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本読み月記


【ジャンル分け】 最初から日本語で書かれた小説。
最初から日本語で書かれた小説以外。
日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説。

日本語以外で書かれたものを日本語に翻訳した小説以外。

コミックス


『メカ・サムライ・エンパイア』 ピーター・トライアス(訳:中原尚哉) 早川書房

図書館。
わあい、久地楽(子)、無事やった、生きてた~♪♪♪
前作『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』でメインの舞台になった1988年より六年後、1994年から始まる、同じ世界の別の物語。前作の登場人物で出てくるのは久地楽(子)のみ。が地の文で母に触れているとこもあり。
両親ともに軍人、父はメカ整備兵、母はメカナビゲーター、ともに1984年に戦死、だった主人公不二本誠。
彼がメカパイロットをめざす成長物語。
前作はそうでもなかったが、今作は、読んでる間じゅう脳内で「パシフィック・リム」のテーマが鳴っていた。
主人公が改訂版「蝶々さん」を観るシーンがある。

「アメリカ人海軍士官がうら若き日本人女性に求愛して、九百九十九年間結婚すると約束する。ところが約束を破って帰国してしまう。女は彼に恋いこがれて日本的なものをすべて拒絶し、さらに家族も国も捨てる。彼は三年後に帰ってくるが、すでにアメリカ人女性と再婚しており、冷酷にも子どもを奪っていく。蝶々さんは自害して果てる」(中略)
「その改訂版がこれだ。今回の蝶々さんはだまれたことに気づき、短刀を抜いて、アメリカ人仕官の取り巻きたちと、領事と、後妻を刺し殺す。さらに夫を死ぬ寸前まで殴るが、生かしておいて生活費を稼がせる。ただし二度と不貞をできないように局部を切りとる。蝶々さんは息子とともに優雅な一生を送る」

(216頁&217頁より無断転載)

くっそ笑うた。



『徴産制』 田中兆子 新潮社

図書館。
2087年、女性だけが罹患、しかも年齢が若いほど致死率が高い新型インフルエンザがパンデミックし、十代二十代女性の大半が亡くなったため、若い男性が一時的に性転換(自身の卵子をもち受胎能力あり)する義務を負う「徴産制」が2093年から施行されることとなる。
そんな中で「徴産」の赤紙が来て女性に性転換することになった男たち五人、をそれぞれ章立てにして描いたもの。
彼らは女性に性転換することにより初めて、いま現在女性が置かれているさまざまな問題に直面することになる。
第一章「ショウマの場合」を読んだとこで、女の場合、生まれたときにはすでに卵巣に卵子をもっているはず、この場合はどうなるの?とひっかかり、そのままほったらかしてたが、返却日目前に慌てて続きを読み始めたら、第二章「ハルトの場合」の最初のほうで、

「一方、万能細胞を利用した新薬の開発に成功したロシア系日本人医学者によって創設されたワッカナイ大学再生医科学研究所が、画期的な性転換技術の開発に成功した。大掛かりな外科手術をすることなく、可逆的に性別を変えることができるのである。男性研究者が女性へ性転換し、妊娠と出産に成功、赤ん坊が元気に育っていることが発表された」(61頁より無断転載)

という説明があり、一度受精卵まで戻したとこで性別を変換して育ちなおしたみたいな状態に簡単にできるってことか?と納得、してからは行け行けどんどん。
(が性差遺伝子は? もともとYなのでできた卵子の半分くらいはY持ちだったりしてそれがやはりY遺伝子もつ精子と受精したらどうなるの?という疑問はあったものの)
ハルト、キミユキ、イズミの章は楽しかった。
がタケルの章はほんとしんどかった。タケルのような境遇にいま現在置かれている女性、少なからずいる、きっといる。
性転換がさらに手軽なものになっても、こういった性搾取というものはなくならないのだろうか。
新型インフルエンザがパンデミックするより前に世界的な食糧不足が起こり、食糧輸出国も自国分をまかなうだけで精一杯、輸入が途絶えてあっという間に飢餓に襲われた日本は中国の属国となることでなんとか生き延びていたことが、後半あたりで明らかになる。
中国産の食品を蔑む風潮に常々イラッとしている。余剰があるから売ってもらえてるねんで? 今の日本の自給率だと、今現在食糧輸出してくれてる国が自分とこだけで精一杯になりゼニ出しても売ってもらわれへんようになったら、あっという間にわしら飢えるねんで? 喰うもんなくなったら「食の安全」どころの話ちゃうで?



