本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス



『怪談』 柳広司 光文社

図書館。
「雪おんな」「ろくろ首」「むじな」「食人鬼」「鏡と鐘」「耳なし芳一」の六編入り。
どれもなんかいまいちで、「ゾーッ」とはさせてもらえなかった。



『パルテノン アクロポリスを巡る三つの物語』 柳広司 実業之日本社

図書館。
デルボイの巫女アリストニケが主人公の「巫女」、
対ペルシア戦争の英雄でありながら、戦後アテナイで裁判にかけられ、判決を待たずにペルシアに逃亡したテミクトクレスについての「テミストクレス案」、
パルテノン建設から対スパルタ戦争敗北までの「パルテノン」の三作に、
「私」が初めてギリシアを訪れたときの「はじめに」と、
その「はじめに」に登場したギリシアのおっちゃんから届いた手紙で終わる「おわりに」付。
「巫女」と「テミストクレス案」は、どっちもげっつい面白かった。
一番長い話だった「パルテノン」は途中だれたが、ペリクレスの死の間際の語りに、
都市国家ポリスは一握りの支配者のものではない。いや、民主制においては支配者の概念そのものが失われる。そこにはただ、公共のことを執り行う者と、それを監視するものだけが存在し、民主制の完成とはつまり、そのために必要な手続きのことなのだ」(338頁より無断転載)
ぞくぞくさせられた。
そして「はじめに」でのニコラスの語りにも。
今も世界じゅうで、そしていろいろな分野で、ギリシアで生み出されたものは、現役で使われている。
が、それらをギリシアが生み出し終えたのは、2500年も前のことだということに。
(ローマに征服されてからつい最近の金融危機の間のギリシアの出来事でわたしが知っているのは、花郁悠紀子の「マルガリテース」(『夢ゆり育て』 秋田書店)で読んだ、1973年に王政→共和制に移行したことくらい)

(てか、いつ頃からかは知らないけど、それまでは王政だったのね、ギリシア)


『虹のまちの想い出』 光原百合著 鯰江光二絵 小原孝演奏 PHP

図書館。
ウィリアム・ギロックというピアノのための練習曲をたくさん書いた作曲家の曲に、光原百合がお話を、鯰江光二が絵を、つけたもの。
小原孝というピアニストが元の曲を弾いたCD付。
「森のざわめき」「海の風景」「十月の朝」「荒れ果てた舞踏室」「伝説」「間奏曲」「人魚の歌」「夏の嵐」「色あせた手紙」「とんぼ」「月の光」「秋のスケッチ」「中国人の行列」「冬の風景」「セレナーデ」「はちどり」「ダイアナの泉」「まぼろしの騎士」「飛翔」「音もなく降る雪」「夜想曲」「夜の旅行」「なつかしいヴァレンタイン」「魔女の猫」「想い出」の25編入り。
阿保美代を思い出した。
お話の長さだけでなく、それぞれのお話に漂う雰囲気に。
100人の子供にこの本をプレゼントしたら、読まずにほったらかしたり、一度だけ読んでそのまま忘れたりする子が大半だと思うけど、たぶんひとりかふたり、本棚の大事な場所にこの本を置く子がいると思う。

ところで阿保美代、ほんとにもう本を出さないのかなあと、ひさびさにamazon調べてみたら、新しい本は出してなかったけど、絶版している既刊、どれもいい値がついていた。いま一番高いのは『ルフラン』で6823円、へーほー。


『ロマンス』 柳広司 文藝春秋

図書館。
時は昭和八年。舞台は東京。
奇妙な生い立ちの青年子爵麻倉清彬が主人公。
幼なじみでやはり華族の兄妹。清彬につきまとう特高の男。
舞台が華やかなわりには、なんともいえない閉塞感の漂うお話だった。
『ジョーカーゲーム』の結城がD機関を設立するのはこの四年後。
この話とあちらの話がどこかで袖摺りあってたりはしなかったのかな?



