本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス



『残り全部バケーション』 伊坂幸太郎 集英社

図書館。
連作短編集。
人を脅すのを主な業務とする仕事を辞めようとした岡田くんが解散することになった家族と知り合う「残り全部バケーション」、岡田くんが足を洗おうと決意するより以前、妻と息子を暴力で支配していた男を騙くらかして改心させようとする「タキオン作戦」、毒島という男の下を抜けて独立しようとした罪を岡田くんになすりつけた兄貴分の溝口と溝口があらたに組んである女性を連れ去る仕事を命じられるのだが、盗んだ車の中になぜか大金があり…な間抜けで愉快な「検問」、“残り全部バケーション”という言葉のルーツが語られる小学生の頃の岡田くんと同級生の「小さな兵隊」、そして岡田くんが残した言葉をずっとずっと温め続けた溝口が大活躍の「飛べても8分」の、五編入り。

誰かの一言がずっとその人を弱らせたり、その一言にあらがいたいがためにねじれまがっていくこともあれば、いくこともあれば、誰かの一言が長い時間をかけてその人をいいほうへ変えていくこともある。
そんな
最後のお話、溝口の真意が明らかになること、ほんっと気持ちよかった。


『玉村警部補の災難』 海堂尊 宝島社

図書館。
不定愁訴外来を訪れた玉村警部補がここ数年桜宮署管轄で起きた事件のレポートの仕上げに田口からその事件についての話を聞くという形をとった連作短編集。
その導入部が「0」で、事件が「1」から「4」。
「3」まではたらたらと惰性で読んだが、死体専門の歯科医の一人称と警察側の三人称で交互に進む「4」はむっちゃくちゃ面白かった。



 『ストライク・ザ・ブラッド7 焔光の夜伯』 三雲岳斗 電撃文庫

新品購入。
暁古城が第四真祖となったのは、中三の終わり頃。
が、今回第一章で明らかになった第四真祖との出会いは三年前。
その間にいったい何があったのかはいまだ不明のまま。
そして第二章ではついに第三真祖登場。そして第四真祖とは何者であるかがついに明らかになった第三章。
暁兄妹の父がついに登場したり、矢瀬のバックグラウンドが語られたり、ほかにもなんかすっごく盛りだくさんぎゅーづめだった気がする7巻。
続き、早くーーーーーーーー。


ところで吸血鬼ものといえばわたしの年代でまず浮かぶのは萩尾望都の『ポーの一族』だが、老いないはずのヴァンパネラなのに大老ポーとそのつれあいの老ハンナは年寄りの姿であった。
「わたしたちはローマの灯を見、フィレンツエの水を渡り、ともに咲けるばらを追った。一族のいい血をふやしながら」(2巻57頁より無断転載)の二千年近くを、このふたりはこの老いた姿ですごしてきたのか、それとも普通の人間よりものすごく老化のスピードが遅いだけか、後者ならばエドガーがもし5巻最後で消えておらず根気よく永らえ続ければ、いつかは青年の姿になるのか。
こないだの「ラジオシアター文学の扉」で朴?美が『ポーの一族』の話してて、それ聴いててふと思い出したもんで。



『真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ』 大沼紀子 ポプラ文庫

図書館。
4月末から始まるNHK-BSドラマ「真夜中のパン屋さん」の原作。
照史がこのドラマに出ることが決まるまで、この本のことを全然知りませんでした。出演発表あってtwitter内を検索し、すごく人気のあるシリーズだということを初めて知りました。
原作ファンの方々が照史が扮することになった弘基は誰がやるのかわくわくしてらっしゃるので、弘基ってどんなキャラと調べてみたら。
照史でごめんなさい、ごめんなさい、原作ファンのみなさん。
でも、すっごくいい子なんですよ、照史ー。ほんとにほんとにいい子なんですよーーー。
とひとりひとりに謝ってまわりたい衝動に………。
しかし、なんで暮林が滝沢秀明で、弘基が照史…。
なんでこんな、原作ファンに喧嘩売るようなキャスティングを…。
テレビ局の考えることってわかんねー。
で、とりあえず原作予約したら、思ったより早く順番まわってきたんですが。
タキオさんやる暮林が関西弁で、照史扮する弘基が標準語。
テレビ局の考えることってわかんねー。



『ケルトの国のごちそうめぐり』 松井ゆみ子 河出書房新社

図書館。
料理本の棚から拾ってきた本。
アイルランド人男性と結婚して一年の半分をアイルランドで暮らす著者が、アイルランドの料理やいろんな催しや風習や人となりを綴ったもの。
アイルランドで住まっているのはキルデアの隣町だそうだ。
キルデアといえばフィデルマ。ピーター・トレメインのフィデルマが所属する教会がある場所。
で、読んでてすっごく嬉しくなった。そして読んでいる最中、「ちちんぷいぷい」の海外取材シリーズがちょうどアイルランドだったりしたのもタイムリーだった。
写真もすっごく美味しそう。
行ってみたいな、アイルランド。



