本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス


『シカゴよりとんでもない町』 リチャード・ペック(訳:斎藤倫子) 東京創元社

図書館。
ダウデル夫人シリーズ第三弾。
『シカゴよりこわい町』は1929年〜1935年まで、『シカゴより好きな町』は1937年の話だったが、そしてこの『シカゴよりとんでもない町』はなんと1958年。
真珠湾攻撃が1941年で、終戦が1945年。朝鮮戦争が1950年〜1953年(休戦)。
(いまだ「休戦中」というのは、去年11月の北朝鮮による延坪島砲撃まで、ぜんぜん知らなかった)
間に第二次世界大戦と朝鮮戦争挟んで、前二作でもすでにばあさんだったダウデル夫人は、すでに90歳近い大ばあさん。
が、彼女のパワーは衰えない。
今回の語り手は、ダウデル夫人宅のお隣に引っ越してきた、メソジスト派の牧師さん一家の三人の子供のうちの真ん中のボビー。
が、ボビーの父は荒れ果てていたメソジスト教会の修理から始めねばならず、日曜日にも数えるほどの人しかやってこず、一家はネズミのように貧乏だった。
が、ダウデル夫人はこの一家の人々がお気に召したらしく、インディアンの幽霊騒ぎをでっちあげ、自分もぼろもうけした挙句、ボビーの父の教会が脚光を浴びる手伝いまでする。
ダウデル夫人にすぐに懐いて、金魚の糞よろしく夫人のあとをついてまわり、ダウデル夫人の手下となる、ボビーの妹ルース・アンがすっごい可愛かった。
今回もほんとにとびきり楽しい話だった。
リチャード・ペック、次は何が出るかな、出るかな♪
早く出してねー。>東京創元社御中&斎藤倫子様



『僕僕先生』 仁木英之 新潮社

図書館。
借りてる本を読みつくし、買った本も読みつくし、予約の本はまだ順番来そうになく、ファンタジー大賞受賞作から面白そうだったこれを借りてきた。
かなり貯め込んでから役人を引退した男が不老長寿を夢見、近所に住んでいるという仙人に指南を請おうとしたところ、男ののらくら息子がなぜか仙人に気に入られ、旅に出る仙人のお供をすることになる。
面白くないことはなかったが、ものすごく気に入ったキャラもおらず、さらっと読み終えてしまった。



『あなたの人生の物語』 テッド・チャン(訳:浅倉久志他) ハヤカワSF文庫

図書館。
『僕僕先生』と同じ理由で、ヒューゴー賞ネビュラ賞の一覧からテキトーに選んで借りてきたのだが。


ディンゴン・ディンゴン、

超大当たりーーーっっっ!!!!!


短編集。
「バビロンの塔」「理解」「ゼロで割る」「あなたの人生の物語」「七十二文字」「人類科学ヒューマン・サイエンスの進化」「地獄とは神の不在なり」「顔の美醜について−ドキュメンタリー」の八話入り。
天に届く塔。それを登る鉱夫たち。この世界は天動説の世界。彼らはやがて月の高さを越え、太陽の高さを越え、星々がとてつもない速度でめぐるのを見る、冒頭の「バベルの塔」からもう、テッド・チャンが大大大好きに。
「あなたの人生の物語」での、我々が使う文字とはまったく違う概念の文字、これを語るためにテッド・チャンが選んだ物語り方の、なんという見事さ。
「地獄とは神の不在なり」の、天使が降臨する世界、も凄かった。
錬金術が理屈どおりに作用する世界を描いた「七十二文字」も大好き。
「顔の美醜について−ドキュメンタリー」も見事。
これは買います。
本棚に絶対置いときたい本です。
まずは出てるの全部読むぞーっ!と思ったら………。

これ1冊だったのね…。
他は短編1作入ったアンソロジーがあるだけなのね。
あと、今年1月号の「SFマガジン」に最新作の翻訳が載ってるのね。
それ読んだら、今のところはおしまいなのね。
えーん、えーん………。



