする話。
それを「とっても幸せモトちゃん」系の省略した線でなく、普通にドラマを描くときの線でやるもんだから、かえって超シュール。
ところで雉虎猫の男の子はたいてい温厚だが、女の子はどうしてああも喧嘩っぱやく気性が荒いのだろう。マンマ動物病院のチビもレディース。うちの麦子もレディース。麦子なんかいま、おでこと背中に喧嘩傷あるのよ、女の子なのに〜。



『風の王国 うつつの夢』 毛利志生子 集英社コバルト文庫

新品購入。
シャンシュン編終章。血なまぐさかった。血なまぐさいが、かなり気持ちよいカタルシスのある結末であった。

wikiの「シャンシュン王国」の項によると、シャンシュンが吐蕃王国に併合されたのは643年のことだそうで、日本では蘇我一族が専横をきわめていた頃で、大化の改新まであと2年、っすね。


『ガーゴイル 転生する炎の愛』 アンドリュー・デイビッドソン(訳:東江一紀) 徳間書店

図書館。
自動車事故で全身重度の大やけどを負った男が、入院している病院の病室で奇妙な若い女性の訪問を受ける。彼女マリアーネは男と遠い昔(14世紀のドイツ)、親密な関係であったことをほのめかす。彼女が語る14世紀頃の彼女の生い立ちや修道院での生活。合間に挟まる愛の物語。そしてさらに語られる彼との馴れ初めとその後。
彼女が14世紀からずっと生き続けて、21世紀でやっと彼とめぐり合えたのか、それとも今に生まれなおしたのか、謎のまま。そしてガーゴイルを彫り終えた彼女が海へ消えた理由も謎のまま。
やけど治療専門の医師ナン、リハビリ担当のサユリ、精神科医グレゴール、マリアーネのエージェントのジャック、マリアーネの愛犬ヴガツァ等の、彼らを取り巻く人々(および犬)がみないい感じであった。
あとがきはアンジェラ・アキ。著者と彼女はどちらも無名の頃からの友人なのだそうだ。サユリがすこぶるまっとうな日本人だったのは、彼女との交友のおかげもあると思う。



『吸血鬼と愉快な仲間たち』3 木原音瀬 蒼竜社

図書館。だが、例によって他館からの取り寄せ。
乙女のためのホモロマンス&ポルノ小説を新しく入荷しない方針になっている堺市図書館だが、新書版については確かにまったくぜんぜん入らなくなったが、最近気づいたが、文庫はチェックが甘いな。普通のジュブナイルとレーベル分けしてないとこの分な。(= ̄∇ ̄=)
アルのアメリカ帰国編。次の巻あたりで暁とゴールインしそうな感じだ。
それにしても、こんな可愛い蝙蝠いたら、わたしも飼いたい。
そういえば先日、信号待ちの最中、和食さとの駐車場を足を大きく上げて楽しそうに歩いているカラスを見た。飛べないわけでなく、しばらく歩いてから飛び去った。すげー可愛かった。



『ブータン 神秘の王国』 西岡京治・里子 NTT出版

図書館。
西岡京治のことは「世界を変える100人の日本人」で知った。ブータンの農業改革に尽力した人である。
業績もさることながら、西岡京治さんの壮年の頃の写真、ちょっと山本圭さまっぽいルックスで、ブータンという国にはかねてから畏敬の念を抱いていたので、図書館の蔵書を探してみたら、この本があった。
共著の形をとっているが、奥さんの里子さんの一人称。すごいチャーミングな文章。
ブータンの食生活のこと、衣服のこと、近所づきあい、南や東への旅。合間に挟まる写真も美しい。
食べ物をそれぞれの家が冷蔵庫に頼らず長期保存する生活、一年サイクルで管理する生活、というのは、今わたしがしている「要るものをそのつど買って来る」生活より、暮らし方として断然上だと、これを読んであらためて思った。
ところでわたしが最初に「ブータン」という国を「すげーっ」と思ったのは、TVで紹介されていたブータンの絹織物であった。ブータンでは蚕の幼虫が孵化したあとの繭で絹を紡ぐ。だからブータンの絹織物は粗い綿織物のようにごわごわしている、と知ったときだった。
繭の中には幼虫がいる。幼虫ごと茹で殺して紡いだ糸で織ったのが、つやつやと滑らかな美しい絹地だったのかと。



