本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス


『虎と月』 柳広司 理論社

図書館。
『ジョーカーゲーム』はいまだ数十人待ちだし、『ダブル・ジョーカー』も数十人待ちなのに、その間に出たこの本は、なぜか開架で遊んでいた。
『山月記』で虎に変じた李徴の息子が主人公。十四歳になった彼は虎に変じた父と遭遇した人のもとに自分の抱える問題を相談に都に行くが、その人は都を留守にしており、出先を訪ねようとして、虎に変じた父が目撃された場所近くの村にたどりつくことになる。
安禄山の乱の十四年後、役人が農村で兵士狩りをする辛い世情を背景にしつつも、なんだかのどかで楽しいお話だった。
表紙および挿絵の絵がむっちゃキュート。



『水の迷宮』 石持浅海

図書館。
朝日新聞の広告にこの著者の新刊の広告が載ってて、それが面白そうだったから、とりあえず借りやすいのか借りてきたんだっけか、ありり?
第三セクター運営の羽田空港近くの水族館が舞台のミステリー。
中盤以降の犯人探しの話し合いのとこは多少だれたが、そこまでは十分面白く、三年前に水族館で亡くなった館員がひそかに計画していた計画と、それが実現されるエピローグには、ほんとに胸が高鳴った。



『池袋ウエストゲートパーク\ ドラゴン・ティアーズ 龍涙』 石田衣良

図書館。
IWGPシリーズ第九作。
「キャッチャー・オン・ザ・目白通り」「家なき者のパレード」「出会い系サンタクロース」「ドラゴン・ティアーズ 龍涙」の四編入り。
このシリーズ、わりかし惰性で読んでたので、最後に収録された「ドラゴン・ティアーズ 龍涙」にはがつんとやられた。
外国人研修制度という名の労働力買い叩きのことを、恥ずかしながらまったく知らなかった。中国では国内のどこでも好きな場所で働けるわけではないことも知らなかった。リンという人物もこれまで出てこなかった複雑な人物だった。結末にも「あっらー」とびっくりした。
クーは今後レギュラー入り?



『歪み真珠』 山尾悠子 国書刊行会

図書館。
独立した作品もあれば、これまでの物語に関わるお話もありの、掌編集。十五編入り。
四番目の「美しい背中のアタランテ」を読みかけたところで、アタランテのお話は分かれているのか、と思って前のページを見返したが、前の三つにアタランテの話はない。ありり?と思ったら、先月くらいからちみちみちみちみ大事に読んでいるキアラン・カースンの『琥珀捕り』、今は223頁めなのだが、それの195頁にアタランテの話が載っていたのだった。シンクロニシティ♪
美しい本だが、なんか物足りなかった。もっとボリュームのある、きっちり書き込まれた話を読ませて欲しいっす。



『老嬢は今日も上機嫌』 吉行和子 新潮社

図書館。
朝日新聞日曜版読書欄で吉行和子のエッセイが紹介されてて、ぴったんこかんかんとかに出ているときの吉行和子はすっとんきょうで可愛いので彼女が書く文章もさぞや楽しかろうと図書館探したら、それはまだ入ってなかったが、これまでにも十数冊本を出しているのを発見。とりあえずこれを借りてきた。
初出の一番古いのが1995年、一番新しいのは2008年。幼い頃の思い出。出演した映画の話、舞台の話。家族の話。友達の話。いっぱい詰まった読みやすくて愉快な本。

ところで吉行和子と妹理恵は幼い頃、家にあった『かみさまのおはなし』という古事記を子供向けにわかりやすくした本をネタにしてかみさまごっこをしていたそうだが、その『かみさまのおはなし』、上中下三冊セットの絵本なら、わたしが生まれて初めて読んだ本とおんなじ本なんですが、そんなにロングランしてた本なのか?
(上巻は天の岩戸のとこまでで、中巻の最初はすさのおのみこととやまたのおろちで、下巻はににぎのみことの話で、あめのうずめのみこととかさるたひこがでてきた)



『スペース』 加納朋子 創元クライム・クラブ

図書館。
初めて読んだ加納朋子はたぶん『ななつのこ』で、その後もずっと読んでたつもりだったが、駒子シリーズの第三作であるこれを読み逃していたのを発見♪ 発見♪
駒子が送ったとある手紙の束に潜む謎を瀬尾さんが紐解く「スペース」と、その手紙の書き主が主人公の「バック・スペース」の二編入り。
「バック・スペース」、ほんわかしたいい話だったが、ハヤミさんの苗字がわかるところで、あー、びっくりしたー。



『ロスト・シンボル』上下 ダン・ブラウン(訳:越前敏弥) 角川書店

図書館。
ラングドン教授シリーズ第三弾。
今回の舞台はワシントンD.C.。ネタはテンプル騎士団。
恩師で親友のピーター・ソロモンから講演依頼を受けたラングドン教授。場所はワシントンD.C.の連邦議会議事堂。
教授がワシントンに着いた夕方から次の夜明けまでの、一夜の物語。
サイコ野郎が犯人なのはラングドンシリーズとしては目新しかった。の正体については、すれっからしのミステリファンでなくともたいてい途中で気づくと思うが、気づいても特に問題なかった。
これもきっとトム・ハンクス主演で映画化されると思うが、今回のヒロイン、五十代の美しい女性キャサリン、彼女を誰が演るのか、今から楽しみ〜♪ CIA保安課のボス、日系人でスモーカーのサトウ女史、彼女を誰が演るのかも楽しみ〜。
そんで、これ読んだら、アメリカ建国の頃のことを書いた本が読みたくなり、ワシントンD.C.観光特集みたいな番組も観たくなった。

しかし、右手ちょんぎられたばかりの被害者が、犯人捕まって解放されたからって、病院にも行かずにフツーにしてるのはどうよ?


