本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス



『薄紅天女』 萩原規子 徳間書店

図書館。
勾玉三部作最終巻。
前二作より時代はぐっとくだって、奈良時代末期、桓武天皇の御世。
第一部の始まりは武蔵国。長の息子と孫でありながら同い年で双子のように育った藤太と阿高。ふたりが阿高の母の故郷を訪ね、母の一族から母の宿命を聞かされ、母の一族と袂を分かち、坂上田村麻呂と合流するまで。
第二部は都。桓武天皇の内親王苑上は、弟賀美野と入れ替わり、男の子に化けて、東北からやってくる「災い」を討つために一軍を率いる男装の藤原仲成(薬子)と行をともにするが、闇に襲われはぐれたところを阿高に助けられる。
都を侵蝕する怨の闇。
阿高たちとともに都に戻った苑上は、その闇の源を知り、それと対峙することになる。
桓武天皇の母高野新笠が渡来人系の人であることを初めて知ったときはびっくりした。
今上帝は桓武天皇の直系卑属なので、アラゴルンの中のマイアールおよびエルフの血くらいには、今上帝にも大陸の血が混ざってるのね。
(とか、ネットのにぎやかな場所で口にしたら、途端にヒステリックな集中砲火をくらうんだろうなあ)
藤太と阿高、どちらも長身の美しい若者だというので、ついついツインタワーのビジュアルで読みはじめてしまいました。阿高は茶色っぽい癖毛だというので、阿高が流星(大)。黒髪の藤太がのんちゃん。が、読み進めたらキャラ逆だったのでちょっと困りました。
威勢だけはいいもののお姫さま育ちな苑上が、都を出、阿高たちと合流してから、じわじわたくましくなっていくさまも楽しかった。
都での、この後の悲劇を予感させない終わり方も美しかったなあ。

しかし、これらより『西の善き魔女』のほうが拙かった気がしたので、書かれた順番はこっちがあとだと思ったら、こっちのほうが先だったとは。


『ナニワ・モンスター』 海堂尊 新潮社

図書館。
操作された新型インフルエンザ騒動に始まり、時間は遡って東京特捜部の検事さんが大阪に移動、大鉈を振るう話となり、さらに橋下大阪府府知事を思わせる浪速府知事がスカラムーシュ彦根の案内で医療の楽園のような九州の小さな村や東北をめぐる。
マスメディアを利用した情報操作、関東とその他の地域の経済格差、そしてやはりAiセンターをめぐる確執。
最後は天王寺のじいちゃんせんせのとこに話が戻ると思ったんだが、戻らなかったな。
マスメディアといえば、最近の竹島や尖閣諸島についての報道見てると、太平洋戦争前の「鬼畜米英」というコマーシャルを思い出すわー。マスメディアなんて、無責任に踊らせるだけで、責任なんて取りゃしないんだから、安易に踊らさせられてんなよ、賢くなろうよー。



『ひかりの剣』 海堂尊 文藝春秋

図書館。
いますぐ読めた海堂尊フィクション作品最後の一冊。
いま現在、堺市図書館、『ケルベロスの肖像』は51人、『極北ラプソディ』は119人、『玉村警部補の災難』は218人待ち。
『ブラックペアン』より少し前から途中くらいまでの話。
清川吾郎って誰だっけ?と思ったら、『ジーン・ワルツ』&『マドンナ・ヴェルデ』のあいつかー。
『夢見る黄金地球儀』も読み直してみた。『ナイチンゲール』の小夜と牧村くんが出演、ブラックドアに出つつ、4Sエージェンシーというリスク回避屋をしていた。さらに『アリアドネ』もぱらぱら読み直してみたところ、これにも出てたわ、4S。しかも城崎が仕切ってたわ。そういや、城崎って実は『螺鈿迷宮』で滅んだ桜宮家の長男だったけど、暗躍中の妹小百合とは未読作品でもう遭遇してんのかな?