『レインボーズ・エンド』上下 ヴァーナー・ヴィンジ(訳:赤尾秀子) 創元SF文庫

図書館。
で、ヒューゴー賞ネビュラ賞を眺めてたら、これが出ていた。
時は2030年代。人は常にオンラインでつながれ、モニタリングするための端末を持ち歩かなくても特殊な仕様のコンタクトレンズを嵌めれば視界がそのままモニタとなり、自分がいま見ている風景に好みのスキンを被せることも自由自在。
医療の発達で末期のアルツハイマーから生還、思考能力と若い頃の外見を取り戻した、スーパー根性悪の詩人。
詩人の孫の同級生で、落ちこぼれの少年。
アルフレッド・ヴァズの陰謀のことはいまいちようわからんかったが、詩人と少年、彼らが学ぶ職業訓練クラスのとこは、ほんとに楽しかった。
コンタクトレンズといえば、ジョン・ヴァーリーの『スチール・ビーチ』に、コンタクトレンズがカメラのレンズがわりとなり、24時間見ているものを記録してくれる、というテクノロジーがあり、コンサートに行くたび、「ああ、あれがあったら…」などと思っていたが、この頃にはどんなコンサートも全方向的に記録され、好きな席で何度でも観たいところを観ながら、観たコンサートを楽しみなおせるんだろうなあ。
あと、わたしは人の顔を覚えるのが下手なのだが、テクノロジーがこんな風に発達してくれたら、「あの人は知ってる人だっけ?」とか「知ってる人だけど誰だっけ?」とか、悩まずに済むのね。きちんと自分で記録をとっとけば、会ってすぐに先方に知られず検索できるのね。


『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』上下 田辺聖子 中央公論社

図書館。
小学校の帰り、一緒の方向に帰る連れとじゃんけんをした。
「グー」で勝ったら「グリコ」で三歩、「チー」で勝ったら「チヨコレエト」で六歩、「パー」で勝ったら「パイナツプル」で六歩、進めるのだ。
今月10日放映の「ビーバップ・ハイヒール」、「知られざる、なにわ偉人伝」を観るまで、この遊びのネタ元が岸本水府がグリコ広告部勤務時代に作った新聞豆広告とは、まったく知らなかった。
で、その中で筒井康隆がこの本のことを教えてくれて、翌日さっそく図書館で借りてきた。
そんですんません、上巻の最後あたりまでは真面目に読んだんですが、関東大震災の話あたりで、さらに知らない人がわんさか出てきて、あとはテキトーにすっ飛ばしながら読みました。
あ、でも、わたし、大阪市内の地理は疎いんですが、道頓堀あたりのまだしもよくわかってる場所が出てきたのは、楽しかった。
そんで、そこまででもちゃんと読んだおかげで、今月もまた行った松竹座、三階の廊下に飾られている歌舞伎の名優の写真、そこでこれに出てきた初代鴈治郎や三代目愛之助の写真みつけて、嬉しかった。
(観に行った翌日、三五郎役の四代目愛之助隠し子騒動勃発してびっくりー)
あと、今月は村上信五のひとり舞台「If or... V」にも行ったんですが、去年11月に起こった北朝鮮による韓国延坪島砲撃事件、そこから枝分かれした別の未来、これを発端に戦火は拡大、それは第三次世界大戦を引き起こすに至り、日本も参戦、徴兵制が復活して、関ジャニ∞の七人も徴兵されて前線に送られる、というネタがその中にあり、この本はそれ観たあとで読んだんですが、第二章の第八連隊の話、大阪で徴兵した第八連隊は弱くて有名で大阪人はそれを自虐ネタで笑いのタネにしていた、という話のとこ、おかげで「だよなー。今もかわんないよなー。もしジャニーズ徴兵されることになっても、そんなかで一番使えねーやつらだよなー。てか、使えねーやつらでいつまでもいて」としみじみ。
グリコ時代の活躍については、「ビーバップ・ハイヒール」の再現フィルムのほうが断然面白かった。
あ、あと、最初のほう、水府さんの子供時代の思い出の話、あれ、怖かった。
水府さん一家が海老江に住んでた頃、真夜中、ボソボソ戸をたたく人がいて、戸の向こうから。
「ちょっとおたずね申します。伯耆ほうきの国(今の鳥取県中部および西部)はどちらへ行ったらよろしいでしょうか」
女の声が尋ねた、っつう話。



『フランキー・マシーンの冬』上下 ドン・ウィンズロウ(訳:東江一紀) 角川文庫

図書館。
前作の『犬の王』が血みどろで結末もやりきれない話だったので、買わずに図書館に予約したんですが。
すいません、これはこれから買います、注文しますー。
サンディエゴの海岸で餌屋を営むフランク・マシアーノ62歳。名前どおりイタリア系。彼は他にも魚介やリネン類をレストランに卸し、貸家業もしており、別れた妻と娘に生活費をきちんと渡し、元ショーガールのブティック経営者の彼女もいる。
朝は4時前に起き、餌屋を開き、店番が出勤してきた後、ボードを手に海へ行き波に乗る。
が、彼はかつてマフィアのために働いており、「フランキー・マシーン」という名で知られた伝説の凄腕の殺し屋であった。
彼の平和な日々はある日突然終わりを告げる。
彼の命を奪おうと追う連中と、逃げる彼。
それと並行して語られる、彼の生い立ちから始まる、彼が足を洗うまでの長い物語。
結末も、ものがなしくも、なんともいえず清清しかった。
「ゴッドファーザー」はもちろん観ましたが(思えば、ロバート・デ=ニーロを初めて観たのは、「ゴッドファーザー2」であった)、「我は海の子」も「黄金の腕」も観たことがありません。いまallcinema調べたら、どっちも邦盤出てました。観たいと思います。



