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本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス


『レベレーション 啓示』3 山岸凉子 講談社

新品購入。
「我々イギリス人も神の子であるのはまちがいない 神がフランスだけをえこひいきするはずもないわ」というグラスデール隊長の言葉(41頁)が、ジャンヌ・ダルクの逸話を初めて知ったときからのわたしの疑問そのまんま。
そういえばイングランドでフランス語が公用語だった時代があって、そのせいで英語、ラテン語系のヨーロッパ諸言語と「なんか違う」感じになった、みたいな話をなんかで読んだ覚えがあったよな、とふと思い出し、ググってみたら、1066年にウィリアム一世がイングランド王になってから300年くらい、だそうだ。
wikiによるとジャンヌ・ダルクは1412年生まれで亡くなったのが1431年。(室町幕府の頃の人で、応仁の乱の少し前の頃の人だったのか)
ついでに百年戦争ってジャンヌ・ダルクより前? 後?とググってみたら、「1337年11月1日エドワード3世によるフランスへの挑戦状送付から1453年10月19日ボルドー陥落までの116年間の対立状態」(wiki「百年戦争」)だそうだ。
ということはジャンヌ・ダルクのこの時代、百年戦争真っ只中。…って、あ、この頃のイングランド王って、「ヘンリー四世」で殿が演じてたハル王子=ヘンリー五世の息子の六世かっ! そんでそっから薔薇戦争始まって、『天の戴冠』(森川久美)の話になってくのかっ!



『遷都』 小松左京 勁分社

図書館。
平城京→長岡京→平安京への遷都の事情を考察した表題作「遷都」、
伴氏没落の原因となった応天門の変を解く、菅原道真や在原業平が登場する「応天炎上」、
彰子の女房になる前の紫式部が藤原道綱母の養女の志賀の前の知遇を得たことで藤原道綱母が書いた「蜻蛉日記」の未読分を探す過程で清少納言や安部晴明と袖摺りあったりしつつ、安和の変の真相に気づく「糸遊」、の三編。
これまた



くっそ面白かったあああ


ああっっっ!!!



「改訂版に際して」という著者前書きによると、これに菅原道真左遷事件を加えて「平安四部作」にしたかったらしい。書いてほしかったよ、読みたかったよ、四作目も。
わたし、平安時代は、鳴くようぐいす平安京が794年だから、桓武天皇とか平城天皇嵯峨天皇空海最澄あたりが800年代前半、遣唐使白紙にもどした菅原道真で菅原道真が800年代後半、源氏物語が1000年くらいだから道真とか安部晴明とか紫式部とか清少納言とか定子とか彰子とかがそのへん、くらいの認識だったので、在原業平と菅原道真が袖摺りあっててもおかしくないとか、国語の授業で習っただけで内容もよく知らなかった「蜻蛉日記」の作者が藤原道長とか定子父ちゃんの道兼とかの父ちゃんの嫁さんだったのも、これで初めて知りました。
「遷都」冒頭に登場する樒の枝で鰻を採る「樒漁」も初めて知った。そういや私が小さい頃、葬式には生の樒がずらりと並んでた。
あと六歌仙って、平安遷都~遣唐使、白紙に戻した、の9世紀の人たちだったのも、これで初めて認識しました。
そして。

「藤原氏というのは、しらべればしらべるほど不思議な集団で、ちょっと他の古代氏族、--蘇我とか、大伴とかとちがった、独特のタイプの「文化」をもった氏族団であったようである。特に平安時代は、その特異さが、もっとも強く発揮された時代で、この時代を別名「藤原時代」とよぶのも故なしとしない。入り婿になった男たちの最も大きな社会的目標は、母方、または妻の実家の全面的支援をうけながら、公活動において名をあらわし、高い社会的地位にのぼる事だった。--最終・最高目標は、人臣最高位にのぼり、その事によって氏族の不文律により、「氏の長者」の位につく事だった。(149頁より無断転載)