『雨柳堂夢咄 其の十四』 波津彬子 朝日新聞出版

新品購入。
二年数ヶ月ぶりの雨柳堂新刊〜♪♪♪
八話にあとがきと身辺漫画付。
天神さまの話と、冬至の夜の茶会の話と、お茶の若宗匠の話、むちゃくちゃ好き。
特に冬至の茶会の話、こんな話、大大大好き。

この茶会の亭主の翁は、やっぱり大大大好きな其の八の「むさし野」の翁ですよね。


 『しあわせなミステリー』 伊坂幸太郎、中山七里、柚月裕子、吉川英梨 宝島社

図書館。
アンソロジー。
伊坂幸太郎「BEE」、中山七里「二百十日の風」、柚月裕子「心を掬う」、吉川英梨「18番テーブルの幽霊」の四編入り。
「BEE」は恐妻家の殺し屋がスズメバチと戦う話。これ、思い出しちゃった。去年、泣きながらベランダのアシナガバチの巣を片付けたのも思い出しちゃった。
伊坂幸太郎目当てに借りたが、というか、予約の順番きて本見るまでアンソロジーということもしらなかったが、「二百十日の風」「心を掬う」「18番テーブルの幽霊」もけっこう面白かった。それぞれシリーズものを書いてる作家らしいので、今度読んでみよ。



 『最果てアーケード』 小川洋子 講談社

図書館。
大通りに面しているが目立たない入り口、左右に数軒店があるだけの、薄暗く、通りも狭い、小さな小さな商店街。
奥は行き止まり、小さな中庭がある。
そんな場所を借りて店を営むのは、主に中古のレースを扱うレース専門店や義眼屋さん、手紙にかかわる文具に限定した文具屋さん、勲章屋さん、軟膏屋さん、ドアノブだけを商うドアノブ屋さん、一種類のドーナツしか作らないドーナツ屋さん等。
そんな夢のように不思議で夢のように素敵な場所を舞台にした連作短編集。
読んでいる間じゅう、この商店街の大家さんの娘として生まれ、ここで育ち、父亡きあとはここを受け継いだ「私」が、うらやましくてうらやましくてしょうがなかった。
一番心に残ったフレーズは、「百科事典少女」に出てきたRちゃん、彼女の小学校での状態を「私」が評した「いつでも堂々と、一人ぼっちでいた」という言葉。
「私」の愛犬ベベが次第に老いていきながらも、老いたところまでしか語られなかったことに、とてもほっとした。

百科事典といえば、うちは本を買ってくれないうちだったのに、小学校中学年のころだったか、いきなりうちに百科事典が来た。
どこで買ったのか、なんで買ったのか、そういえば親に尋ねてみたことなかったわ。
その百科事典、あいうえお順でなく、各巻ごとにテーマがある百科事典で、適当に拾い読みはしたけれど、どうせ買ってくれるんなら普通のあいうえお順の百科事典がよかったのに…と思った覚えがある。



 『レディシノワズリ』2 波津彬子 小学館

新品購入。
波津彬子の新刊を同じ月に二冊読める幸せ〜♪
1920年〜30年代にかけてのイギリスと当時イギリスで流行した
中国趣味シノワズリを題材に、中産階級の青年と彼が出会い続ける謎の女性を絡めた連作集の第二巻。
時系列どおりにお話が進まないのがかえって気持ちよく、この巻も実に心地のよい話揃いだった。



身毒丸』 折口信夫 KINDLE
死者の書』 折口信夫 KINDLE


Kindleでどちらも0円。
折口信夫の『死者の書』、昔、図書館で読みかけて最初のとこで投げ出したきりだったよな、とふと思い出し、Kindle探したらあった。0円だった。
『身毒丸』はそのときにみつけた。舞台とか見たことなくて、あらすじすら知らなかった。これが舞台とかの「身毒丸」の原作?と思って舞台「身毒丸」のあらすじ読んだら、ぜんぜん違う話であった。
田楽法師の子として生まれた身毒丸。
その父方の血筋に伝わる癩病。九つのときの父の失踪。父のあとをついで一座を率いることになった頭の身毒丸への執着。村から村へと旅に暮らす田楽師の暮らし。
なんというか、けったいな話であった。
遠里小野おりおのだの、住吉だの、家原寺えばらじだの、地元の地名が出てくるのが楽しかった。
瓜生野というのは知らず、調べてみたら、
瓜破うりわりの古名であった。住吉神宮寺というのも知らなかったが、調べてみたら、明治の廃仏毀釈で廃寺になったらしいが、住吉にあったけっこう大きなお寺だったらしい。
最後、なんだかよくわからんまま終わってしまい、そのあとに著者あとがき。「高安長者伝説」とやらに材をとった話らしいが、「高安長者伝説」でググるとwikiの「俊徳丸」の項がトップでヒット。
『死者の書』のほうは、最初の死者らしい人の繰言のとこで昔はギブした。そんで、なんでかわからんが、大津皇子と大伯皇女の話だと思い込んでいた。読んでみたらぜんぜん違った。そして半分以上読んだとこで初めて、中将姫伝説の話と気づいた。
藤原不比等のひ孫、藤原四兄弟の長男の孫にあたる、深窓の令嬢。皇室に嫁ぐか、神に仕える神子となるか、そんなやんごとなき令嬢が、家人も気づかぬうちに屋敷を出奔、気がつけば当麻寺にたどりついており、女人禁制の寺の敷地を汚した罪をあがなうために滞在した家で、やがて蓮糸をつむぎ、つむいだ糸で布を織り、織った布を縫い上げて絵を描き、いわゆる「当麻寺曼荼羅」を作るお話。
合間に大伴家持とかも登場する。
自分でもなんでだかわからんが、これ、すっげー面白かった。
ちなみに「当麻寺」に「たぎまでら」とルビ振ってあり、おかんがゲートの試合でちょくちょく行く奈良の「たいまでら」とおんなじ寺と、なかなか気づかなかった。