『楽園』上下 宮部みゆき 文藝春秋

図書館。
予約してから二年待ちでした〜。上記の木原音瀬が別の図書館からやっと届いたとき、司書さんに「長らくお待たせした『楽園』も、もうすぐですよ〜」と言われたとき、なんのこっちゃかわからんかったです。(= ̄∇ ̄=)
さらに言うなら、「あ、宮部の新刊」というだけで予約したので、『模倣犯』の続編というか、あの前畑滋子が主人公というのも知らず、読み始めて、へーへーほー、でした。
一人息子を亡くした萩谷敏子という女性がつてをたどって前畑滋子のもとを訪れ、亡くなった息子等くんが持っていた特殊な能力について相談する。その能力を検証していくうちに、娘を殺して自宅床下に埋め十数年その上で暮らしていた一家のことを、前畑滋子はほじくりかえすことになる。
宮部みゆきはときどきいわゆる「超能力」が出てくる話を書くが、たいがいいまいちだったのに、これは面白かったっ!!
キーパーソンである萩谷敏子という人がいい。すごくいい。たまらなくいい。なんてステキで可愛くて立派な人だろう。
土井崎夫妻は気の毒でたまりません。ところで夫妻、いまはどうやって暮らしているんでしょう。蓄えもほとんどないはずなのに、弁護士の先生へのかかりなども、どうやって払っているのでしょう。



『恋細工』 西條奈加 新潮社

図書館。
次に西條奈加の新刊出るときゃ絶対買って読むぞと思ってましたが、タイトルのせいで「もし苦手な恋愛小説ならどうしよう…」と二の足を踏んでしまいました。これまでの三冊を考えれば、西條奈加がただの恋愛小説なんて書くはずないのに。


すんごい、すんごい、

すんごい、

よかったーーっっっ!!!


読み終わった途端、楽天ブックスに注文してしまいました。
時代は江戸後期、水野忠邦の天保の改革の頃の話です。
主人公は百年の歴史をもつかざり職の家に生まれた妹娘お凛。お凛の姉の婿である四代目がお凛ひとりを病床に呼び寄せ、五代目についての遺言を残すところから話は始まる。
もう、行け行けどんどん、やめられないとまらない〜。
気持ちいい。あちこちほんとにもう気持ちいい。天保十四年の神田祭りのくだりでは、ぼろぼろと泣いてしまいました。そして最後の最後に、やっぱりぼろぼろと泣いてしまいました。
堺市の図書館でいま現在、この『恋細工』の予約は11人。
西條奈加の新刊をほんの十人ちょい待ちで読めるのは、きっと今のうちだけだぞー。
これからこの作家、等比級数的に待ち人数が増えてくぞー。
これまでの三作もすんげー面白いが、普通の「大人な小説」(= ̄∇ ̄=)好きには多少くせがあると思うので、そういう人はこれから読んでください。
宮部みゆきの江戸ものとか好きな人にも超お薦めです。
それにしても天保の改革ってこんなにおバカな改革だったのね。政府は倹約するべきだけど、いっしょくたに経済活動まで抑えちまうなんてねー。



『まこという名の不思議顔の猫 参 三姉弟のラララな生活』 前田敬子、岡優太郎 マーブルブックス

新品購入。
まこちゃんとこでこの本が出るとのお知らせがあり、すぐさま注文した数日後、ブログの更新終了のお知らせが。
更新終了の事情についてはあんまり深くは考えないでおこう、そうしよう。
まことシオンに対するしろたろの態度の差はいわば、無神経でがさつな上の姉と慎ましやかで内気な下の姉、下の姉にひそかに恋をする主人公の少年、みたいなストーリーを感じさせる。読んでて愉快なのはやっぱ、まこVSしろたろネタなんですが。
最後の頁の記念写真、昔の、写真館で撮ってもらった家族写真みたいでステキだ。







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