『午前零時のフーガ』 レジナルド・ヒル(訳:松下祥子) 早川書房

新品購入。
療養生活を終え、職場に復帰することになった、ダルジール警視。
復帰第一日目の月曜日、家を出れば、町の様子がどこかおかしい。おかしい。
おかしいはずだ。
なんとその日は日曜日。。。
間違えて日曜日に出勤しようとしたダルジールを追う女。ダルジールを追う女を追う兄妹。七年前に失踪した男。ヤクザあがりの経済界の大物と、政界入りしたその息子。
ダルジール警視復帰編。
え? え? これで終わり? と思ったら、最後の最後にあっと驚くどんでん返しー。
いやー、気持ちよかった。



『シアター2』 有川浩 メディアワークス文庫

映美ちゃんに貸してもらいました。
『2』が出てたのも、mixiの映美ちゃんのつぶやきで知りました。
松竹座のチケット(二月の仁左衛門)お届けに行って借りてきて、帰ってちょっとだけ読もうとしたら、行け行けどんどん、やめられない、とまらない〜♪
どの話もすんごい気持ちよかった〜♪♪♪



『ショパンの手稿譜』 ジェフリー・ディーヴァー他(訳:土屋晃他) ヴィレッジハウス

図書館。
リレー小説であった。
しっとりした音楽史ネタのミステリかと思ったら、ドンパチドンパチ人も死にまくるわっけない話であった。



『遥かなる未踏峰』上下 ジェフリー・アーチャー(訳:戸田裕之) 新潮文庫

図書館。
ジョージ・マロリーって、「そこに山があるからだ」の人?と思ったら、そうであった。
イギリス隊隊長としてチョモランマ初登頂に三度挑み、三度目に遭難した、ジョージ・マロリーを主人公とした物語。
登山ものとしては夢枕獏の『神々の頂』のほうが面白かった気がするが、ジョージ・マロリーの生い立ち、成長、ルースとの恋、登頂チームを組織するときの軋轢等、これはやはり伝記というより、実在の人物と出来事を材料にしてはいても、そこかしこに「観てきたよう嘘」を織り交ぜた、紛れもない「小説」だったとこが、アーチャーらしくて嬉しかった。


『最後の哲学者』 柳広司 幻冬舎

図書館。
今回はギリシア神話。
父を殺し母と寝ることを運命づけられたオイディプス。クレタの迷宮と王の娘アリアドネ。迷宮の化物。堕ちるイカロス。不吉なカサンドラ。
ソクラテスの妻の話と最後のヘロドトスの話が、神話ではない話。
ほんの少しの塩、切り方の工夫で、素材がものすごく独特の味になるような、そんな短編集。



『無花果の実のなるころに』 西條奈加 東京創元社

新品購入。
初の現代もの。
父の地方転勤に母がついていき、中学二年生ののぞむは神楽坂で履物屋を営む父方の祖母、もと芸者でもと映画女優のお蔦さんと一緒に住むことになる。
そこで望が遭遇するさまざまなできごとや事件を描いた連作短編集。
「望」と書いて「のぞむ」で中学二年生というので、7WESTののんちゃん(小瀧望)のビジュアルで読み始めたのですが、中二ではや180センチ越えののんちゃんと違いこの望くんは、年の割には小柄な男の子でした。が、それが判明した時点で、ビジュアルがのんちゃんで固まってしまっており、なかなか小柄になってくれませんでした。
そんでお蔦さんは藤村志保のビジュアルでした。「フェイク 京都美術事件簿」はつっこみどころ満載のドラマだったけど、レギュラーのキャラクターはみんな魅力的で、中でも藤村志保の、主人公の母で骨董店の女店主が、ほんとステキだったのー。
ともあれ、お蔦さんがステキでステキで、望くんもいい子でいい子で、ふたりを取り巻く人たちも楽しくて、これまた行け行けどんどん、やめられない、とまらない〜で、届いたその日に読了………。



『円環少女13 荒れ野の楽園』 長谷敏司 角川スニーカー文庫

新品購入。
『無花果の実のなるころに』を一気した翌日、家に帰ると郵便受けにこれが…。
ちょっとだけ読むつもりが………。
死んだ魔法使いが別の縦糸世界から呼び出されて、そちらでの事の経緯をぽろぽろと洩らしながら、バトルに突入するとこは、ほんっと楽しかった。
神和家の真実にはむっちゃびっくりした。
そして、きずな。
仁が未来へと消えたあと、そしてメイゼルが旅立ったあと、仁を未来へと迎え入れるまで、きずなは長い長い時をずっとずっと生き続けるのね…。
番外編とかはもうないのかな。
新作はまたシリーズかな、単発かな。
楽しみにしてるぞー。






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