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本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス



『注文の多い注文書』 小川洋子、クラフト・エヴィング商會 筑摩書房

図書館。
あるものを捜索する依頼者からの「注文書」、捜索過程や商品説明や取り扱い説明、商品画像などの「納品書」、依頼者からの「受領書」の三点がセットになったcaseが続くのだが、最後のcaseのみ「受領書」なし。
「注文書」と「受領書」が小川洋子、「納品書」がクラフト・エヴィング商會、という分担。
探しものはすべて物語にまつわるもので、cace1「人体欠視症治療薬」が川端康成の「たんぽぽ」、cace2「バナナフィッシュの耳石」がサリンジャーの「バナナフィッシュにうってつけの日」、case3「貧乏な叔母さん」が村上春樹「貧乏な叔母さんの話」、case4「肺に咲く睡蓮」がボリス・フィアンの「うたかたの日々」、最後のcase5「冥途の落丁」が内田百閒の「冥途」。
元になったお話を全部読んだことある人とか、いくつか読んだことあるとか、ぜんぜん読んだことないとか、これを読む人さまざまだと思うが、わたしは最後の「一冊も読んだことない」、でもまあ元の話を想像しながら読むのもオツでした。



『海うそ』 梨木香歩 岩波書店

図書館。
南九州にある遅島という島を訪れた若い人文地理学の研究者が、島民の家に投宿し、島のあちこちを巡る話。
2頁くらい読んだあたりで、これは大切に大切に読まなければいけない本だ、と思った。
湖の向こう岸側にある温泉にたらい舟で行く老夫婦。島のあちこちに残る、島がかつて修験道の霊場として栄えた頃の寺院僧坊の名残り。西洋館に住む老紳士。島の案内を買って出る実に感じのいい青年。
語り手の研究者とともに島をぞんぶんに楽しませてもらった。
最後まで読み終えた今、

「私が行ってみないだけで、行ってみたらそれは今でも、草の中に横たわっているのかもしれない。ひとが見る見ないに関係なく、ただそこに在る、というふうに。
けれど、この、胸を引き千切られるような寂寥感は。
空は底知れぬほど青く、山々は緑濃く、雲は白い。そのことが、こんなにも胸つぶるるほどにつらい」(130頁131頁より無断転載)

が、さらに胸に沁みる。
そういえばタイムスリップするならいつがいい?という問いはよく見かけるが、これを読んで、どこか一箇所だけ過去を見に行けるなら、大正の中頃の実家近辺、うちのばあちゃんが子供だった頃を見てみたい、と思った。
310号線が通る前の関茶屋、新家、下茶屋あたり。
星夜池(「ほーしゃいけ」と呼ばれている池がこんな美しい名前で書かれることを私は長いこと知らなかった)は晴れた夜、その名のとおりに満天の星を水面に映し出したのだろうか。
ばあちゃんの知り合いのおじさんが狐だか狸だか鼬だかに騙されて風呂だと思って浸かったという肥溜。

ばあちゃんのお母さんがまだちっちゃかったばあちゃんの手をひいて丘を越えたところの後夫(後妻の夫版てどう呼ぶの? ばあちゃんのお父さんがけっこう若いめで亡くなったあと、ばあちゃんのお母さん、亡くなった夫の弟と結婚することになったのだ。その頃はよくあった話らしいんだけど)の愛人の家に石をぶつけに行ったことがあるらしいが、その丘がいったいどのへんのことなのかすら、家がびっしり立ち並んだ今はぜんぜんわからない。


『トオリヌケキンシ』 加納朋子 文藝春秋

図書館。
短編集。
「トオリヌケキンシ」「平穏で平凡で、幸運な人生」「空蝉」「フー・アー・ユー?」「座敷童と兎と亀と」のまったく接点のない五編とこの五編を結ぶ「この出口の無い、閉ざされた部屋で」の計六編。
五編はどれもほっこりと幸せな気持ちにしてくれる結末の物語。
最後のお話はせつなかった。
「平穏で平凡で、幸運な人生」が一番好き。その次が「フー・アー・ユー」。
そういえば「ささらさや」、映画館で見逃したので、レンタルが待ち遠しい。