『MASTER KEATON Reマスター』 浦沢直樹(ストーリー:長崎尚志) 小学館

新品購入。
四年も前、2014年に出てたんですね。
『BILLYBAT』の完結巻が出たのが2016年9月。
そういや長いこと買うてへんわと思い出し、楽天ブックス「浦沢直樹」で検索したら『夢印』なる新作が予約受付中だったが、「新しい順」に並べなおしてつらつら眺めててこれに遭遇、びっくり仰天。
『MASTER KEATON』完結から20年後の新作で、作中でも20年の歳月が。てか20年っ?! 『MASTER KEATON』完結から20年っ?! いや、これが出たのが2014年でその時点で完結から20年後だから、プラス4年で24年っ?! 信じられない………。
お父さんの平賀太一氏はまだ健在。20年前には大学生だった娘の百合子は考古学者に。さすがに太助が存命のはずはないが、太作という名の太助そっくりの犬を百合子がミュンヘンで飼っていた。嬉しい。

これが届いて読んだ翌日、「マクガワン・トリロジー」を阪急文化中ホールで観た。
殿扮するヴィクター・マクガワンはたぶんわたしとほぼ同年代。
ちんぷいぷいの「リアル世界くん」がアイルランドだったとき、アイルランドのおばちゃんが「このあたりじゃたいてい、家族や親戚にひとりやふたりは、あの頃に亡くなった人がいるわ」と言ってたのを思い出した。
そういえば中国の文化大革命、あの頃紅衛兵だった人たちも、ほぼ同年代。
フォークランド紛争に二十台で派兵された人たちも、わたしとほぼ同年代。
湾岸戦争にアラサーくらいで派兵された人たちも、わたしとほぼ同年代。
戦争に行った親族は私の年代ならたいてい二世代前の世代、先の戦争といえば通常は72年前に敗戦した太平洋戦争な日本に生まれた幸いを、あらためて噛み締める。

それにしても、「マクガワン・トリロジー」の頃にヴィクターみたいにIRAのテロに参加して、ヴィクターみたいに人を殺して、でも今も普通に生きてる人もおるんやよね。
文化大革命の頃、紅衛兵として、人の家に押し入ったり、人を殺したり、下放されてきた人に暴力を振るったりしたけど、でも今も普通に生きてる人もおるねんよね。
その頃のことを思い出すと辛くて辛くてたまらない人もいれば、特に気にせず生きてる人もおるんやろね、たぶん。

「マクガワン・トリロジー」といえばヴィクターのママっ、デヴィッド・マッカラムが「黒髪で片腕」だったドラマって、この中のどれよっ?!



『秘密 season0 <冬蝉>』7 清水玲子 白泉社

新品購入。
えっと、とりあえず買って、とりあえず読んだけど、これって「season0」始まるより前に終わったその前のより前の話になるんやったっけ?


『ポースケ』 津村記久子 中央公論新社

図書館。
朝日新聞大阪版夕刊に週一、津村記久子、澤田瞳子、湊かなえ、柴崎友香の小文が、それぞれ月一載っている。
(大阪ローカルコーナーだということを知ったのは、先月28日の「折々の言葉」で、柴崎友香がこのコーナーでちょっと前に書いていた「あれこれ言う人が手伝ってくれるわけでなし、言う通りにしてもさらに上を求められるだけでお駄賃くれるわけでなし、きりもない」が取り上げられたとき)
で、「津村記久子」という名前は覚えてたが、書いた本を借りてくるとこまでいかなかったのが、尻を押してくれたのが、やっぱり朝日新聞に週一載ってる「オトナになった女子たちへ」というコーナーで、伊藤理佐か益田ミリかそのどっちかが、この『ポースケ』のことを書いていたのだ。
ちなみに初めて小説読んだと思ったら違った。四年前に読んだ『名探偵登場』に載ってた「フェリシティの面接」が最初だった。この話好きでこの作家の書いたもんを読もうと思って忘れてたのも思い出した。
ヨシカという女性が営むカフェレストランの風景から語り起こされ、このカフェの客だったりパートさんだったりして関わりのある人たちをひとりづつ描き、最後はこのカフェレストランで開催された「ポースケ」というイベントの一日で締められる、連作短編集。
カフェだの飲み屋だのの常連がつるんで仲良くなんかする話は苦手なので、この話のそれぞれの距離感、ぎりぎりセーフのいい感じであった。