ダークバイオレッツDark Violets』 三上延 電撃文庫

図書館。
幽霊を見ることのできる紫の右目を黒いコンタクトで隠す男子高校生明良は、ある朝、幽霊ばかりを乗せたバスに乗ってしまい、右手に手袋をはめた少女御厨のおかげで、バスを降りることができる。
街を騒がせる連続殺人事件と、幽霊バスの関わり。
それを調べるうち、何十年か前によく似た事件が起こっていたこと、それを解決したのが自分たちの血縁だったことなどが明らかになっていく。
「目」と「手」の顔合わせ編。
7巻まで出てるらしい。



『隅の風景』 恩田陸 新潮社

図書館。
旅行エッセイ。
しょっぱなはイギリス。

現在イギリスではエラリー・クイーンは知名度がなく、まったく読まれていないというのを聞いてショックを受けた。いわゆるコージー・ミステリ(日本だと本格推理小説と言われるジャンル)が絶滅状態なので、アガサ・クリスティやシャーロック・ホームズでさえ、ドラマや映画でしか知らない人がほとんどらしい。(8頁より無断転載)

コージー・ミステリって素人探偵が出てくる話だと思ってたんですが。
wikiにも、
● 探偵役が警察官、私立探偵などの職業的捜査官ではなく素人であること
● 容疑者が極めて狭い範囲のコミュニティに属している
● 暴力表現を極力排除していること
ってあるし、だから、クリスティのミス・マープルものはコージーだけど、エラリー・クイーンやシャーロック・ホームズやポワロが出てくる話は「コージー」ではないと思ってたんだけど、違うの?
ドルリー・レーンはどうなんだろ? 確かに探偵でも警察でもないけど、あれをコージーと呼ぶのはなんかはばかられるわー。
と、最初でまずひっかかったが、イギリスでこれらがほとんど読まれていないというのはびっくり。
あ、でも、日本でも高木彬光とか、名前聞かなくなったもんなあ。
余談だが、わたし、福島の放射能のニュースとか見てると、高木彬光の、被曝して亡くなったダンナさんの骨を食べて自分も白血病になった奥さんの話とか思い出したりする。(短編集に入ってて、神津恭介ものだったと思う)
あと、チェスタトンがコナン・ドイルとバーナード・ショー、どっちも嫌っていた、というエピソードが出てきたが、チェスタトンが書いたものを読んで、彼がドイルをそんなに好きじゃなかったというか、買ってなかった気はしてたんだけど、ショーを嫌ってたというのは初耳だった。ショーその人やその思想、著作に対して、にくまれ口も叩くし、皮肉も言うけど、リスペクトのあるにくまれ口で皮肉みたいな感じがしてたんだけどなあ。
が、これ以後は特にひっかからず、楽しく読みました。
これ読んで、行ってみたい場所にあらたにチェコが加わりました。



『からくりからくさ』 梨木香歩 新潮社

図書館。
亡くなった祖母の家で暮らすことにした容子と、そこに下宿することになった三人の娘たち、マッサージの学校へ行っているマーガレット、美大で紡の研究をそている紀久とキリムを追う与希子。
そして、祖母を見送りにいったまま、いまだ目覚めぬりかさん。
娘たちの暮らし。蓉子が染めた糸を紀久と与希子が織るように、それぞれが持ち帰った物語がやがて一枚の布に織られていく様。
誰の言葉だったか忘れたが、小説を書くときの心得のひとつとして、「フィクションの中で起こる偶然は、現実に起こる偶然よりも、少なくしなければならない」というのがあった。
小説よりも奇なり、などとはいうが、確かになるほど、いろんな偶然は現実には溢れているわけだが、現実ならば許される偶然が小説だと「ご都合」な感じになり、物語のリアリティを損ねるものだ。
が、例外がある。
その偶然によって引き起こされるカタルシスが、その偶然が損ねてしまうリアリティを、えいやっと凌駕してしまうときだ。
この物語では、たまたま一緒に暮らすことになった四人の娘のうち三人までが、過去の因縁でつながっていたが、実に込み合った事情が丹念に描かれ、実に心地よかった。(が、込み入りすぎて、ときどき混乱した)
クルド族については、ニュースなどでときどき見聞きするものの、これを読むまでどのあたりのことなのかすら、いままでよくわからなかった。
そして、わたしはだいぶ前、ブータンでは孵化した繭を使って絹糸をとる、そのためブータンの絹織物は木綿のようにごわごわしている、という紹介をTVで見て、ブータンという国に畏敬の気持ちを抱いたのだが、この本によると、自国では中に幼虫のいる繭を使うことはないが、幼虫のいる繭で紡いだ絹糸を外国から輸入してはいるらしい。
でも、ブータンの人、全員が全員、それを肯としてるわけではないんだろうな。そういった糸を使うことにこだわらない人もいれば、そういう糸を使いたがらない人もいるんだろうな。