藤原氏に限った話ではないけど、わたしもこれ、前から不思議に思ってたの。
平安時代は入り婿制、その家は基本的には母親の生家で、その家に生まれた子供、女の子は生まれた家にそのまま暮らして婿を迎え、男の子は「妻問い」して妻問うた相手とパーマントな関係になればその家に「婿」として移るという婚姻形式だったのに、中学や高校の歴史の教科書では男系メインで教えられてたのか。
日本史学者や教科書を書いた人たちが、鎌倉以降の、女子が男の家に嫁す形式にがっちがちに馴染みすぎてて、女系相続というものをイメージできなかったせいかと思っていたが、小松左京がこう書いてるなら、それだけでなく、すごく奇妙なことだったんだろう。
(教科書が「女系」を無視してくれたおかげで、学校教育を済ませてかなりしてから、淀君と秀忠正室江が同父同母の姉妹、どちらも織田信長の姪だったことを知ってびっくり仰天できたわけですが)
そしてわたし、道長以降は大河ドラマ「平清盛」の最初、白河院が実権掌握した12世紀初頭あたりまで11世紀ほぼ白紙です。
ここも誰かが書いてくれた物語がいつかは埋めてくれるのだろうか…。



『首都消失』上下 小松左京 徳間書店

図書館。
もしもなんらかの事情で突然、東京都の中心部から半径30キロがすっぽり謎の雲に覆われ、中に入れず、中で何が起きているのかわからず、内部とまったく連絡がとれなくなったら、その範囲外にいる日本人は国体を維持するためいったい何から手をつければよいのか。




(東京駅を中心にして半径30キロひいてみたら、埼玉や千葉もこのへんたれまで含まれてまうねんね)
という設定を立てた上で起こりうる事態を小松左京がシミュレートした「思考実験」もの。
しかも起きた時期は「国会絶賛開催中」。なもんで、首相以下内閣一同および衆参議員も雲の中。
レンタルで借りてきた映画「第9地区」ではあんな巨大な物体が宙に浮いてるのにそのテクノロジーを解明したがる人がいないのに最初のほうでギブ、やっぱりレンタルで借りてきた映画「メッセージ」(レンタル始まった頃にやっとこの映画がテッド・チャンの「あなたの人生の物語」を映画化したものだと知ったの)もあんなもんが宙に浮いてるのに「どないなっとんねんーっ!」のなさ加減にまじくそいらいらさせられたので、大田原剛造博士の「あの雲、どないなっとんねんっ!」加減に心が洗われました。
そういやいま放送中の「仮面ライダービルド」観ながら、毎週いらいらしてます。
スカイウォールが日本の国土を三分したのはいいさ、いいけど、互いに連絡がとれて、海路で往来できる状態で、いったい何がどうして第一話時点みたいな三つの国家に分裂したのか、ほんまにまじめにシミュレートしてみたのか、脚本担当武藤将吾よ。パンドラボックスって膨大なエネルギーを秘めてるそうだけど、そのエネルギーをほぼロスなしに電力に変換した場合、どの程度の電力をどれくらいの期間まかなえるものなのだろう? そんでいま日本を三分した三つの国家は「戦争」状態にあることになってるけど、あれを戦争っていわれても…。

ところでこの『首都消失』、天皇家についてはほとんど言及されてなかった。
それももちろん小松左京はシミュレートしたと思うので、あえて描かなかったんかな?