ところでこの中のどの話かでスージー・スーという名前に出くわした。
「マクガワン・トリロジー」、カーテンコールで流れたのがイギー・ポップの「THE PASSENGER」だった。
すっげえ知ってる曲だったが、わたしが聴きなじんでたのはスージー&ザ・バンシーズの「スルー・ザ・ルッキング・グラス」というカバーアルバムに収録されてたやつで、本家イギー・ポップのはこのカーテンコールで聴いたのがたぶん初めて。
で、久しぶりに「スルー・ザ・ルッキング・グラス」を聴きなおしてたとこだったもんで、奇遇さにびっくり。



『失われた手稿譜 ヴィヴァルディをめぐる物語』 フェデリーコ・マリア・サルデッリ(訳:関口英子・栗原俊秀) 東京創元社

図書館。
朝日新聞読書欄で見て図書館予約。
最初のほう、ヴィヴァルディの弟のフランチェスコが兄の手書きの楽譜をひそかに別の場所に移そうとする1740年代と、それからほぼ200年後、所蔵していた侯爵が修道院へ寄付することになったくだり、交互に語られる。
1740年代の話はほぼ読み飛ばし、200年後のとこだけ読んでたが、それもそのうちややこしくなり、後半流し読んだので、ちゃんと読んだとは到底いえないのだが、とりあえずここに書いておく。



『クマとたぬき』 帆 角川書店

新品購入。
リツイートされてたのを見て即フォロー、twitterのプロフィール欄に貼られてたピクシブの頁も即フォロー、これが出るのもtwitterで知り、即予約。
去年か今年、タヌキが「元々極東にのみ生息する世界的に見れば珍しい動物」なことを初めて知り、そういや日本の昔話じゃ茶釜に化けたりばばあ汁作ったり猟師に撃たれたり(21頁のハッピーエンド版あんたがたどこさ大好き)サイコロに化けたり(これは落語か)八面六臂の大スターだけど西洋の昔話には出てこんよなとこの年にして思い至る…。



『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』1 松本ひで吉 講談社

twitterでリツイート回ってくるのをちょくちょく読んでいた。この1巻、N塚家に遊びに行ったらあった。長姉が購入していた。
犬にもしんねり陰気なのもいるし、猫にも天真爛漫なのはいるけど、でも、みんな違ってみんないい。



『飛ぶ孔雀』 山尾悠子 文藝春秋

図書館。
『歪み真珠』から八年ぶりの、再録ではない新刊。
「Ⅰ 飛ぶ孔雀」は「文學界」の2013年8月号と2014年1月号に掲載されたものを収録したもので、「Ⅱ 不燃性について」は書き下ろし。
「Ⅱ 不燃性について」の途中くらいからなんだかよくわからなくなって、そのへんからは電車で窓の外を眺めるみたいな感じで読んでしまったが、「Ⅰ 飛ぶ孔雀」のところをいま拾い読み返して、もっぺん読み返したくてたまらないが、今日が返却日、この本予約してる人、いま堺で八人。



朱紋様あけもよう』 皆川博子 毎日新聞社

図書館。
江戸時代が舞台の話ばかりの短編集。
「雨夜叉」「影かくし」「炎魔」「朱紋様」「雲母橋きらずばし」「恋すてふ」「露とこたえて」「木蓮寺」「仲秋に」「春情指人形」「みぞれ橋」の11編入り。
40頁11行目 …勘三郎とおさんは口を え、間違いないか、このような黒焦げの…
72頁.3行目 中売りから、 だの蜜柑だのを買ってやり、
この二箇所だけ、それぞれ一字、ぽこんと抜けていた。
40頁のほうは「揃」、72頁のほうは「飴」だと思うけど、スペースはちゃんと空いてるのに字が抜けてるの、すっげえ珍しかったもんで。