『りかさん』 梨木香歩 偕成社

図書館。
『からくりからくさ』の蓉子の少女時代。
『からくりからくさ』冒頭では死にたてほやほやだったおばあちゃまもまだお元気で、後に四人の娘たちが一緒に暮らすことになる家で暮らしていらっしゃる。
蓉子とりかさんの馴れ初め。りかさんと一緒に生活するようになってから蓉子が初めて気づくことになる、人形たちの軋轢やひっそりと抱えた秘密。
『からくりからくさ』で再会することになる登美子ちゃんも登場。
アメリカから親善のためにママー人形が日本に贈られたことは、バラエティ番組などで観たことがあったような気がするが、戦時中、こんなことになっていたとは知らなかった。
でも、いまこれ読んで「アホや」と思った中には、これからこれとは違う事情で違うターゲットなんだけど本質的には似たようなことが起こった場合、外側から見て校長先生や積極的に参加したように見える生徒たちみたいなことを気づかず平気でする人がいっぱいいると思うし、そういうわたしだってどうなるかわからない。そしてこの校長先生や生徒たち、彼らの記憶の中では、大半は自ら進んでそういうことをしたわけではないことになっていると思うのだ。
ところでうちらへんでは「沢庵」のことを「こうこ」と呼んでいた。切り方も拍子木に切るのがデフォルトだった。テレビドラマで横に薄くスライスしているのを見て、同じようにしてみたら、近所のおばちゃんに「そんな刑務所でするみたいな切り方して」と叱られた。そういや、切ったものを火にかけた鍋に入れるのに、まな板を鍋の上で傾けて包丁で落としてたら、「火の上で包丁使うたらミツクチの子ぉができるんやで」とも言われた。いま思い出した。
で、なんの話かというと、おばあちゃまがりかさんに添えたりかさんについての説明書のりかさんのお膳の作り方に「おこうこは鶴の小皿」(18頁参照)とあって、「おこうこ」を活字で読むのは初めてかも、と、すっごく嬉しかったのだった。


文庫版だけ付録「ミケルの庭」がついているというのを知り、そっちも借りてきた。
『からくりからくさ』より後の話で、マーガレットが産んだ娘ミケルが1歳になった頃の話だった。



『裏庭』 梨木香歩 理論社

図書館。
丘の麓のバーンズ屋敷。元はイギリス人の一家が住んでいたが、戦争が始まって一家はイギリスに帰り、その後一時期白人の男性がひとりで住んでいたがいつの間にかいなくなり、以来空き家となっているバーンズ屋敷。
屋敷は高い塀で囲われているが、塀に一箇所小さな穴があり、町で育ったものは幼い頃、屋敷の庭で遊んだ記憶を持つ。
照美は小さなレストランを営む両親と三人暮らし。双子の弟がいたが、まだ幼い頃、風邪をこじらせて亡くなった。
照美も幼い頃は、亡くなった弟と一緒に、バーンズ屋敷の庭で遊んだ。が、長らくそんなことを忘れていたが、友達のおじいちゃんからバーンズ屋敷にイギリス人一家が住んでいた頃の話、レイチェルとレベッカの姉妹のこと、妹のレベッカが一家に伝わる「裏庭」の庭守であった話などを聞かされる。
やがて照美はその「裏庭」に行き、冒険することになる、この冒険がメインなわけだが、この「裏庭」という場所がこじんまりとしてるんだか広いんだかよくわからない、イメージしにくい場所だった。
でも、イギリスに帰ったあと、結婚しないまま市長を務めたり、メイドのマーサとともにたくさんの養子を育てあげたレイチェルばあさんはステキだった。



『ピスタチオ』 梨木香歩 筑摩書房

図書館。
元出版社勤務、出版社をやめたあと知り合いがいたこともあってケニアに行き、そこで何年も暮らし、父の死を契機に日本に帰ってきて、フリーのライターをしている棚。
彼女が、ケニアの隣のウガンダを取材する仕事を持ち込まれたところに、ケニアにいた頃一度だけ会ったことのある民俗学者の出した現地の民話を集めた本と不思議な再会を果たし、ウガンダに行く話。最初の三分の一が日本での話で、あとの三分の二がウガンダの話。
この主人公の棚という女性に共感できず、できないままだらだらと読んだ。



