本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス


『たぶらかし』 安田依央 集英社

図書館。
朝日新聞の広告見て予約してだいぶ待った。


面白かったあああっっっ!!!

主人公はマキ、もうすぐ40歳。職業は役者。ORコーポレーション所属。
しかし、演じる役はあっても、脚本はない。すべてがアドリブ。
ORコーポレーションが受注する仕事は、贋の新妻、贋の母親、死体の代役、実は存在しない故人の隠し子等々。
しょっぱなの、依頼者がマキの仕事にぐちぐち文句たれるところからはや引き込まれたが、ダイソンに吸い込まれる埃のように物語の中に吸い込まれたのは、すぐに始まったマキとORコーポレーションの馴れ初めの回想、面接に訪れたマキにORコーポレーション代表の狸親父がいきなりオーディションを始めるところ。もう『ガラスの仮面』並みの気持ちよさ。
マキが演じる仕事。トメイ婆さんと彼女の伝説。マキの押しかけ付き人となるモンゾウ。
これ、きっと絶対、ときどき読み返したくなる本だ。
買って手元に置かねばー。



『県庁おもてなし課』 有川浩 角川書店

映美ちゃんが貸してくれました〜♪
3月29日発売で、堺市の図書館にはまだ、蔵書登録すらされてない〜♪
映美ちゃんは買ったその日に読んでしまい、4月1日に一緒に映画(「オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー」)観に行ったときに貸してくれて、わたしも貸してもらったその日に読んでしまったという。


面白かったあああっっっ!!!

高知県県庁にいきなり作られた観光誘致目的の「おもてなし課」。
「おもてなし課」に配属された職員たちは、とりあえず他県の真似をして地元出身の有名人著名人たちに観光大使を依頼するのだが、依頼したひとりからおもてなし課にいきなり電話がきて…。
おもてなし課の当初のぐだぐだぶりが実にリアルで、でもまずは吉門、やがてその義父という頼りになるオブザーバーが現れてくれたおかげでぐだぐだぶりにイライラさせられずに読めて、いやもう行け行けどんどん。
そうだよねえ。昔、観光地やサービスエリアのトイレってほんと、どこも汚かったよねえ。あれ、いつ頃から綺麗なとこが増えだしたんだろ?
馬路村」もついググってしまった。ググって、けっこう隅から隅まで読んでしまった。



『号外! 虚構新聞』 虚構新聞社編 笠倉出版社

新品購入。
愛読している『虚構新聞』の書籍版。
買おうかどうしようか500円、と思ってるうちに発売日が来て、発売されてみたらあっと驚く絶賛品切れ中で、そのうち買おうと思いながらうっかり忘れていた。
軽いいちびりあり、ブラックなネタあり、洗練の極みのようなイヤミあり(「キャラは死んでも生き返らない 15%の小学生が回答」199頁)、と思えば時に教養を試され…(「先の戦争 反省する必要ない 98% 世論調査」185頁)。
そして、マイラはここでも雨だった。



『四畳半王国見聞録』 森見登美彦 新潮社

図書館。
なんとはなしにエッセイ集だと思い込んでいたが(根拠不明)、連作短編集であった。
京都を舞台にした大学生たちの青春群像、のようなもの。
面白くないことはなかったが、いまいち。



『ファージングT 英雄たちの朝』 ジョー・ウォルトン(訳:茂木健) 創元推理文庫
『ファージングU 暗殺のハムレット』 ジョー・ウォルトン(訳:茂木健) 創元推理文庫


図書館。
過去のあるポイントから枝分かれした別のその後を描いた偽史もの。
第二次世界大戦、アメリカは結局参戦せず、唯一第三帝国と抗戦していたイギリスはついに講和条約を結ぶ。
ちなみに日本は真珠湾を攻撃しなかったらしく、大東亜圏を維持している模様。
それにしてもなんでアメリカに喧嘩売ろうと思ったんだろうな。アメリカのことはそっとしといてあのまま西に進んでりゃ、ドイツと日本でソ連を挟み撃ちにできたのによ。
イタリアにはムッソリーニがいるのかな? スペインにはフランコがいるのかな? そのへんには触れてなかったと思う。
『T 英雄たちの朝』は、1941年の講和条約締結から八年後。
講和条約の立役者たちが集う屋敷で殺人事件が起こり、立役者のひとりの娘だがユダヤ人青年と結婚したルーシーと、殺人事件解決のために派遣されたカーマイケル警部補、このふたりの視点から物語が進む。
『U 暗殺のハムレット』は、『T』から数ヵ月後。こちらも語り手はふたり。ひとりは『T』と同じく、カーマイケル警部補。もうひとりはヴァイオラ・ラーキン。ラーキン子爵家の三女で舞台女優。コミュニストの妹のせいでヒトラー暗殺の陰謀に巻き込まれる。
『T』の最初のほうでは、ファージングセットの人々に馴染むのにちょい時間がかかったが、馴染んでしまえばあとは行け行けどんどん、そのままの勢いで『U』に突入。
『V』は『U』より十年後に話が飛ぶらしい。語り手のひとりは『T』『U』と同様、カーマイケル警部補。もうひとりはやはり女性らしいので、『U』で父を亡くし、カーマイケル警部補に引き取られることになりそうなレイチェルに持ち点全部。
ところでカーマイケル警部補はゲイで、ジャックという恋人がいる。このジャックの話し言葉の訳、もっとふつーに喋らせてくれてよかったと思う。



