本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス



『バタをひとさじ、玉子を3コ』 石井好子 河出書房新社

図書館。
やっと順番まわってきました。
巻末の掲載一覧によると、一番古いのが1955年、一番新しいので2001年、でも1970年代に書かれたものが多かったのね、に書かれた食にまつわるエッセイを集めたもの。
確認したのは、「キャンティ」の話や、石井好子さんがレストランを開いた話のとこで。ああ、こんなに昔に書かれたものだったのかと思い、その頃わたしなに食べてたっけとふと思って。
物心ついた頃のスパゲティといえば、麺と粉末ソースがセットになった「マ・マースパゲティ」、その後乾麺とレトルトミートソースのセットが出現、たらこスパゲティを知ったのは大学生の頃、なんばの高島屋をうろついてるときに遭遇した「壁の穴」無料公開料理教室であった。思えば遠くへ来たもんだ。
女四人のイタリア旅の話が愉快だった。あちこちにちらほら出てくるダンナさんのちょっと変わった食の好みのネタも楽しかったなあ。
他にも料理エッセイやレシピ本を書かれているみたいなので、それらも読もう、そうしよう。




『不死細胞ヒーラ ヘンリエッタ・ラックスの永遠なる人生』 レベッカ・スクルート(訳:中里京子) 講談社

図書館。
1951年にひとりの女性の悪性腫瘍から採取され培養され続ける世界初の不死細胞「ヒーラ」。
どうやら既に何度もブレイクしたネタで、細胞の持ち主だった女性とその家族に焦点をあてたのが、この本ならではの新しい切り口だったらしい。
1951年当時、ヘンリエッタが受けた治療の野蛮さにはぞっとした。
でもいま現在行われている治療だって、数十年後には「あの頃の医療って野蛮だったんだ…」とかになるんだろうなあ。
臓器移植については、本人および近親者の細胞からの培養が一般化されたら、今の「死者からの移植」「生者からの移植」つまり他者から臓器を取り出して移し替える現在の方法は、間違いなく「戦慄すべき暗黒時代」ということになると思う。



『グノーシスの薔薇』 デヴィッド・マドセン(訳:大久保譲) 角川書店

図書館。
ひさしぶりに東図書館覗いて、開架で拾ってきた本。
16世紀初頭の頃のイタリアが舞台。
語り手は、当時の教皇レオ十世の侍従にして、グノーシス派の信仰を持ち、愛する女性を異端審問に殺された、小人のペッペ。
彼の生まれ育ち、グノーシス派への入信、異端審問と見世物小屋暮らし、そしてレオ十世に仕えるようになってからの物語、そして復讐、最後には思いがけない結末、が語られる。
下卑たネタ、特にレオ十世の性向のことなど、もあけすけに描かれているのに、なんというか、品のいい端正な小説であった。
これはもとの文章からして品がよくて端正だったのか、訳者の腕か。



『カメレオンマン』 図子慧 パブー

電子書籍で購入。
『駅神再び』読んでからもうだいぶ経ったことを思い出し、「図子慧」でググってみてご本人のブログを発見、パブーなる電子書籍販売サイトに新作が公開されていることを知り、生まれて初めて電子書籍購入。それが1〜3まで公開されてたとこで、購入して一気読み。その後、4と5(完結編)が公開され、それもすぐに購入したが、図書館で順番回ってきた本を優先せざるをえず、こちらは放置してあった。
舞台は近未来の日本。特殊な生い立ち育ちの男の子が、義父に性的な虐待を受けた女の子と出会い、しばらく一緒に暮らし、離れ離れになり、再びめぐり合い、結婚し、子供が生まれ、その後離婚の瀬戸際にいくが、元の鞘に納まる話…。それが、男の子が女の子と出会う前に知り合った天才の男や彼が開発した「キネクス」という量子コンピュータを使った脳波解析技術や彼の妻や子供たちとともに物語られる。
勧善懲悪、物語の中の「わるもん」がばったばったと退治されて大団円。気持ちよかった〜♪