『訪問者』 恩田陸 翔伝社

図書館。
湖畔の洋館。そこで暮らすのは三年前、湖で行方不明になった実業家朝霞千沙子の弟妹やその配偶者の老人たちと、幼い少女。そこに取材に現れた週刊誌の記者とカメラマン。が、実は亡くなった映画監督峠昌彦の友人で、その遺書を預る弁護士と昌彦と一緒に仕事していたカメラマン。弁護士とカメラマンはその夜洋館に泊まるが、翌朝、館の外で男の死体がみつかる。
いろんな謎がばらけたまんまで焦点が合わないまんま終わった感じ。



『ちはやふる』17 末次由紀 講談社

新品購入。
ついに新と詩暢が決勝戦で激突、新が勝利。
この戦い、読んでてほんと、わくわくどきどきぞくぞくしたー。
千早は指の手術、そんで富士崎と合同合宿。
桜沢先生、やっぱりステキー。



『BLLLY BAT』9 浦沢直樹(ストーリー共同制作:長崎尚志) 講談社

新品購入。
「BILLY BAT」では、アポロの月面着陸映像は地上のどこかで撮られたもの、映像捏造説のほうの立場をとるらしい。
スペースシャトルの周回高度は380km、国際宇宙ステーションで450kmほどらしい。較べて、地球から月までの距離は、地球から国際宇宙ステーションまでの距離の、およそ844倍の38万キロ。
いま振り返ってみれば、当時のテクノロジーで可能だった気がまったくしねえわな、確かに。
行き着けるまではなんとかなったとしても、帰ってこれる気はしねえわな。
月面着陸映像のために雇われる明智監督(ビジュアルは円谷英二そのまんま)、いかす。



『スゴライク・ザ・ブラッド4 蒼き魔女の迷宮』 三雲岳斗 電撃文庫

新品購入。
新キャラは古城の幼なじみの「ユウマ」。
暁兄妹の会話でその名前が登場した時点でビジュアルが中山優馬で固まってしまい、女の子と判明してからも修正ききませんでした。
でもまあ、優馬なので、特に問題はありませんでした。
波朧院フェスタで観光客で溢れる絃神市。それにあわせたかのように多発する空間の歪み。
古城と優麻の体が入れ替わるエクスキューズ、しびれたわ♪
いやー、この4巻、読み応えあった。あんなとこで終わってやがるが。
そんでいまだにようわからんのが、凪沙の正体。
あ、あと、序章での、ヴァトラーとラ・フォリアがプリキュア見ながら語り合うシーン、大好きー。



『A to Z』1、2、3 葉芝真己 幻冬舎

RP祐子蔵書。
サイテーカラオケ持込本だったが、コートダジュールなかもず店でフリータイムで入店して初めて「満室の場合は三時間まで」適用を受け(いつもより混んでる感じはしたが、いつもより遅めに入ったので、追い出されるなら先に入ったもん順だろうと油断してたから、びっくりしたー)、まだ読みかけたとこだったので借りて帰った。
「10-4」に出てきたのとよく似た潜入捜査専門の事務所に所属する捜査員の青年が主人公。
高校に生徒として潜入して捜査対象者を調査することになるのだが、その対象者が彼の定番悪夢の定番出演者の血まみれの男とそっくりで…、
で、その対象者といい感じだったが、くっつかないまま終わった。
ところでわたしはあんまり見た夢を覚えてないほうなのだが、覚えている夢の舞台はぜんぶで七箇所くらい、そのうち現実に行ったことのある場所は、定番悪夢「銃殺刑の順番を待つ」の小学校の校庭、わたしが小さい頃の市立病院の夜の廊下、改築前の市の斎場、の三つだが、「実家の近所っぽいがどこかわからない草っ原」「ものすごく入り組んだ作りのでっかい温泉旅館」のふたつと、具体的には思い出せないのだが夢で「ああ、またここか」と毎度思うことだけは覚えている残りふたつの場所は、夢には出てくるが知らない場所。ちょっと前に見た夢で「温泉旅館」といま思い出せない場所のひとつの位置関係がやっと判明し、夢の中で「へえへえへえー」とものすごくガッテンしたのだが、今はガッテンしたことしか思い出せない。