『5分でたのしむ数学50話』 エアハルト・ベーレンツ(訳:鈴木直) 岩波書店

図書館。
堺市図書館のこの本は誰か知らんが借りた奴がまだ返してやがらねえ。
で、カウンター予約したら、堺市以外の図書館から取り寄せてもらえました。ありがたや、ありがたや。
これまた楽しく読みましたが、『続』よりこっちが計算例があるのが多く、そのひとつのどれかですっごく頭が痛くなったんだけど、ありり、どれだったっけ?
あと、いまだになんか騙されてるような気がするのが、第33話「誕生日のパラドックス」。



『贅沢の探求』 ピーター・メイル(訳:小梨直) 河出書房新社

図書館。
ピーター・メイルが出版社のゼニでステキな贅沢をしたり、世間一般に贅沢と思われてることを考察したり、友達のおかげでステキな贅沢をしたりする、エッセイ集。
足の採寸からまず始まるオーダーメイドの靴や、体の採寸から始まるオーダーメイドのシャツやスーツの項を読んでて、成金の方がよくご自慢される高級ブランド製品、どんだけ高かろうが所詮「吊るし」の既製品〜♪と愉快な気持ちになれます。
「訴訟はいかが」や「愛人を持つ」「使用人について」等の根性ババ色な推理も大好き♪
でも中でも痛快だったのは「自家用ジェット機」、自家用ジェット機をもつ大金持ちの食いしん坊の知り合いに誘われて、ポルトガルへお昼を食べに行く話。
キャビアについては、ピーター・メイルが「ご飯」を知らなかったのは残念。わたしはランプフィッシュの卵でしかしたことがないが、これをぬくぬくのご飯にどっさりかけて食べるのは、実に旨い。きっとキャビアでも旨い。と思っていたら、ナメ猫で稼いだ人がしていた。そうか、やっぱり旨いのか。



『ダンタリアンの書架』7 三雲岳斗 角川スニーカー文庫

新品購入。
それを読んでから最初に見た相手に惚れてしまう幻書をめぐるスラップスティックコメディ「災厄と誘惑」、
カドフィール女学園再びの「少女たちの長い夜」、
ヒューイはいかにして九十万と六百六十六冊の幻書を蔵する"ダンタリアンの書架"の鍵守となったかがついに語られた「鍵守」、
に、付録の「断章」二個付き。
「少女たちの長い夜」みたいな、与えられたささやかな道具を最大限有効に使う話、大好きー。
このシリーズはこの巻でひとまずひとくぎりらしいが、関西で放映あるかどうかは不明だが7月これアニメになるらしいし、五月に電撃文庫で『ストライク・ザ・ブラッド』なる新シリーズ始まるし、楽しみ〜♪


『道徳という名の少年』 桜庭一樹 角川書店

図書館。
村一番の美女。
彼女が生んだ四人の父無し子と一人の父あり子。
四番目の父無し子とたった一人の父あり子は夫婦となり、ひとりの男の子の親となり、
その男の子は戦争で両腕をなくし、幼馴染みの雑貨屋の娘と結婚して、男の子の親となり、
その男の子は都会に出て有名なロックスターとなる。
終章に出てくる女の子の目がとろりとしたバター色だったのは、彼女が前述の一家と実はなんの関係もなかったからか、それとも語られなかった出来事があるのか。



『ファージングV バッキンガムの光芒』 ジョー・ウォルトン(訳:茂木健) 創元推理文庫

図書館。
ファージング三部作最終巻。
語り手のひとりは思ったとおり、カーマイケルがひきとったレイチェル。
が、カーマイケルとジャックに育てられるとばかり思ってたが、寄宿学校へ行ってたり、卒業後も友人宅に下宿してたりで、カーマイケルとジャックの関係も知らずに育つ、というのは想定外でした。
日本が原爆を手に入れソ連に落とし、広大なソ連の領土を、西からはドイツが、東からは日本が、切り取ろうとしている。
イタリアではムッソリーニが健在。スペインではフランコが健在。そしてイギリスにまでユダヤ人収容所(『処理』までするかは不明)が作られようとしている、1960年。
黒シャツ党の集会で起きた暴動にレイチェルが巻き込まれたことから、レイチェルともどもカーマイケルの立場も危うくなっていき…。
レイチェルが社会状況にまったくなんの疑問ももたないところが、イライラさせられもし、本当らしくもあった。そして、そんな彼女が、いざ自分の足元が危うくなったとき、幼い頃を過ごした下町の仁義と方法を思い出すところも、秀逸だった。
TとUに出てきた人がちょこちょこ出てくるのだが、TとUをすでに返却していたので、確認できないのがもどかしかったわー。
そしてクライマックス
まさかこんな「水戸黄門」な解決になるとは、思いもよらなかったわーーー。
気持ちよくはあったけど、いやもうびっくり。






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