『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』5 大森望責任編集 河出文庫

図書館。
SF書き下ろしアンソロジー。
「ナイト・ブルーの記憶」上田早夕里、「愛は、こぼれるqの音色」図子慧、「凍て蝶」須賀しのぶ、「三階に止まる」石持浅海、「アサラムール バリに死す」友成純一、「スペース金融道」宮内悠介、「火星のプリンセス 続」東浩紀、「密使」伊坂幸太郎、の八編入り。
だけど、「スペース金融道」と「火星のプリンセス 続」は読み飛ばして読んでいない。
図子慧の「愛は、こぼれるqの音色」は上記の『カメレオンマン』の番外編で、これ読みたさに借りてきた。
(のだが、「NOVA」で検索してもこれがヒットせず、カウンター予約したら、西図書館にあってすぐに来た。あれー?と思って「書き下ろし日本SFコレクション」で検索したら、1から5まで揃っていた)
男の子が女の子と離れ離れになって再会するまでの間にあった出来事。えっと、このカレンさんがあのカレンちゃんのお母さんで、でもあれれ? 生い立ちのエピソードってあったっけ? あったとしたらどのへんだったっけ?
須賀しのぶはコバルト文庫の「キル・ゾーン」を二冊くらい読んだくらいだったのだが、面白かった、「凍て蝶」。
石持浅海も『水の迷宮』を読んだきりだったが、この「三階に止まる」、すっきりしたホラーで面白かった。
友成純一は初めて読んだ。面白かった。「バリに死す」は芹沢光治良の『巴里に死す』にひっかけたもの、と思ったとこで、『巴里に死す』はまず大和和紀が漫画化したのを読んで、それから原作も読んだんだわーと思い出した。そおいや、川端康成って一冊も読んだことないけど、大和和紀が漫画化した『古都』だけは読んでたな、とか、源氏物語というものを知る前に大和和紀の『ラブパック』で「光源氏」という名前を知ったな、とかずるずる思い出した。
伊坂幸太郎の「密使」は、人から六秒だけ時間を盗める男の話。
盗んだ時間、睡眠時間に使っていいなら、欲しいー、この能力、欲しいーーー。
が、千人強触り倒して数時間か…。
一番欲しい能力は、「起きる時間より1分前より前に寝付いたら、十分寝たりた状態で目が覚められる」能力。


『職業は武装解除』 瀬谷ルミ子 毎日新聞出版

図書館。
例によって、朝日新聞日曜版読書欄推薦図書。
著者は紛争地で紛争が収まったあとの武装解除が専門で、ニューズウィーク日本版2009年7月 8日号の「世界が尊敬する日本人100人」のひとりに選ばれていたらしい。
生い立ちと、なぜ紛争収束後の秩序回復の専門家を目指したか、目指して以後の道のり、現場で体験したさまざまなケース。
読んでる間は気持ちよーく行け行けどんどん一気しましたが、うーん、これ、感想文書きにくいー。
ので、リンクでも貼っておけー。
瀬谷ルミ子が事務局長を務める日本紛争予防センターJCCPのオフィシャルはここ


『扉守 瀬ノ道の旅人』 光原百合 文藝春秋

図書館。
これから他館に返却される本コーナーでみつけ、ちょっと読み出したらやめられなくなり、借りてきた。
「瀬ノ道」という、モデルは「尾道」だが架空の町を舞台とした、短編集。
「帰去来の井戸」「天の音、地の声」「扉守」「桜絵師」「写想師」「旅の編み人」「ピアニシモより小さな祈り」。
不思議が当たり前のように混在する世界、そしてその不思議をすんなりと受け入れる人々。波津彬子の「雨柳堂」シリーズに似たそういった気持ちよさのあるお話の数々でした。



『日本人へ リーダー篇』 塩野七生 文藝春秋

図書館。
小泉純一郎が首相で、アフガニスタンへの自衛隊派遣の頃に書かれたエッセイ。
心の底から同意共感した文章は「傲慢とは、心中にひそむ劣等感の裏返しでしかない」(76頁)、「悪いことだからやってはいけない、ではなくて、見苦しいからやるな」(206頁)。
「「戦死者」と「犠牲者」」(60頁)については、わたしの祖父は赤紙一枚で召集されて南方にやられて終戦までなんとか生き延びたものの引揚船を待ってる間にマラリアに感染して亡くなった。ので、正規の「戦死」でなく、まあ「名誉戦死」というか「準戦死」みたいなものなのだが、それでも祖父の妹であるうちのばあちゃんの話など聞いてると、「戦死」というより「戦争の犠牲者」という感じであった。ので、ここで書かれているような、「ネイビーシールズ」に出てきたみたいな立派な「戦死」というのをいまひとつイメージできない。というわけで、今の日本人のイメージする「戦争で死ぬ」ということはたいがい、年寄りとかから聞いたり本で読んだりドラマや映画で見たりした「赤紙一枚で兵隊とられて」という「犠牲者」のイメージだと思うのだ。



『涼宮ハルヒの溜息』 谷川流 角川スニーカー文庫

図書館。
涼宮ハルヒシリーズ第二作。
文化祭向けて自主制作映画を作ろうとして、ハルヒの箍がはずれかける話。
だが、たるくてかなり流し読み。
その後出た短編集『退屈』は、最初の野球の話でもういいやーになり、その後は読まずに返却。
ネットで調べたところ、第三作以後から面白くなるらしいみたいなことが書いてあったけど…、ほんと?