『千年鬼』 西條奈加 徳間書店

新品購入。
心に小さな闇を抱えかけたところに現れる三人の小鬼。小鬼は闇を抱えかけた人に食べ物をねだり、貰うとその人が知りたい過去が見える場所までその人を運ぶ。
寝たきりの父親を抱えて通い奉公している少女が事情を知らぬ仲間からいじめられる「三粒の豆」、恋した男が何者かに殺され、小鬼の力で犯人を知った姫が、犯人を側仕えとしていたぶり、鬼姫と呼ばれるようになる「鬼姫さま」、針売りのおばばになついていた二人の娘のかたほうが殺され、小鬼の力でおばばが真実を知るとともに忘れていた自分の真実も思い出すことになる「忘れの呪文」、大昔、村を飢饉から救ったという言い伝えのある鬼の隻腕、ひどい凶作についに子を始末するところまで追い詰められた村人が、その昔、その鬼がいかにして村を救ったかを見たいと望む「隻腕の鬼」、
が、「小鬼と民」で、小鬼が遠見の仕事をしだす前の話が語られ、「千年の罪」で、なにゆえ小鬼が遠見の仕事を始めることになったかが語られ、最後の「千年の鬼」で、小鬼の千年の仕事の結末と、さらにその後が語られる。
「鬼姫さま」、実に気持ちのよい話だった。「隻腕の鬼」と「小鬼と民」はどちらも命のぎりぎりの飢饉の話で辛かった。
「千年の鬼」の最後の最後の結末は、ほんとうにほんとうに美しかった。
ところで「生まれ変わり」だが、ヴォネガットの短編で「死んだ時点より過去への転生」という結末のある話(ヴォネガットだったとずっと思ってて、短編だったと思うから『モンキー・ハウスへようこそ』に収録されてたと思ってたんだけど、いま探したらそれらしい話がみつからない。ほんとにヴォネガットだったのかな?)にまず出会い、死ぬたびにその生で縁のあった人に次から次へと生まれ変わっていく藤原京の『フロリカ 時の鎖』(集英社スーパーファンタジー文庫)を後に読んで以来、ひょっとしたらこの世のすべての命、過去に生まれて死んだもの、未来に生まれて死ぬもの、人、動物だけでなく、木や草の植物、ウィルスや細菌にいたるまでのすべての命は、丹念にたどっていけば一本の糸となるのではないか、などとひそかに思っている。
家族や友人たち、うちの猫たちや、わたしがさっき食べた豚や牛、野菜や果物、わたしの中で棲息しているさまざまな菌やウィルス、それらのすべてが、何億何兆生前のわたしの前世かもしれないし、何兆何京生後にわたしが生まれ変わったものかもしれない。
そして生まれ変わり続ければ、わたしたちすべてはいつかは紀元前五世紀のインドで釈迦族の王子として生まれ、生まれ変わり続けることをついに終わらせる時が来るのでは、と。



『おまえさん』上下 宮部みゆき 講談社

図書館。
『ぼんくら』『日暮らし』に続く、ぼんくら同心井筒平四郎と愉快な仲間たちのお話。
辻斬りにあった身元不明の男。夜中、自宅で斬り殺された薬屋の主人。
あらたに仲間入りした本宮源右衛門の眼力で、同一犯の犯行ということがわかり、彼らのつながりを調べるうちに、平四郎たちは被害者たちが昔に犯したある罪を知ることになり…。
源右衛門さんがお徳屋の二階に落ち着くことになり、すごく嬉しかった。あと初登場といえば、弓ノ介の兄、三人いる中の一番下の兄も三作目にしてついに登場、できすぎなくらいのいい男。
おでこさんのお母さんの顛末については、レジナルド・ヒルの『薔薇は死を夢見る』のパトリック・アルダーマンをちょっと思い出した。
そういえば、赤江瀑が先日亡くなり、ネットの訃報記事についてた「今年亡くなった作家」リンクをポチっとして、レジナルド・ヒルが今年一月に亡くなっていたことを初めて知った。
ジョー・シックススミスのシリーズはこの先出るかどうかは別にして未訳の作品が残ってるけど、ダルジールは『午前零時のフーガ』、本国では2009年に出た『Midnight Fugue』が読み納めだったのね…。

