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本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス



『双頭のバビロン』 皆川博子 東京創元社

図書館。
19世紀末のウィーン、富裕なユダヤ人家庭に生まれた男子の
結合シャム双生児。
四歳で切り離された彼らは、
片方ゲオルクは実家に残され、片方ユリアンはボヘミアの「芸術家の家」という精神病者の収容施設の管理者のもとで育てられる。
ウィーン、ボヘミア、ニューヨーク、ハリウッド、そして上海。
間にイタリア移民の青年のエピソードを挟みながら、ふたりの人生が時系列をずらして交互に語られる。
面白かったあああっ!!!
けっこう厚めの本なんだけど、読み出したらもう、やめられないとまらないー。
あちこちに仕込まれた仕掛けがあとで明らかになるところが随所にあったのも気持ちよかった。



『私の家では何も起こらない』 恩田陸 メディアファクトリー

図書館。
丘の上にぽつりと建つ札付きの家、何度も凶事の舞台となった有名な幽霊屋敷、を舞台、というか主人公とした、連作短編集。
殺されて食べられた少女の一人称で語られる「私は風の音に耳を澄ます」が一番気色よかった。



『天才と発達障害 映像思考のガウディと相貌失認のルイス・キャロル』 岡南 講談社

図書館。
空間認知が突出してすぐれていたが識字障害気味だったガウディと、言葉を愛し心地よい音を愛したが吃音障害があったルイス・キャロル、他にも歴史上の有名人でそういった偏りがきつかったらしい人の例をひきながら、認知の偏りがもたらす恩恵およびデメリットをあれこれ考えた本。
私は聴覚記憶>視覚記憶だ。
そして空間認識力はないに等しく、しょっちゅうあちこちに体、特に頭をぶつけるし、地図は行き先が上を向いていないとわからない。
幾何はもちろん苦手だった。
そして人の顔を覚えるのが苦手だ。三回くらい会った人でも、その次に会ったとき、本当にその人か自信がないことが多々ある。
ので、聴覚型かと思うが、言葉を摂取するのは断然、聴くより字を読むほうが好きだし早い。
聞いたら10分、読んだら30秒。気持ちのいい音を聴くのは好きだし、それを脳内で再生するのは見たものを脳内で再生するよりとってもたやすいが、聴くのはとってもまどろっこしいことも多い。
高校で落ちこぼれたが、中学までは、センセの説明を聞かなくても教科書読めば書いてあることは理解できた。
人の顔を覚えられないが、固有名詞を覚えるのもすっごい苦手。
これはどういうカテゴリに入るのだろうと、つらつら考えながら読みました。
ただ、視覚記憶したものを脳内再現するのが苦手なわたしには、ルイス・キャロルが相手の気持ちを害してまでも写真を撮りたがった、いつでも観られる外部記憶を欲しがった気持ちはすごくよくわかった。

そういえば濱ちゃん。
関Jr.の濱ちゃん。
10月はピンで出稼ぎ、新橋演舞場10月公演「大和三銃士」でアラミス様役やらせてもらう濱ちゃん。
濱ちゃんは昔から漢字読めないので有名で、「大和三銃士」の脚本もしょっぱな一行目の漢字をまず読み間違えたんだそうだけど、あの身長であの年であれだけアクロバットできるのは空間認知力が凄いんだと思う。
なので濱ちゃんもガウディと同じタイプ、空間認知が突出しすぎているが故の識字障害かもしれない。
あ、紫耀。同じく関Jr.の平野紫耀。あの子もアクロバット得意だわ。そんで紫耀の場合は識字能力以前に言語能力に問題があって、日本語から日本語への通訳要るレベル(専任通訳金内は関Jr.担の常識)だけど、あれも空間認知が突出しすぎてるせい?



 『ヒーローと正義』 白倉伸一郎 子どもの未来社寺子屋新書

図書館。
先月読んだ白倉伸一郎が書いた『小説版 仮面ライダー電王』がげっつい面白かったので、これほど書ける人ならなんか他にも書いてないかと探したら、こんなん書いてた。なんと2004年、仮面ライダーは「剣」、戦隊は「デカンレジャー」のとき、9年も前に出ていたのであった。

冒頭に書いてみた、「低下するモラル、激増する少年犯罪、混迷の世界情勢」みたいにいう人は多いけれども、「おれのモラルは低下している」とか「おれの犯罪が増加している」などという人はいない。つねに、だれかよその人の<悪>が増大しているのであり、自分の問題だと思う人はだれもいない。
(中略)
ポルノ規制を求める人は、だれかよその人がポルノを見ると悪影響を受けると主張する。「おれがポルノを見たら、何をしでかすかわからないぞ」という人はいない。そのほうが、よほど説得力があるにもかかわらず。