『ポトスライムの舟』 津村記久子 講談社

図書館。
「ポトスライムの舟」と「十二月の窓辺」の二編入り。
『ポースケ』が面白かったので開架にあった中からこれ借りてきたのだが、「ポトスライムの舟」を読み始めてみれば、『ポースケ』に出てきた人たちが出てくる話で、こっちのほうが先に出た本で、『ポースケ』よりちょっと前の話であった。そしてこちらは連作短編ではなく、ヨシカの友達のナガセを主人公とした中編であった。



『夜廻り猫』4 深谷かおる 講談社

新品購入。
通しで読んで初めて気付いたけど、犬散歩中にラブさんに出くわして一度は逃げたけど拾いに戻ってしもた犬飼いの男の子、猫譲渡会で門前払いくわされた男の子の友達で、その子につきあって保健所行ってついふらふら犬貰ってきてしもうた子やったんや。
実家近所に触りたいときに触りに行ける犬は二匹いる。かかりつけの整備屋さんとこのハチと順子んとこのカール。
ハチは某大手チェーン電気屋さんにダンボール詰めされて捨てられてた子犬が動物指導センターに持ち込まれた翌日、ずっと飼ってた犬(雑種くん)が亡くなって犬無しになってた整備屋さんの奥さんがたまたま仔犬譲渡会の問い合わせ電話かけたところ、飛んで火に入る夏の虫、指導センター「いやあ奥さん、いいとこに。ええ出物ありまっせ」(意訳)と。
カールは愛媛で野良犬してたのが保護されて、マンマ動物病院のせんせ経由で順子ん家に。
あと辻田さんとこでときどき家の横の安全な空きスペースに長い綱つきで出してもらってるお嬢さんがいて、出してもらってるときにちょうど前を通ったら触らせてくれる。彼女はどう見ても純血種な甲斐犬なのだが、整備屋さんの奥さんに聞いた話では、彼女も元は保護犬だったらしい、あらま。



『きのう何食べた?』14 よしながふみ 講談社

新品購入。
ケンジがついに店長になってしまった最後の話の最後にあった「今までのレシピで「じゃこ」と出ているものは、しらすでもちりめんじゃこでもどちらでもOKです。」に、ついにググってみた「しらす ちりめんじゃこ 違い」。
(スーパーで買うときになんとなくちりめんじゃこのほうを買ってしまうのだが、製法が違うのか、乾き具合が違うだけか、それともそもそもの原材料の種類そのものが違うのか、買うときに考えつつも、レジを終わったぐらいでいつも疑問そのものを忘れてしまっていた)
どんだけ乾かせたかってだけの違いなのか。



『タンゴ・イン・ザ・ダーク』 サクラ・ヒロ 筑摩書房

図書館。
表題作と「火野の優雅なる一日」の二編入り。
朝日新聞の書評コーナーで見て予約入れたと思う。
夫側の立場からするとまあ不気味な話ではあるのだが、このKという奥さんが何を思ってダンナとまったく顔を合わさない生活を始めたのは、ぜんぜんイメージできなかった。



『菅ちゃん英語で道案内しよッ!』 菅広文 ぴあ

図書館。
ちちんぷいぷい」火曜日の名物コーナー、ロザンが梅田で道に迷っている人を捕まえて道を教えてあげる「ロザンの道案内しよッ!」で外人に通じた英語集。
このコーナーが始まった経緯を記した「はじめに」とこの本が出ることになったことについての「おわりに」付。
このコーナーのためだけに「ちちんぷいぷい」を毎週火曜日録画している。
毎週木曜日も録画してて、こちらは「昔の人は偉かった」のためだが、和歌山編終わって修業になってからいまいち面白くないよ、ちちんぷいぷい。
菅ちゃんが書いた本は外に持って出て、電車待ちとか、電車の中とか、お芝居の開演待ちとか、一服しに入った喫茶店とかで読んではいけない本であること、本を手にあたりもはばからずのたうち笑う痛い痛い人になりたかったら別だけど、なことは、最初に読んだ『京大芸人』で学習済みだったので、もちろんぜんぶ家の中で読んだ。
道案内、気がつけばやってたから、道案内になるまでにそんな迷走があったの、「はじめに」で初めて知った。
菅ちゃん英語で一番好きなのは「シャーク・オブ・ジンベ」。
この本にも出てきて、正しいじんべえ鮫の英語名称今度こそ覚えたと思ったが、やっぱりまた忘れた、シャーク・オブ・ジンベ。











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