『風の王国 王杖の守者』 毛利志生子 集英社コバルト文庫

新品購入。
一年一ヶ月ぶりの毛利志生子新刊。
あとがきに何か理由が記されてるかと思ったが、なんもなし。
中国のお姫様が嫁した先のチベットで活躍する話なのが、昨今の状況的にまずかった?とか思ったが、そんなまさか太平洋戦争の頃の統制みたいな間抜けなことはいまどきないよな、あはははは。
翠蘭&ラセルご一行さまネパール入り編。
しかし、日本国内の都の移動だけでも、あんなとこからあんなとこまでよく引っ越したもんだと思っていたが、大陸ともなると同盟国に行くだけでも、こんだけ長旅しないといけなかったんだなあ。よく同盟なんかできたもんだなあ。
途中で全滅したりした使節団とかもいたんだろうなあ。

次はもっと早く出してねー。まさか今度も一年待たされたりしないよねー。


『東京の台所 北京の台所』 ウー・ウェン 岩崎書店

図書館。
北京生まれ、大学卒業し、しばらく公営企業につとめたあと日本に来て、日本人と結婚した著者の、中国時代の話や日本に来てからの話。
これを読み、ほんとに日本人って限られたものを極めるのが好きなんだなあと思った。
日本で中国料理店を名乗る店のメニューって、中国料理のほんの一部なんだよねー。
そして、もっと他の料理をメニューに載せても、大半の保守的な日本人は注文しないんだろうねー。
とか思ったのは、輸入食材漁りが楽しみで行ってたカルフール光明池店がいつの間にかふつーのスーパーになってしまい、くるみの量り売りはなくなるは、輸入米も消えるは、カッペリーニですら廃版になってたのに、ひとり憤っていたせいか。
料理本はいっぱい出されているみたいだけど、エッセイはこれだけかな? 他にもあるのかな?
とりあえずレシピ本とかで文章入ってそうなのを探してみよう。



『よろずのことに気をつけよ』 川瀬七緒 講談社

図書館。
twitterで図子慧がこの次に出た『147ヘルツの警鐘・法医昆虫学捜査官』読了とツイートしてて、図書館探したら、『147ヘルツの警鐘』のほうは10人待ちくらいだったので、すぐに借りられるデビュー作のこっちを借りてきた。
祖父が奇妙な殺され方をした若い女性が、さらに軒下に謎の呪符を見つけ、伝手をたどって呪いを専門にする文化人類学者に助けを求める話。
読み終えて思い出してみれば、あれこれいろいろ無理のある話なのだが、読んでいる間はあんまり気にせず読んでしまった。そして、読み終えて思い出してみれば何がそんなに怖かったんだ?と不思議だが、あちこちなんかすっごく怖かった。わたしはホラーや怪奇小説はほとんど怖くない奴なので(今まで読んで一番怖かったのは『遠野物語』)、これは珍しい。

わりと最初のほうに「呪禁師」という言葉が出てくる。わたしがこの言葉を知ったのは毛利志生子の金糸雀ファイルシリーズだった。いますっごく読み返したい。


『薔薇密室』 皆川博子 講談社

図書館。
これ、書いた人を知らずに読んだら、海外作品の翻訳ものだと信じて疑わなかったと思う。
第一次世界大戦前の東欧、ポーランドの僧院の建物を利用した感化院の所長の息子の一人称として始まった小説は、ドイツがポーランドに侵攻する直前のワルシャワに住む十代の少女の一人称に引き継がれ、さらに僧院に住み薔薇の世話をする謎の男の一人称に引き継がれる。
薔薇の木に養われる人間。育たない少年。ヒムラー。映写技師。青いリボン。樽のように太った尼僧。
どこまでが真実で、どこまでがナタニエル・ホフマンが編んだ物語なのか、混乱させられたまま、結末はすっきりと冒頭のプロローグへとつながる。
読み応えたっぷりの不思議な物語。







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