『保科正之の一生』 三戸岡道夫 栄光出版社

図書館。
前述の『扉守』がすごい好きなたちの話だったので、光岡百合の他のも読んでみようと、中図書館開架の「み」のとこを見に行って、出くわした本。
子供向け偉人伝みたいな表紙。中身も、保科正之という「偉人」の一生をよいエピソードを中心にあっけらからんと描いた、読んでて実に気持ちのいい伝記であった。これ、上手に膨らませたら、大河ドラマに十分なるわー。
ところでわたしが「保科正之」という人名を知ったのは小学生のとき、月曜夜八時4チャンネル(は大阪ではTBS系列のMBS)のナショナル劇場で放送された「江戸を斬る 梓右近捕物帳」であった。主役の梓右近さまは、保科正之の双子の弟。だが、なにしろ小学生なので、保科正之という人が将軍さまとどんな関係なのかもよくわからないまま観ていたと思う。わからないながらも面白くて、竹脇無我の梓右近さまおよび保科正之さまもステキでステキで、もっぺん観たくてたまらなかったのだが、DVD化もされず、数年前のホームテレビチャンネルの再放送も見逃し、ハエタカのようにさらなる再放送を待っていた。無我さまが亡くなられたときも「これで再放送されるかも…」などと鬼畜なことを考えました。ごめんなさい、ごめんなさい、無我さま。

それが、
再放送されるんですーーーっっっ!!!

再来月からBS-TBSで
再放送されるんですーっっっ!!!

これですっ!!!
嬉しい、嬉しすぎる、絶対フルコンするぜっ!!!



『誰も寝てはならぬ』16 サライネス 講談社

新品購入。
シモヤナギさんの姪ごさんがすもうとりと婚約してしまった、どひゃー。
それ以外はいつもどおりのゆるゆるだらだら♪


『風神秘抄』 萩原規子 徳間書店

図書館。
米朝さんのCDを借りにひさしぶりに東図書館に行ったとき、開架でみつけた。
萩原規子は『西の善き魔女』シリーズを読んだきりだったが、タイトルに惹かれ、あらすじ見てみたら面白そうだった。
時は平安時代末期。平家が隆盛を極める少し前。
源氏方の若い坂東武者草太郎。不思議な笛の才を持ち、また烏の言葉を解する彼が、戦に破れ、敗走し、不思議な舞を舞う遊女糸世と知り合い、政治に巻き込まれ、「鳥の王」と連れとなり、糸世を喪い、再び取り戻す物語。
後白河上皇のキャラの立て方がステキだった。
これとは別に勾玉三部作なるシリーズもあるらしいので、そっちも読もう、そうしよう。



『数学の秘密の本棚』 イアン・スチュアート(訳:水谷淳) ソフトバンク

図書館。
先月読んだ『数学の秘密の宝箱』の前作。
「白い尾の猫」(32頁)ですが、ジョーンズ夫人が飼ってる猫はスミス夫人が飼ってる猫より「20匹多い」とあるだけで、スミス夫人の猫が「20匹未満」とはどこにも書いてないと思うんですが。

プラステック数(2つ前と3つ前の数の和になっている数列)(102頁)はこれで初めて知った。


『ばんば憑き』 宮部みゆき 角川書店

図書館。
江戸もの短編集。
「坊主の壺」「お文の影」「博打眼」「討債鬼」「ばんば憑き」「野槌の墓」の六編入り。
「討債鬼」には三島屋シリーズの「あんじゅう」からレギュラーになった利一郎や行然、利一郎の師匠の新左衛門やその奥様の初音さま、金太・捨松・良介の悪がきトリオが登場。三島屋以前のお話。

「お文の影」と「野槌の墓」はどちらも虐待されて殺された子供の話がでてくるが、表題作「ばんば憑き」以外は、せつなかったりしみじみさせられたりはしても気持ちのいい結末の話だった。


『日暮らし』上下 宮部みゆき 講談社

図書館。
『ばんば憑き』を読んで、『三島屋』のほうを読み返したくなり、図書館行ったら(三島屋シリーズ手元に置こうと思ってまだ買ってないのであった)、上記の利一郎さんたちが出てくる「続」と一緒にこれが並んでいた。
『おまえさん』は予約しているがまだまだ順番回ってこないと思うけど、記憶を新しくしとこうと思って借りて帰ったら…。
『ばんば憑き』の「お文の影」、あれ、「ぼんくら」シリーズの番外編だったのかー。
え、こんなに記憶にないなんて、わたし、ひょっとして第一作の「ぼんくら」も読んでなかったりする?とこの本読み月記内を検索してみたらない、けど、なんか記憶の隅っこにひっかかってると思って、エクセルで付けてる読書録も見返して見たら、あらまー、2000年の5月に読んでたわー。
上巻に「おまんま」「嫌いの虫」「子盗り鬼」「なけなし三昧」の短編四本に「日暮らし」の最初が載ってて、下巻が95%まで「日暮らし」の続きで、最後に「鬼は外、福は内」というエピローグのような短編が載ってる、変則的な上下巻。

『ばんば憑き』の「お文の影」でもかわいらしかったおでこさんがこっちでもかわいらしかった。
弓之介とおでこさんの仲良しぶりが微笑ましかった。
お六につきまとうストーカー孫六がすげー怖かった。
「おまんま」でおでこさんに嫌なことを言う植木職人ってひょっとして孫六だったのかな?

最後の最後、平四郎が幻術一座の正体に気づくとこ、気持ちよかったー。
そんで、葵さんって結局、おふじに殺されそうになったあと、どこでどうしてたの? そんでなんで佐吉を連れてかなかったの?





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