『召集令状』 小松左京 角川文庫

図書館。
「戦争はなかった」(’68年)「二〇一〇年八月十五日」(’68年)「地には平和を」(’63年)「春の軍隊」(’73年)「コップ一杯の戦争」(’62年)「夢からの脱走」(’65年)「お召し」(’64年)「召集令状」(’64年)の八編入り短編集。
「召集令状」だけ読み覚えがあった。アンソロジーで読んだのだろう。
「お召し」は萩尾望都の「AWAY」全二巻の元ネタやーっ!!!と思いがけずいきなり出くわした驚きとともに読んだ。
1945年8月15日、ポツダム宣言を受諾したことにより昭和天皇の「玉音放送」があったあの日、もし放送直前に全面降伏を肯としない一派によってクーデターが起きていたら、という事態を設定した「地には平和を」が小松左京のデビュー作だったというのも、読み終えてググって初めて知った。
太平洋戦争を題材にした短編ばかりを集めたものだが、そして日本で戦争といえばとりあえず太平洋戦争のことで悲惨を語られるのも太平洋戦争だが、そしてあちこちで小松左京が描写する太平洋戦争、特に「戦略的爆撃」のシーンは本当に怖かったんだけど、それ以外の過去に地上のさまざまな場所で起きたさまざまな虐殺の描写もほんとに怖かった。


『望楼館追想』 エドワード・ケアリー(訳:古屋美登里) 文藝春秋

図書館。
数ヶ月くらい置きに東京創元社の今月の新刊や近刊案内を眺めに行く。
おそらくそのときに『肺都』を見て、堺市図書館の蔵書見てみたら「堆塵館」三部作はぜんぶ貸し出し中だったので、エドワード・ケアリーの著作ですぐ読めてタイトルも素敵なこれを予約したと思う。
途中多少たるくてなかだるんだところはあったものの、わたし、この話、好き。このテイスト、すごい好き。



屍人しじんの殺人』 今村昌弘 東京創元社

図書館。
第二十七回鮎川哲也賞受賞作品。
図書館予約したきっかけはtwitterで図子慧がこれについてツイートしてたから。
順番回ってきて借りてきた日に読み出したらやめられないとまらないーで一気。
したが、ここに読書感想文書くのをさぼってて、あさって(3/11)返却日、ごめんよ、堺市内でこの本予約中の346人。
あさって(3/11)は丈さまと大橋くんW主演の「リューン」&草間敬太出してもらってる「ディスコティーク」のWヘッダーで返しに行く暇ないから明日返しに行こうと、ケツ火状態でこれを書いている。
第一章、「俺」と明智さんの推理対決から始まるやりとりおよびふたりの馴れ初めがすっごい愉快だった。
探偵役の剣崎比留子さんがやむをえず「名探偵」にならずを得なかったがゆえミステリの知識がほぼないという設定や「俺」こと葉村がその部分をフォローすることになるのもナイス設定だったが、紫湛荘に行くことになるまでのなりゆきがともかく愉快だったので、明智さん、○○ててほしかったわ…。



『ストライク・ザ・ブラッド APPEND1 人形師の遺産』 三雲岳斗 電撃文庫

新品購入。
連作短編形式の番外編。
各話の最後に超短編がはさまるのも嬉しい。
時期的には1巻と2巻の間くらいに起きた出来事らしい。
那月ちゃんと紗矢華が戦う第二話、むっちゃ好き。



『美しの神の伝え 萩尾望都小説集』 萩尾望都 河出文庫

新品購入。
「美しの神の伝え」「音楽の在りて」「CMをどうぞ」「マンガ原人」「守人たち」「闇夜に声がする」「子供の時間」「ヘルマロッド殺し」「左ききのイザン」「プロメテにて」「おもちゃ箱」「クレバス」「憑かれた男」「クリシュナの季節」「左手のパズル」「いたずら らくがき」の16編。(だが、「左ききのイザン」と「いたずら らくがき」は漫画なので小説は14編)

これを読んだ二ヵ月後、ジーン・ウルフの『書架探偵』を読んだ。(感想書きにくいわ、これ、と放置してて、書いているのは読んでから三ヵ月後の五月。今日は5月12日)
『書架探偵』に登場する作家のクローンは新作を書くことを禁じられているが、漫画家のクローンについてはオリジナルが生前に残したアイディアを漫画化するのはOKにしてくれたら、小説の形で書かれた14編、あと去年読んだ『ピアリス』なんかも、萩尾望都の絵で読めるねんよなあ、などと。











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