(8、9頁より無断転載)

ここですごく共感し、第1章「正義のヒーローはどこにいる」での、桃太郎・金太郎・スサノオノミコトを例にあげて「英雄」を定義しようと試みるあたりはすっげえ面白かった。
でも、その後のヒーローものの流れについての語りでは、「フィクションとしてのリアリティ」「フィクションとしてのカタルシス」という視点がぽっかり抜け落ちていて、さらには視聴者の成熟、怪獣が単体で現れることをア・プリオリに受け入れていた状態からの変化に触れていない点も、なんだかイラッとさせられた。
が、第3章「世界の境界」での第二次世界大戦時のユダヤ人虐殺について考えたところ、いま日本にうようよしている厭韓嫌中連中に見事にあてはまる感じで面白かった。


これを読んだ直後、ギレルモ・デルトロ監督作品「パシフィック・リム」を観た。
凄かった。本当に凄かった。
一回目観たときなど、10回くらい泣いた。スクリーンに映しだされる絵の凄さに、嬉しくて泣いた。こんなものをリアルに見せてもらえることに知らない間に涙が出てきた。タイトルが画面に現れたあたりでもう満腹しきって、半分くらいのとこで、「もういい。残り続編でいい。こんなん一度に観るのはもったいなさすぎる」と思ったくらい。
これ観て思い知ったのは、そしてtwitterでの感想を読んで思い知ったのは、私が、私たちが、これまでどれほどわざと自分でフィルターをつけて日本製特撮映画を観てきたかということ。
「予算のせいでこうなったけど、ほんとはこうしたかったんだろうな」補正をしてきたかということ。
これ観てしまったあとは、仮面ライダーや戦隊をこれまでどおり観るのは辛いかな、などと思ったほどだが、いまのところ特に問題はない。
あっちは十年に一度あるかないかの大ご馳走、普段の食事とは別、と無意識に納得してるのかな。


そんでこの月の「仮面ラジレンジャー」、23日深夜のは公開収録分第一回であったが、これのゲストがなんと白倉伸一郎。この番組で白倉伸一郎、いまや東映テレビ・プロの社長さんしてることを初めて知った、どっひゃー。


 『死の泉』 皆川博子 早川書房

図書館。
舞台は第二次世界大戦下のドイツ。
前半は未婚のまま身ごもり、ナチスが作った施設で出産しようとしている女性マルガレーテの一人称。
後半は戦争が終わって十五年後、マルガレーテの子の父親であるギュンターによる探索。
いろんなディティールがこれでもかっとぶちこまれ、というか、ぶちこまれすぎて、あらすじ書きにくいわ、これ。
登場人物が入り組みすぎて、ときどき、あれ? あれれ?になったが、行け行けどんどん、やめられないとまらない〜で、すっげえ面白かった。



 『カールシュタイン城夜話』 フランティシェク・クプカ(訳:山口巖) 風濤社

図書館。
1371年プラハ。
このときプラハは神聖ローマ帝国の首都であった。
神聖ローマ帝国皇帝カレル四世は、毒を盛られるも一命をとりとめ、カールシュタイン城で養生することになる。
その養生先で夜毎、カレル四世および彼につきしたがった三人の側近が互いに語る、さまざまな女性のさまざまな物語。
プラハが神聖ローマ帝国首都だったことがあるとは、これを読むまでつゆぞ知りませんでした。
というか、神聖ローマ帝国ってのが、わたしそもそもよくわかってないんですが。
世界史の授業でも、ローマ帝国が衰退したあとはなにがなんだかよくわかってなくて、それがいきなり「1453年 東ローマ帝国滅亡」出てきて、なんなんだいきなり…、と思ったもんです。
1371年なら日本は室町時代か、なら中国は明時代だよな、くらいの気持ちで読み進め、途中で「黒太子」が出てきたとこで、あ、この人知ってる、知ってる、だれだっけ、と思い、ちょうど注釈ありのナンバー振られてたから巻末にまとめられてある注釈引いて、青池保子の「アルカサル 王城」がちょうどこの頃だと判明、へーほー。
あと、イギリスならどのあたり?と思ってググってみて、今年の5月にシアタードラマシティで見た「ヘンリー四世」、殿扮するハル王子、のちのヘンリー五世、の父のヘンリー四世が即位して間もない頃だったことも、判明。
でも、できたら注釈、各話の終わりに載せて欲しかったわ、風濤社。
訳者あとがきによると、この『カールシュタイン城夜話』はフランティシェク・クプカの作品の初の邦訳で、著者あとがきによると『スキタイの騎士』、『プラハ夜想曲』とこれで三部作らしい。
他の二冊も読みたい、読みたい。