寂しい………。


『不思議な羅針盤』 梨木香歩 文化出版局

図書館。
エッセイ集。
だが、「あるある」とかそういうことをぜんぜん感じないまま、なんとなーく読み始めて、なんとなーく読み終わってしまった。



『マンガ 二人でつくる基本料理ができる本』 阿保美代 原作:重金碩之 講談社

古本購入。
阿保美代がこんな本を出してたことを知ってから数年、光岡百合の『虹のまちの想い出』を今月読み、なんかすごく阿保美代っぽいと思い、阿保美代を読み返して、阿保美代の本でこれだけ持ってないことを思い出し、amazonのマーケットプレイスに出てた中から一番安かったのをポチっとな。
(これ以外は全部定価越え設定だったが、これだけは定価以下で買えた)
お風呂屋さんの息子に嫁いだ料理レベル1の若いお嫁さんが、ちょっとづつ料理を覚えていくという形式の、お料理の基本指南マンガ。
いまどこでどうしてるのかな、阿保美代。
ファンタジーはもう描かないのかな、阿保美代。
そういえば、今回読み返して、「レミンカイネン」って誰?とひさびさに思い、ググったら簡単にみつかった。フィンランドの叙事詩の登場人物だったのか。



『封殺鬼 クダンノ如シ』上、中 霜島ケイ 小学館ルルル文庫

新品購入。
上は3月、中は4月に出ていた。
今月やっと気づき、おかげで二冊一気読み。
桐子とうこさま女学校へ通う編。
武見四郎が本家に婿入りするまではきっと書いてくれると思うのだが、新婚編まであるのかな?
桐子さまといえば、去年九月日生劇場で毎日結婚詐欺の被害に遭ってた「桐子きりこさん」、封殺鬼ファンがその頃twitterで「桐子」検索したら、なんかよくわからない桐子さんがいっぱい見つかって、頭の中をはてなマークだらけにしたりしたのかな?
で、下巻はいつ頃出るのかな?



『百鬼夜行抄』21 今市子 ソノラマコミックス

新品購入。
実はこのシリーズ、15巻くらいから、もういいか、これー、みたいな気がしてるのだが、新刊出たらつい買ってしまう。
で、やっぱり買ってしまった。



『沼地のある森を抜けて』 梨木香歩 新潮社

図書館。
亡くなった独身の叔母からマンションと曰く付のぬか床を受け継いだ久美。
しょうがなく、毎日かき混ぜ、野菜を漬けていたら、やがてぬか床の中に入れた覚えもない卵が出現し…。
最初はファンタジックな不思議の話かと思ったら、どんどこSFになっていった。久美が理系と設定されていたこともあり、それもごくごく自然に。
クライマックスの、ぬか床が沼地に戻されるシーンは、いまいちなんか、イメージしにくかった。
最初のほうに、ひょっこり晩ご飯を食べにきた息子とその恋人に、特に迷惑がりもせず普通に応対しながら、自分と夫と息子の分だけおかずを作り、息子の恋人にはご飯だけ出し、息子が自分のおかずを恋人に分けると突然うろたえる母親の話が出てくる。
息子の恋人にはおかずを用意しなくて当然だと思うその心理がまず怖く、息子が恋人に自分のおかずを分けるという可能性をまったく想定してなかったこともすごく怖かった。



『Landreaall』20 おがきちか 一迅社

新品購入。
限定版なので、描きおろしの番外編付。
アプローゼの語りの部分、ステキだったー。アプローゼがアンスランとめんち切りあうとこも大好き。
この語り部分で「眉雪びせつ」というゆかしい言葉を初めて知った。
フィルの手伝いをしたくてうずうずしていた従騎士たちと、それを知らず迷った末にDXのためにフィルが彼らに頭をさげに行くとこも大好き。
従騎士たちのとこを読んでて、スパーホークシリーズのクリクとカラードを思い出した。
メイアンディアは実は婚約中だと判明、DXは華々しく失恋するは、相手はレイ・サークとの会話に出ていた「大老せんせい」だは、クエンティンが数巻前に訪ねてた相手は亡き王女の娘だは。
その亡き王女の娘は祖母である前王の王妃がリゲインの従姉だったから血がつながりがないわけではないがなぜだかDXに似ているのは、なんか理由があるのかな?
ところでフィル主演の番外編によると、従騎士の訓練を受けるための支度金は30万エクウス。この世界の通貨のエクウスって、1円=1エクウスくらいなのかな?






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