『繁栄の昭和』 筒井康隆 文藝春秋

図書館。
短編集。
「繁栄の昭和」「大盗庶幾」「科学探偵帆村」「リア王」「一族散らし語り」「役割演技」「メタノワール」「つばくろ会からまいりました」「横領」「コント二題」に「附・高清子とその時代」付。
「一族散らし語り」が怖かった。読みながら、大きな大きな家の一階に住んでる男が上へと登ってく話を読み返したくなった。タイトル「家」だったっけ? あれの載ってる本、うちにあったっけ?
「メタノワール」もじわじわ怖かった。
怪盗二十面相の生い立ちを描いた二次創作ものな「大盗庶幾」読んで、明智小五郎ってこんなんだったっけ?と。小学校の頃にこのシリーズは小学校の図書館のを全部読んだはずだが、だいぶ前にテレ朝で放送された「明智小五郎VS金田一耕介」のTOKIO松岡の瀟洒な明智のせいでイメージが上書きされたものと思われる。いま調べてみたら、あれが放送されたの、もう九年前かー。長瀬の金田一と松岡の明智小五郎、もっと見たいと思い続けて続編待ってもう九年かー。
そういえばこないだ亡くなった菅原文太さん最後の主演映画が筒井康隆原作の「わたしのグランパ」だったんですね。訃報を聞いて「わたしのグランパ」って借りて見たっけ?キャストだけ見て見た気になってるだけか?と調べてみたらVHSでしか出てないわ、うわーと思ってたら、うわーと思った数時間前に実は地上波で緊急追悼放送されてて、N塚家にまたもや救出お願いしたわ。(N塚家にはいまタイムシフトTVがあるので、放送の翌日中に泣きつけば、外付けのHDDにダビングしといてもらえるのである)



『和泉のむかしばなし』 和む研究室 再話 和泉市立和泉図書館

図書館。
新刊コーナーにあったんだか、特集コーナーにあったんだか、覚えていないが、なんとなく借りてきてしまった本。
ぱらぱら読んでて驚愕したのが「光明皇后伝説」。
これによると、お坊さんの野しょんべんを知らずに飲んでしまった牝鹿が数ヵ月後に人間の子供を生んでしまう。鹿は懇意にしていたお坊さん(実はしょんべん主)に相談、室堂村というところの夫婦にその子を預けることになる。その子は女の子で、ただひとつ、足だけが鹿のような蹄のような足だった。
みんなから可愛がられて育った女の子は美しい娘になり、そんな折、村を通りがかった藤原不比等が娘を見て養女にしたいと言い出した。藤原不比等の養女となった娘はその後、聖武天皇の后となった。これが光明皇后である。
びっくりした。
隣の和泉市にこんな荒唐無稽な伝説が残されていたとは、この年になるまでまったくぜんぜん知らなかった。
のだが、これを読む少し前のこと。
うちの父が、光明皇后は庶民の娘だったのを野良仕事してるところを天皇に見初められた、と思い込んでいたことを知ったのだった。
いったいなにがどうしてそんな愉快なことを思いついたのだ、と爆笑しつつ思ったが、ひょっとしたら昔はうちの近所でも知ってる人が多い伝説で、父ちゃん、ちっちゃいときにそれを誰かから聞いたのかも。
この本に収録されてる十いくつかのお話、複数のイラストレーターがイラストをつけているのだが、その中の辻井雅彦という人のイラストがすっごく可愛らしい好みの絵なのだが、ググってもこの本しかヒットしない。
専業にしてる人とは違うのかな?



『猫と妻と暮らす』 小路幸也 徳間書店

図書館。
中図書館の特集コーナーが犬猫本で、その中にあった。
読み終えて奥付の頁に載ってた著者プロフィール読むまで『東京バンドワゴン』の原作者で私は『キサトア』1冊読んだきりだった作家だと、ぜんぜん気づいていなかった。
こんなお話、わたし好き、むっちゃ好き。
葦野原というこの世とあの世の境目のような場所に住む一族。
一族の人々はなんらかのねじれやよじれで発生した「禍」を修復するためのさまざまな技術を持っており、主人公の和哉は葦野原の外で暮らしているが、長筋の生まれで、長筋の者でないと使えない技術を受け継いでいる。
彼は本業は大学に勤める研究者で教授の娘と結婚するのだが、教授は葦野原について研究していたらしい人で、奥さんの優美子さんは、一族の長筋としての和哉の仕事に支障が生じそうなとき、なぜか猫に変化し、支障を回避する手助けをする。
葦の原のひとたちが使う用語やものの見方が読んでてすごく楽しかったし、泉水につっこまれつつ和哉が呪具がわりにそのへんにある日用品を使うのも愉快だった。
泉水や某々爺、上楽先生ら、脇キャラもみなステキだった。
猫に変化する優美子さんの出自や、彼らの家に迷い込んできたときは子猫だったのに女の子に変わり、そのままこの家の子みたいになった多美ちゃんがいったいどこから来たのか、それらがはっきりせぬままだったのはちょっと残念。
果無偲に名前を記すのに和哉が用いた墨がなくて字が書ける筆、『蟲師』にこんなん出てこなかったっけ?



『Landreaall』25 おがきちか 一迅社

新品購入。もちろんオリジナルドラマCD付版。
ライナス登場!のすっごいいいとこで終わっている…。
DXが世話してる犬? 犬って書いてあるけどこれほんとに犬? このままレギュラーになるのかな?
ライナス登場!といつものおまけの間のact.139.5のスレイファン卿の逸話、ステキだった。
おまけCDは牝馬たちの井戸端会議。アプローゼの声が谷育子さん~♪ ナイス・キャスティング~♪








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