 『BILLY BAT』12 浦沢直樹 講談社

新品購入。
1980年頃のニューヨーク。
塀にスプレーで絵を描く大学生。それが人目に晒されないうちに削り取る謎の集団。
大学生をそれぞれ追う男と女。女はチャック・カルキンの娘。男は大学生に身の守り方を指南する。
そしてチャック・カルキンの回想。
大学生はケヴィン・ヤマガタに命を救われた子どもだったことが明され、そして彼はニューヨークで暮らしていた明智監督と出会う。
そろそろクライマックス近いのだろうか?
それともまだまだ中盤なのだろうか?



 『チャンネルはそのまま』VOL.6 佐々木倫子 小学館

新品購入。
あらま完結。
面白かったあああああ。
中でも最後の最後の落ち、最高♪
次は何かな。
もうどっかで書いてるのかな。



 『いのちの理由』 さだまさし ダイヤモンド社

図書館。
「テレビ・ステーション」に連載したコラムを2009年春くらいから2011年夏くらいまでの分をまとめたもの。
そういえばソフトバンクの白戸家シリーズにさだまさし出てた出てたあれ2009年って四年も前だったのかー。このCM裏話がすっげえ愉快だった。



 『アントキノイノチ』 さだまさし 幻冬舎

図書館。
映画はレンタルで観た。
これを読んで、そういえばこのイヤな奴をやってたの殿だったと思い出す。
いつの間にか「シンケンジャー」以降とんとん拍子でブレイクしたような気がしてたが、そういえば「シンケンジャー」以後、そこそこ端役とか脇役とかやってたわ、と思い出す。



『吉野朔実劇場 犬は本より電信柱が好き』 吉野朔実 本の雑誌社
『吉野朔実劇場 本を読む兄、読まぬ兄』 吉野朔実 本の雑誌社


古本購入。
なんでかわからんがいきなり「そういえば吉野朔実って長いこと読んでないわー」と思い、調べてみたらあれこれ出てて、この読んだ本の感想っぽいシリーズと、こちらはストーリー漫画と思われる『Period』というのが4巻までが、ブックオフオンラインで在庫あったのでポチっとな。
身辺エッセイ漫画みたいな感じだった。この二冊の中でお奨めしてた本の中で私が読んだことあったのは数冊。大半は名前も知らない作家で、なんかいまいちどれも「読んでみたい」という気にさせられなかった。



『Period』T〜W 吉野朔実 小学館

古本購入。
はるかよきの兄弟が、
T 大学で哲学を教えている父に虐待されている状況から
迥が夜中についに父親をバットで殴るも父は亡くならず、そこに借金取りに追われる叔父一家が入り込み、家を売ることになるまで。
U 兄弟は施設に預けられる。→施設が火事で焼けるまで。
V Tで父親が病人になったあと少しだけ一緒に暮らした父の弟&その娘とのアパートでの暮らし。父親の死。
W 父親の心臓を貰った大金持ちの屋敷に引き取られてからその大金持ちが死ぬまで。
という、波乱万丈の物語。
「迥」という漢字をこの本で初めて知りました。
いまその漢字を確認するためにTの頭を見てみたら、Wの最後のシーンが冒頭にあったので、これで完結?
兄弟を虐待していた父親がWにまで影を落とすが、この人がどういう人なのか、ほんとにわからない。あとにいくほどわからない。



『ルカの方舟』 伊予原新 講談社

図書館。
新刊コーナーにあったのをなんとなく借りてきた。
火星起源の隕石に生命の痕跡を発見して脚光を浴びる大学の研究室。しかし、その研究室のボスである教授が不審な死を遂げる。しかもそのしばらく前、その研究室の研究にはFFP(
捏造Fabrication偽造Falsification盗用Plagiarism)の疑いがある旨の匿名の告発メールが届いていた。
惑星科学者の百地はFFPについての予備調査を依頼されるが、調査の最中、その隕石を発見したチリ人研究者が殺される。
殺人事件そのものはそんなに面白くなかったが、火星起源の隕石の研究についてや、理系研究者の世界のさまざまな問題は、すっごく面白かった。

背表紙裏の著者紹介によると、著者は神大理学部出たあと東大大学院の理学研究科で博士課程をおさめた、ばりばり理系。




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