『南の子供が夜いくところ』 恒川光太郎 角川書店

図書館。
連作短編集。
南海の島を舞台に、過去を、現在を、行きつ戻りつする物語。
実に、実に、実に、心地のよい物語だった。
読み終えたあと、冒頭に戻り、寂しい余韻を味わった。海沿いの道で車を停めたタカシに、寝室の窓を開けてエドガーとアランの迎えを待ったリデルを思い出した。



『BG、あるいは死せるカイニス』 石持浅海 東京創元社

図書館。
他の動物と違い、人間は生まれたときはすべて女性。出産を経た女性のごくごく一部が男性化する。
そんな世界の中の日本、とある学園を舞台にしたミステリ。
『水の迷宮』のときは思わなかったが、これを読み、ひょっとして石持浅海ってだいぶ前に読んだ、架空の遺伝病をキーにした連作ミステリ書いた人?と思ったが、調べてみればあっちの著者は北川歩実という作家であった。
最後の叩き込むような展開は楽しかったが、それまでの地道な推理のとこはたるかった。



『数えずの井戸』 京極夏彦 中央公論新社

図書館。
井戸から現われて一枚二枚…と皿を数えるお菊さんの話。
「数えるから足りなくなるのです」というキャッチコピーにしびれた。
直参旗本青山家で起きた惨殺事件のあと巷を騒がせる怪談話から語り起こされ、事件以前、事件に関わる人たちの境遇やつながりや心持ちなどが順繰りに語られていく。
お仙さんの出現が唐突だった。
そして最初の惨劇が起きた直後、724頁のあと一休み、惨劇後の又市と徳次郎の会話に飛ぶから、これはきっと又市たちがなにか策を弄したのか、惨劇には裏があり、菊や三平は実は生きているのかと思ったら…。
こりゃないぜ、京極ー。



『ダブル・ジョーカー』 柳広司 角川書店

図書館。
『ジョーカー・ゲーム』続編。
「ダブル・ジョーカー」「蝿の王」「仏印作戦」「柩」「ブラックバード」の五編入り。
舞台は日本、中国前線、フランス領インドシナ、ドイツ、アメリカ西海岸。
ドイツ編「柩」では、前作『ジョーカー・ゲーム』でも触れられていた第一次世界大戦当時、結城がドイツ軍に捕まり逃走したときのできごとが、ドイツ情報部将校の記憶を通して語られる。
D機関の採用試験に受かるような奴はどんな奴かと思っていれば、やっぱり人間だったんだなあと思わされた「ブラックバード」。
面白かったよお。
面白かったよお。
一気読み。



『オー!ファーザー』 伊坂幸太郎 新潮社

図書館。
父は四人に母一人の奇妙な六人家族に育った高校生が、事件に巻き込まれる話。
作中でも触れられていたが、ひとりの女が四人の夫と暮らすというのは、やはりなんというか、生臭い想像をしてしまう。
てか、こういうシチュエーションだと普通は母親が亡くなってて、父親たちがくっついたり、くっついたり……、…って、あ、そうかー。こーゆー設定、ボーイズラブもので読んだのか、わたし。(= ̄∇ ̄=)



『シャーロック・ホームズ 最後の解決』 マイケル・シェイボン(訳:黒原敏行) 新潮文庫

図書館。
シャーロック・ホームズは引退後、養蜂を始める。
初めてそれを知ったのは中学生の頃だったと思う。「なんでいきなり養蜂?」と怪訝に思った記憶がある。
エラリー・クイーンも、最初の頃の設定では、引退後は養蜂始めてなかったっけ?
引退後に養蜂、というのは、東日本でいうなら「定年して蕎麦打ち始めました」みたいに、定年後の職業としてはポピュラーなものらしいのを、なんかで読んだのは数年前。
で、時は第二次世界大戦さなか、引退して養蜂しているシャーロック・ホームズが、ナチスの弾圧を逃れてイギリスに来たユダヤ人少年が引き取られた下宿屋での殺人事件を解決する、きちんとした二次創作もの。



『トーキョー・プリズン』 柳広司 角川書店

図書館。
タイトルの「トーキョー・プリズン」とはもちろん、戦犯を収容した巣鴨プリズンのこと。
ミステリとしては微妙だが、太平洋戦争直後の物語としては、深い物語であった。


『新世界』 柳広司 新潮社

図書館。
『ダブル・ジョーカー』のおかげで柳広司一気読み中断してたのを思い出し、まだ読んでいなかったのを借りてきたのだが、なんというか、絶妙な順番で読んでしまった気がする。
『はじまりの島』や『饗宴』系列の、歴史上有名な人物を登場人物としたミステリ。
舞台は太平洋戦争直後のロスアラモス。
語り手であるイザドア・ラビは架空の人物か?
オッペンハイマー、フェルミは名前を知っていたが、テラー、コンプトン、ベインブリッジ、オットー・フリッシュは知らなかった。
ボーアやノイマン、ファインマンは登場しない。
広島と長崎に落とされたそれぞれの原子爆弾の起爆方式の違いについても、この本で初めて知った。





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