 『真夜中のパン屋さん2 午前1時の恋泥棒』 大沼紀子 ポプラ文庫

図書館。
1巻は連作短編集だったが、2巻は弘基が昔つきあっていた女の子をめぐる長編。
パン屋の営業時間がなぜ夜中なのか、暮林と弘基がなぜパン屋を開くことになったのかの理由も明かされる。
が、美和子さんがなぜそんな時間に店を開けようと思ったのかは謎のまま。
斑目と綾乃ちゃんはうまくいくのかな?
 


 『アイルランドのおいしい毎日』 松井ゆみ子 東京書籍

図書館。
アイルランドの食事情の間々にアイルランド料理のレシピが挟まる愉しい本。
アイルランドのパンは醗酵させずに重曹で膨らませることが多いらしい。
うちにあるのは掃除用の重曹だけど、料理用の重曹と掃除用の重曹って成分違うのかな?



 『しろくまカフェ メロン味!』 ヒガアロハ 小学館

新品購入。
去年の二月に出てたのに、ぜんぜん気づいていなかった。
ブックスケジューラー、あんまりいっぱい著者名登録したら、立ち上げるたんびに一覧できるまでものすごく時間がかかるようになってしまい、いつしか使わなくなっていたのだ。ま、「三浦しをん」登録したら、まったく違う三浦さんが山ほどひっかかるようになったせいもあるが。
やっぱ使わなあかんわー。
で、慌てて注文しました。
シロクマさんがあいかわらずステキでした。グリズリー氏も大好き。コーヒー豆焙煎所のパートのエゾリスさんたちやペンギンどもやレッサーパンダさんも愉快。
半田くんと笹子さんがうまくいったのにはびっくりしたなあ。
これが去年の二月ってことは、そろそろ新刊出るかな?



 『チャンネルはそのまま!』5 佐々木倫子 小学館

新品購入。
これまた、去年の夏に出てたのに、ぜんぜん気づいていなかった。
で、慌てて注文しました。
今回も愉快でした。第33話「ローカルニュース大賞」、ひさびさに動物ネタでうれしかった〜♪

ところでもはや日本人の常識のひとつとなっている「三秒ルール」、落とした食べ物は三秒以内に救出すればセーフ、というあのルール、わたしがこのルールをはじめて知ったのは、佐々木倫子の『食卓の魔術師』(白泉社 1984年12月25日 第1刷発行)の104、105頁、「3秒ルール。3秒以内だとバイキンがつかないの」であった。
ひょっとしたら、これが「三秒ルール」の発生源、これを読んだ読者があちこちで「三秒ルール」を使い、それで「三秒ルール」を知った人がまた別の場所で「三秒ルール」を使い、いつしか日本国中に膾炙してしまったのではないか、とわたしは考えているのだが。

これ以前に出た本で、「三秒ルール」に言及したものって、あるのかな?


 『魔導師アブラハム』 マイケル・スコット(訳:橋本恵) 理論社

図書館。
今年1月に4巻まで一気読みしたシリーズの最新刊。
登場人物がすっごく増えて、しかも新たな血縁や婚姻関係が次第に明らかになり、メモしながら読んどけばよかったと後悔。
今回のびっくりは、アグネスおばさんの正体が見守る女「ツァガグララル」であったこと。金と銀の血筋を見守るという仕事に、エディングスのベルガリアード&マロリオンシリーズで、ベルガラスとポルガラが鉄拳リヴァの子孫を守り続けてついにベルガリオンを見出したことを思い出した。
ギルガメシュがツァガグララルの弟だったのにもびっくりした。
スカアハやジャンヌ、サンジェルマン伯爵たちはありし日のダヌー・タリスへ。
そして最後、またもびっくり仰天の血縁関係が。
これ、次の巻でぶじ、大団円を迎えるのかな?
本国ではもう次の完結巻が出てるのね。ここ参照。
タイトルは「enchantress」。これってペレネルのこと?












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